第3話 頭痛を治すため、薬草を採りに出発
ミッダとラディーナたちは身支度を終えて、早朝から登山に出掛けた。森から山の入り口までは、そんなに時間はかからず辿り着くことができた。と同時に、入り口付近に2人の兵隊が見張りをしているようだった。灰色の鎧を身に纏い、槍を所持している。
「ここは私に任せて。話をしてくるわ」
「お願いするよ。僕たちはローブを装着して、ラディーナの後ろを着いて行くね」
ミッダと仲間たちは体が大きいため、ローブを身に纏い、ブーツを履いて、木彫りの仮面を顔に付けて、山へ潜入する作戦を考えたのだった。少しでも人間にバレないようにするためだ。さっそく兵隊の1人が話しかけてきた。
「お嬢さん、ハイキングでもするのかい?」
「ええ、せっかくの晴れ日だもの。楽しんで来るわ。ここを通してくれる?」
「お連れさんたちが守ってくれるのかい?随分暑そうな装備をしているようだが……」
「その通りよ。大事な仲間なんだから歓迎してほしいわ♪」
もう1人の兵隊は僕たちのことをじっと見てきたが、特に危害を加えてくる様子は無かった。あまりに観察してくるものだから、冷や汗をかいてしまった。無事に入り口を通過したものの、山頂への道はまだまだこれからだ。険しい道をひたすら歩き続ける。途中、足元が狭い道を歩く時、僕は足を踏み外してしまった。
「うわっ!?」
「ミッダ!危ない!!」
近くに岩の出っ張りがあったため、そこに掴まった。そこから体を引き上げてもらい、なんとか危機を回避できた。
「命綱を準備していて正解だったな」
そう、4人で体の中央に命綱を装着していたのだ。用意周到に準備をしておいて良かったとホッと胸を撫で下ろす。しばらく無言でひたすら歩き続ける。だんだんと斜面がきつくなってきて、足の痛みが出てきた。しかし、日が落ちると視界が悪くなるため、お昼頃には山の麓に到着したいとこだ。ふとラディーナの顔色が悪いことに気付く。
「ラディーナ、大丈夫かい?」
「平気よ。うっ……でも少し頭痛がしてきたかも……」
「僕がおぶるから、背中に乗って!」
「ミッダ、ありがとう」
ラディーナを背負いながら先へ進む。途中、ラディーナは激しい頭痛による吐き気が出てきたと言ったので、一旦地面に降ろした。
「ううっ……気持ち悪い……頭が痛い。でも、何か思い出すような……気が」
「無理しちゃだめだよ」
僕はラディーナの背中をさすりながら声を掛ける。しかし、頭痛が激しく嘔吐している。
「落ち着くまで少し休憩しよう」
「ごめんなさい……」
「気にしないで、なんとかなるさ」
僕たちは少し歩いて、座れる程のスペースを見つけてそこに座って休んだ。ラディーナはいつの間にか眠っていた。朝からずっと歩いてきたし、頭痛もあって疲れ切っているのかもしれない。
「山の麓までもう少しだ。皆頑張ろう」
「うん、この子の頭痛を治すためにも。あとちょっとだね」
『キエエエェェ!!』
そのとき、遠くで鳥の奇妙な鳴き声が聞こえた。双眼鏡で覗いて見ると、色鮮やかな大きい鳥が空を飛んでいるようだった。
「あんなに大きい鳥が居るんだね」
「俺たち熊より2倍くらい大きいかもしれないな」
「この辺に住んでいるのかな?初めて見たよ」
僕たちは、その大きな鳥を見て不安を覚えたが、休憩も終えたので、また歩き始めた。そして、ようやく山の麓に着いた。そこには、岩に囲まれた薬草が生い茂っていた。その薬草をかき集め、できるだけ持ち帰れるように袋へ詰め込んだのだ。夢中になって気付かなかったが、薬草の近くに雛鳥の巣があった。そこに幼い雛鳥たちが顔を出してピヨピヨと鳴いている。お腹が空いているのかと思い、雛鳥の方へ足を伸ばした。すると、またあの奇妙な鳴き声が聞こえてくる。しかもだんだん近付いてくるような気配があった。その時、真上にあの色鮮やかな鳥が現れた。
『キエエエェェ!!』
僕の不安は的中したらしい。その瞬間、僕たちは鳥の風圧により吹っ飛ばされた。
「貴様ら、我が子に何の用だ?危害を加えるなら容赦はしない!!」
「違うんです!!僕らはここの薬草を取りに来ただけなんです!!」
声を張り上げて大きな鳥に訳を話す。
「訳の分からぬことを。始末してくれる!!」
話の通じない大きな鳥に、風圧を与えられた後に足で体を引っかかれてしまった。
「くぅ……!!」
4人を繋いでいた命綱も簡単に切れてしまった。僕は負傷を追ってしまったため、その場から身動きが取れなかった。それでも、仲間たちは持っていた剣を使い、果敢に攻撃を始める。
「ミッダ!?背中に大きな傷が……!!待ってて、今傷口を治すからっ!!」
ラディーナは何やら早口で呪文を唱え始めた。
『……精霊たちよ、我の力で癒したまえ――キュア!!』
「えっ……?その力は何……?あれ?背中が痛くない」
僕はラディーナが魔法を使えることを初めて知ったのだ。もちろん、人間で魔法を使う者もいるってことは、お母さんが教えてくれたから知っていた。その不思議な回復の力に心底驚いた。が、今はぼうっとしている場合では無い。仲間に加勢して、大きな鳥を何とかしなければならない。しかし、大きな鳥はあまりダメージを受けている様子は無く、僕たちは何度も風圧によって岩の壁に叩きつけられる。
「小賢しい……我の風圧で粉々になるがいい!!」
次にもう1度風圧に耐えられるだろうか?何度も叩きつけられて、皆大きく負傷している。
「食らえ、次は特大の風圧をくれてやる!!」
「(絶体絶命だ――!!やられる――!!)」
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