第4話 裏切り
その時、端っこにいた雛鳥たちが大きな鳥に何か訴えかけだした。
『ピヨピヨ!ピヨピヨピヨ!!』
「何!?攻撃を止めろだと??どういう訳だい雛たち」
やはり、大きな鳥は雛鳥の親鳥だったようだ。
『ピヨピヨ!!』
「この人達は何も悪い事はしていない?だから始末するなって?……雛たちは怪我はないのかい?」
『ピヨ!!』
「分かった……。ということだ、貴様ら運が良かったようだな……」
「分かってくれたんだね!僕はミッダ、心から感謝するよ」
親鳥は上空から静かに地面へ降りてきた。
「礼なら雛たちに言うんだな。まったく、珍しく怪しい人影を見たから雛鳥を守ってやっただけだというのに……とんだ誤解だったな」
「雛鳥さんたち、ありがとう。良かったらこれ食べない?鳥類ならよく食べるご飯だよ」
と言いながら、雛鳥に近付き、餌を差し出す。空腹だったのか、雛鳥は勢いよく餌を食べた。
『ピヨピヨ!!』
「ん?美味しかったって?お礼なんて要らないよ。お腹いっぱいになって良かったね!」
『ピヨピヨ!!ピヨピヨピヨ!!』
「なんと、こ奴らを地上まで送れと?……仕方ない。我も悪いことをしたからな」
『わぁ!!』
っと、皆の歓声が上がった。親鳥が大きく羽を広げたのだ。
「雛たちの指示だ。さぁ、背中に乗るといい」
そうして、物凄い速さで親鳥に地上まで送ってもらえたのだ。
「我はもう雛たちの元へ戻る。もう会うこともないだろうが……またな」
そう言ったと思うと、大きな翼で上空まで舞い上がり、その場を後にしたのだった。僕たちは親鳥と挨拶を交わした後、急いでクマ村長の元へ向かった。
「村長様!!無事に薬草を取ってきました」
クマ村長は驚いた様子で
「なな、なんじゃと!?お主ら・・・・・・よくやった!心配しておったのだぞ」
「皆で協力したから、なんとか取って来れたんです。そしてその薬草がこれです」
ミッダはクマ村長にありったけの薬草を手渡した。
「ふむ、確かに。麓の薬草に違いないな。さっそく鎮痛の薬を作るから、ちょっと待っていなさい」
「はい、僕たちも隣の部屋で休んできますね」
僕たちは4人部屋の寝室に移り、それぞれ体を休めることにした。皆、戦いの際に受けた傷で体がボロボロである。ベッドに横たわり、体を癒す。僕は戦いの疲れの影響で直ぐに眠ってしまったのだった。
「……たい。痛いっっ!!」
僕はその悲痛な声で目を覚ました。隣のベッドでラディーナがうずくまり両手で頭を押さえている。
「ラディーナ?そんなに酷いのか……」
ラディーナの側に駆け寄り、背中をさする。
「吐きそうなのよ……でも、“何か思い出せそう”なのよ……」
「えっ……?(そういえば、登山をしている時も、そんなことを言ってた気がするな……)とにかく、鎮痛薬が出来上がったら、直ぐに飲んでみよう。きっと良くなるよ」
その時、バタバタと足音が聞こえてきた。バタンと扉が開き、クマ村長がやってきた。
「上手く行ったぞ!!鎮痛の薬が出来た!!」
クマ村長の言葉に、歓喜の声が挙がった。僕は苦しそうなラディーナを見て、走って水を持ってきた。そしてラディーナに鎮痛の薬と水を手渡した。苦し気な表情をしながら薬を飲み干したようだった。
「即効性があるはずじゃから、安静にしておりなさい。きっと良くなるじゃろう」
「……ホントだ!?さっきまで痛くてたまらなかったのに、嘘みたい!!痛くないわ!!」
僕も含めて皆の空気が一気に明るくなった。ラディーナを取り囲み、ハイタッチをしている。
「本当に良かったね。やっぱり、元気なラディーナが一番だよ」
「ミッダ、ありがとう……。――あれ?」
「ん?どうしたの?」
「なんか、痛みが引いてから、不思議な感覚がする……。私、確か川で遊ぶ前……何してたんだっけ……あ……思い出したわ……!!」
ラディーナは血の気が引くような表情をしていた。一体どうしたのか聞いてみようと思ったその時だった。ベッドから勢いよく起き上がり、何やら部屋を出て何処かに走っていった。遠くからガチャガチャと物音がする。保管庫の方だろうかと思い、気になって僕も後を追った。
保管庫の扉を開けると、そこには弓を構えたラディーナの姿があった。
「どうしたんだい?ラディーナ」
僕はその姿に焦りを感じた。一体何があったのか訳を知りたい。
「……るさない……。許さないんだからぁ!!」
ラディーナは大声で叫んだ直後、僕目掛けて矢を放った。その矢は見事僕の大きな体に刺さった。痛い、と感じる頃には既に何発もの矢が体に刺さっている。
「私、思い出したのよ。熊にとても深い恨みがあること……」
「えっ……?」
僕は体中に矢を浴びたせいで、痛みが猛烈に走る。そして急所に当たったのか、倒れ込んでしまった。
「熊から襲われそうになった私を庇って、お母さんはその熊に食べられたの……。だからっ、私は熊が憎い!!大好きなお母さんが食べられて、許せない!!……人間を襲う熊なんて居なくなってしまえばいいのにって、ずっと思い続けてた。だから私は大きくなったら狩人になって熊のいない世界を作るって、そう決めたのよ」
泣きながら喋り続けるラディーナの姿は、なんだか悲しそうに見えた。僕は息を切らしながら
「そう、だったんだね……。それは許されないことだ……。ラディーナ、辛かったね……」
だんだん息が苦しくなり、目の前がぼんやりとしてきた。もしかしたら矢が心臓に当たったのかもしれない。僕はその場で意識を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます