第十四話 いよいよ大変なことです

その日は朝から妙に空気が重かった。学園内の魔法施設が一部調整中だという通達があり、いつもなら静かに過ごせるはずの午前の授業が、どこか落ち着かない雰囲気に包まれていた。


「リリス先生、今日はいないのか?」


普段なら、こういう魔法施設関連の事態があると真っ先に呼び出され、「アル君も来る!」と強引に巻き込むリリス先生が、今日は妙に静かだった。隣のセリーナに尋ねると、彼女は小さく頷きながら答えた。


「黄色の塔に用事があるみたいですわ。今日は学園を離れていらっしゃるそうですよ」


「黄色の塔か……」


(なるほど、いつもなら何か問題が起きると即対応してくれるリリス先生がいないのか。黄色の塔みたいに実践を重んじる派閥は少ないから、他の先生だとちょっと頼りないんだよな……こんな日に限って何も起こらないといいけど)


そんなことを考えつつ、午後の授業を終えた俺は、帰宅までの自由時間に中庭でぼーっとしていた。



ふと、リヴィアが本を手に歩いてきた。どこか考え込むような表情だ。セリーナもその後ろから続いている。


「アルヴィン、ここにいたんだ」

リヴィアが声をかけてきたので、俺は軽く手を挙げて応じる。


「なあ、二人とも、リリス先生が黙って黄色の塔に行ったこと、何かおかしいと思わないか?」

俺が問いかけると、リヴィアは腕を組みながら少し首を傾げた。


「別におかしくないだろ。リリス先生だって忙しいんだからさ。いちいちアルヴィンに説明する義理もないだろ?」


「まあ、リリス先生のことですものね。それに、アルヴィン様、気にしすぎですわ」

セリーナが軽く笑いながら続けた。その笑顔は上品だが、微妙に毒を含んでいるように見えなくもない。


「いや、でも普段のリリス先生なら、少なくとも『アル君、実地訓練だよ!』とか言いながら巻き込んでくるだろ?」

俺は少し身を乗り出して反論する。


「それは……確かに、先生らしくはないかも」

リヴィアが少し考え込みながらも、どこか面倒そうに肩をすくめる。



「まあ、アルヴィンさんがリリス先生に気に入られてるのは事実ですけど、それでも四六時中一緒にいるわけじゃないですから」

セリーナが半ば冗談めかして言うと、リヴィアが少しむっとした表情を浮かべた。ちょっとトゲを感じたのかも知れない。


「……別に、アルヴィンが気にかけるのは当然のことだろ。先生と生徒として」


「え? そこ強調する?」

俺が思わず突っ込むと、リヴィアが一瞬言葉を詰まらせた後、頬を赤くしてそっぽを向いた。


「と、とにかく、リリス先生には先生なりの事情があるはずだから!」

リヴィアがやや強めの口調で締めくくる。


「まあ、確かにあの人がいないと妙に落ち着かないけど、たまにはこういう日も必要だと思いますよ」

セリーナが穏やかな声でまとめるように言うが、俺にはどこか「様子見」といったニュアンスが感じられた。


(……なんだか、やたらと気にされてる気がするんだけど。いや、考えすぎか?)


その時、聖堂から戻ってきたエルザが明るい声を上げた。

「お兄様、何か悩んでるんですか?」

リリスが魔法設備の調整タイミングで、黄色の塔に行ってると伝えると 「お兄様、リリス先生がいないと寂しいんですか?」と小首をかしげながら純粋な目で尋ねてくる。


「いや、別にそういうわけじゃないけど……」


「へえ、そうか?」

リヴィアが口元をわずかに吊り上げながら茶化してくる。


「まさか、リリス先生に頼りすぎてるとかじゃないですわよね?」

セリーナの声は上品だが、微妙にからかいが混じっている。


「いやいや、違うって。ただ、あの人がいないと妙に落ち着かないだけだよ」


(ただリリス先生の行動がちょっと気になっただけなのに、なんでこんなに突っ込まれるんだろう……)


