「え、てか待って。ここさ、水も食事もない? トイレも風呂もないぞ……」


キョロキョロ。


「待って待って、僕、死ぬ?」


シーン。


「本当に何もないじゃん。いや、確かに死にたいとは言ってるよ? でも、それって自殺したいってことじゃないんだよね。ただ、この世界に存在したくないというか、AFKしてたいだけで……あの、本当に死にたいわけじゃないです……あのあの」


シーーーン。


「都合よく蛇口が出てきたり、食事が出てきたりとかって、あの」


シーーーーーーーーーーン。


「だめ、か、だめですかそうですか……! ええ……怖……。いや、そうか! 確かに。『死』って本能的恐怖だな。最近『リアルなホラーって何だろう』とか、『なぜそういうことが起きてるかわかっちゃうホラーは怖くない』とか、『ジャンプスケアはゴミ』だとおもってたし、リアルなホラー書きたいと思ってたけど……いやいや。死ぬのはなんか違うじゃん。いや、え? 僕、マジで死ぬ?」


シーン。


「まあでもホラ、死って誰も体験したことないじゃん。面白そうだよな。うん」


うんうん、と一人で頷く優等生ちゃん。わずかに、その制服のリボンが揺れる。


「どうせ死ぬならえっちな女の子に殺されたいなぁ。腹上死したくね? ああでも、腹上死ってなんか……疲れるらしいんだよな……やめとこ」


優等生ちゃんはそう言って、はぁ、とため息。


「あ~~~~考え事してたら、おなかすいたよ~~~! スパイス持って来いよ。おい。あ、ステーキスパイスね。マキシマムでもいい。まじでうまい。人生アガる。まあ、高野くんは、あ、高野君は僕の知り合いの酒カスね。あいつは『味がするものムリ』って言ってたし、そういう人の人生はアガらないかもだけど……」


シンと静まり返った白い空間で、優等生ちゃんはぶつぶつとつぶやく。


「……はあ。僕、死ぬのかなあ。」

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