第2話 金髪の少女との出会い
故郷を離れてしばらく経ち、平和に暮らしていた。亡くなったお父さんの代わりに、ミッダは森を守れるよう訓練に励んでいた。クマ村長と森の仲間から武術を教わり、小熊の頃より力を身に着けた。しかし、ミッダは人間に対する恐怖心まで拭えぬことはなかった。
新しい森は、辺り一面緑で生い茂っており、近くに川がある。川では魚が採れることから、日常的に魚を食料としていた。ミッダはその川に入り、獲物を探しているときだった。川の上流から、金髪の髪の小柄な少女が流れてくる。ミッダは驚き、後ずさりしたが、その少女は気絶しておりピクリとも動かない。念のため生存確認をしてみると、わずかに息があった。このままだと下流に辿り着くまでに息絶えてしまうかもしれないと考え、一先ず少女の体を川から上げた。まずはクマ村長に報告をするため、少女を抱えて走るのだった。
「村長様、この娘、どういたしましょうか?」
「ううむ……こんな小柄な少女が森の危害に及ぶとは考えられぬな。しかし、弓を抱えているな。それだけワシが預かっておこう」
クマ村長は、少女の持つ装備品を倉庫へ保管することにした。その間、ミッダは複雑な心境だった。
「(少女と言えど人間には変わりない。でも、このまま息絶えてしまうのはなんだか心苦しい)」
それから仲間の熊を呼び、交代で少女を見張ることにしたのだった。ミッダは家に帰り、お母さんに報告する。
「人間が川から流れてきたですって!?」
「うん、でもその子、息はあるけど目を覚まさないんだ。心配だよ」
「ミッダはお人よし過ぎるのよ。村長様も、どういうつもりかしら……」
「僕なら大丈夫。鍛錬してるもんね」
「もう、本当に気を付けて頂戴」
心配そうなお母さんの顔色を見て、大丈夫だと言い張っていた時のことだった。扉が勢いよく開き、仲間の熊が駆け付けてきたようだった。
「ミッダ!少女が目を覚ましたぞ、急いで来てくれ!」
僕は仲間と一緒にクマ村長の元へ向かった。
「村長様!!ご無事ですか!?」
目の前にあったのは、ベッドに座った少女と向かい合うクマ村長の姿だった。
「また熊……!それも2匹も!!」
「落ち着きなさい、彼らは心優しい仲間じゃ」
「まさか、熊とお話できるなんて、夢にも思わなかったわ!」
少女は青い瞳をキラキラと輝かせて僕の方を見る。
「私ラディーナって言うの。あなたは?」
「僕はミッダ。この森に住んでいるんだ。それより体調は大丈夫?随分顔色が悪そうだったけど」
「優しいのね。休んでたらすっかり治っちゃったわ」
元気そうなラディーナの姿を見てホッとしたミッダだった。それからクマ村長が作った食事を食べて、ニコニコと笑っていた。どうやらラディーナは、森から少し離れた街で川遊びをしていたところ、足を滑らせて川へ転落したらしい。それからの間の記憶はないという話だった。
それからというもの、僕はラディーナと一緒に森で遊ぶようになった。僕の訓練を待っている間に、道具を使って魚を捕えたり、森の観光をしているようだった。夕飯時になると、一緒にご飯を食べ、寝る時はクマ村長の元へ戻るといった生活を送っていた。しかし、ラディーナはある問題を抱え込んでいたのだ。それは時折起こる頭痛だった。突然頭痛が来るとその場にしゃがみ込んでしまうほど痛いらしい。なんとかして治してあげたいから、クマ村長に相談をしてみたのだった。
「むう……もしかしたら、山の麓にある薬草を取ってくれば、治せるかもしれん」
「本当ですか!?」
「しかし、麓はかなり険しい山道で、もしかしたら人間がいるかもしれん。そうなると危険じゃ」
「でも、ラディーナの頭痛を放っておけません!」
「ラディーナはさておき、人間は危険な生き物じゃ。人間を倒す術でもない限り、行かないことが賢明な判断じゃ」
「人間を、倒す……」
その話を聞いてから、僕はどうにかして山の麓にある薬草を取りに行く手段を考えた。おそらく、人間を倒すことは必須事項となるだろう。僕は森の仲間に相談をして、一緒に行ってくれないかとお願いして回ったのだ。仲間たちは不安げな表情だったが、ラディーナに元気になって欲しい気持ちは同じだった。
「むう……どうしても行くと言うのか……」
「はい、どうか理解して頂きたい」
「その話待ったぁ!!」
僕とクマ村長の間にラディーナが割って入ってきた。
「私が一緒なら、人間相手でも説得できるかもしれないわ」
「確かに、熊が揃って人間と対話するより、ずっと良いかもしれん。危険も付き物じゃが、それでも良いのか?」
「私、ミッダと一緒に行きたいんです!そもそも私の体のことだし、心配ばかりかけていられませんから!」
クマ村長は少し頭を抱えて考え込んでいたが、話は決まった。明日、山の麓まで薬草を取りに行ってくることとなった。
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