俺がぼそっと言うと、リヴィアが呆れたようにため息をついた。


「ほんっとに、余計なこと考えすぎなんだよな、お前」


「まあまあ、アルヴィン様らしいですものね。そんなところが、頼りにされる理由なんですわ」

セリーナがやや冷ややかに微笑む。


「でも、そんな時はリリス先生じゃなくて、私に……

いえ、私たちに相談してくださいね!」


「いや、だから悩んでるわけじゃ……」


(ただリリス先生の行動がちょっと気になっただけなのに、なんでこんなに大事になってるんだろう……)


俺は彼女たちのやり取りを聞きながら、再び中庭の空を見上げた。


(こんな感じで、今日は何も起こらないでほしいと祈るばかりだ)



突如として耳をつんざくような爆音が響き渡り、それに続いて轟音とともに地面が揺れた。反射的に視線を向けると、学園の訓練場の方から立ち上る黒煙が見えた。


(……嫌な予感しかしない)

「何があった!?」と叫びながら駆け寄ってくる生徒や教師たちに紛れて、俺も訓練場へ急ぐ。すると、そこには異常な魔力を放つ複数の魔法陣が輝き、あたり一面を灼熱と冷気が同時に包み込んでいる光景が広がっていた。


「魔力の制御が完全に崩壊している……!」


崩壊した魔法陣は狂ったように輝き続け、その周囲には灼熱の炎が燃え盛り、同時に氷柱が不規則に伸びている。


居合わせた教師たちは必死に魔法を唱えて暴走を鎮めようとするが、逆に魔法陣はますます活性化し、異常な光を放つ。生徒たちはパニック状態に陥り、一部は叫びながら訓練場から逃げ出している。


「誰か、リリス先生に連絡を!」


「待って、リリス先生はいないのよ!」


教師たちのやり取りを耳にしながら、俺は本能的に後ずさる。いやいや、ここで俺が出ていくのは無理がある。暴走した魔法を相手にするなんて、無能アピールどころの話じゃない——。


けれど、遠目から見ても、暴走の原因は明らかだった。複数の魔法陣が輝いているその様子は、魔力を制御するための要所——いわゆる「制馭部分」が完全に崩壊している証拠だ。これでは、直接魔法を打ち込めば余計にエネルギーを供給するだけで、暴走が悪化する可能性が高い。


(壁を作って、魔法陣を一時的に封じ込めるしかない……!)


頭の中にひらめいた結論は明快だったが、同時に厄介な問題が浮かび上がった。これをどう伝えればいいのか。


教師たちは既に疲弊しており、全力で魔法を行使している。それを「やり方を間違えている」と指摘すれば、反発されるのは目に見えている。ましてや、自分のような平凡を装った生徒が、どこで得たかもわからない知識を持ち出して指示を出すなんて——。


「……どうする?」


立ち尽くしながら、自問する。伝えなければ状況は悪化するだけだ。でも伝えたところで、信用されなければ意味がない。


とりあえず実際の現場を見ないことには判断しようがない。いわゆる三現主義というやつだ。


現場に踏み出した俺は、暴走の中心である魔法陣を観察した。


(……何だこれ? 魔力が同時に逆位相の二種類で拮抗してる? 中途半端に破壊すると、魔法陣全体が暴発するぞ)


教師たちの声が聞こえる。


「なんとか魔法陣を封じ込めないと危険だ!」


しかし、手の打ちようがない様子だ。


背後から再び教師たちの叫び声が聞こえた。


「くそっ、どんどん魔力が強くなっている! 

もう持たないぞ!」


「アルヴィン!」


その時、リヴィアが駆け寄ってきた。額にうっすらと汗を浮かべながら、真剣な顔で俺を見つめる。


「リリス先生もいないし、黄色の塔の見習いでセイルバーグ流の弟子であるあなたが一番冷静に状況を判断できるはずよ! 

手を貸して!」


「リヴィア……」


彼女の真剣な眼差しに、迷いが消えた。その声を聞いた瞬間、体が勝手に動いていた。俺は教師たちの方に向かい、大声で叫んだ。


「みなさん、止めてください! 

今は壁を作るべきです! 

直接魔法を打ち込んではダメです!」


周囲の視線が一斉に俺に向く。その中には驚きや戸惑い、あるいは苛立ちの色も混じっていたが、今はそれを気にしている場合ではなかった。


「魔法陣が暴走している原因は、制馭部分の崩壊です! 

