「死、かぁ……自分とは、すごく遠い何かな気がしちゃうんだよな」


 死とは何か。


 人間が必ず迎える終わりの旅――それが死。


「でもさぁ。人生って、終わっちゃったらつまんなくね? てか、死ぬようなことするのバカじゃん。死ぬなよって思わん?(笑)」


 優等生ちゃんはフッ、と嘲笑する。


「敵を倒すために突っ込んで死ぬとか、てか、いや、そもそも戦うなっつー話、コレ」


――『戦ったら負け』な戦いって、あるんだよね。


――特にメンヘラは、触ったら爆発する爆弾みたいなもんだから。


 と。


 グチグチと長ったらしく、メンヘラについて語るオタク。


「――戦うな、つーかメンヘラに関わるな。マジで」


 むぅ、という不満気な表情をする白髪少女。


 全く可愛くはない。


「じゃあ、え、メンヘラは作家にならない方が良くね?」


 独り言は続く。


 躁鬱とADHDの相乗効果で、彼女の思考の飛躍は凄まじいのである。


 対して、この白い空間は、そんな彼女の独り言を拒絶も肯定もせず、ただ『白』であり続ける。


 『白い空間』というだけなのに、そこに優等生ちゃんがやってくると、『狂人が滔々とメンヘラについてしゃべり続ける』という、『少し奇妙な空間』となってしまう。


「だって、メンヘラに関わったら爆発すんでしょ。え、でもそれはつまり『メンヘラは死ね』ってことですか!? うわ、ひど。メンヘラだって人間なんだぞ。……人間じゃないか、そっか……」


 こんな風にメンヘラについて語る彼女の存在こそが、メンヘラの有害さを物語っているというのは、何とも皮肉なものである……。


「ああ、喋ってたら……眠くなってきちゃったなあ」


 白いまつ毛をパチパチと瞬かせ、そして目をこすこす、と擦る。


「ん……ふぁ……、ねむ。ねよっかなあ」


 時計がないかと確認しようとして――しかし、一面の白のどこにも時間を指し示すものなどなく――諦めてその場にしゃがみこんだ。

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優等生ちゃん日記 筆屋富初/Hituya Huhatu @you10say

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