魔力を制御する構造自体が壊れているんです! 

だから、直接干渉するほど暴走が加速します! 

エネルギーを遮断するために壁を作って囲むべきです!」


言葉を紡ぎながらも、心臓は喉元で跳ねるように脈打っている。果たしてこの説明が通じるのか。だが、他に選択肢はない。


「何を訳のわからんことを!」


教師の一人が苛立った声を上げた。

「学生の君が何を言っているんだ! 場を混乱させるようなことはやめたまえ!」


その剣幕に一瞬怯みそうになるが、ここで引くわけにはいかない。確かに、いきなり学生風情がこんな場で指示を出そうものなら反発されるのは当然だが、そんな悠長な状況ではなかった。


「リリス師匠から聞きました!」


はったりをかますなら、師匠の名前を出すのが一番だ。俺だって、認めたくはないが、黄色の塔の一員なんだから。


「リリス師匠だと?」


その場にいた教師たちがざわめき始める。ある者は眉をひそめ、ある者はぎょっとした表情を浮かべていた。その中で、白髪交じりの厳格そうな男性教師が俺を鋭く見つめ、低い声で問いただした。

「君が……アルヴィン君か?」


「……ちっ、仕方ない」

先ほど苛立ちの声を上げた教師が、舌打ちしながらそう呟いた。忌々しそうな顔つきだが、緊急事態ゆえか、頭ごなしに否定する様子はなかった。


教師たちの間でさまざまな反応が交錯する。

「本当にリリス師匠の弟子なのか……?」

「この状況で嘘をつく余裕なんてないだろう。だが学生に任せるなんて……!」

「緊急時だ、彼の言うことを信じるしかない……!」


ある者は不承不承ながら納得し、ある者は悔しそうに唇を噛む。そして中には、心底ほっとしたように胸を撫で下ろす者までいた。結局のところ、俺の言うことを聞く以外に選択肢がないという空気が、場を支配していた。


「とりあえず壁は作ったが、中が危険なのは間違いない!」


教師たちは緊迫した顔つきで、壁の向こうを見つめていた。壁は暴走した魔力をかろうじて封じ込めているが、それだけで精一杯な様子だ。手の施しようがない無力感が彼らの表情に色濃く浮かび上がっている。


(こうなったら、思い切ってアドリブで行くしかない)


覚悟を決めた俺は、発動呪文を唱え、身体の周囲に魔力の膜を循環させる魔法を発動した。この魔法は戦場ではあまり使われないが、火災時の消火や火山地帯での作業など、特殊な用途ではそこそこ役立つ。


教師たちが息を呑むのを感じながら、多節棍を取り出した。魔力を循環させている複合的な魔法の壁に、多節棍を巧みに操って無理やり通り抜ける。


「アルヴィン君、危ない!」


背後から誰かの声が上がったが、振り返る暇はない。俺は手元の多節棍を南京玉すだれのしだれ柳のように放ち、魔法陣の両極に直接触れさせた。


普通なら自殺行為だ。だが俺には、リリスと大師匠のもとで叩き込まれた魔法制御の技術があった。電気で例えるなら、俺自身が抵抗兼コンデンサとなることで、暴走するエネルギーを抑え込む仕組みだ。しかし、一歩でも制御を誤れば、発熱どころか大爆発を引き起こす危険があった。


だがあの二人のスパルタ教育だ。カインには月とすっぽんほど劣っているとはいえ、一般と比較すればそれなり以上の実力があるのは自覚している。

むしろ、下駄をかはせられた俺よりも速いペースで色々習得するカインが凄すぎるだけなんだが。


「頼む、どうにかこれで収まってくれ……!」


心の中で祈りながら、魔力の循環を整える。


ある程度整ったところで、壁の外に戻り、魔法の壁を作っている教師陣の応援に回る。


結果、暴走していた魔力は徐々に収まり、最後には完全に沈静化した。


「や、やった……!」


拍手が湧き上がる中、俺を含めた全員がぐったりとその場に座り込んだ。俺も拍手しながらへたり込んだ。


「……さっきは悪かったな。

黙って逃げてろと言う思いと、学生ごときがと言う思いが一緒にでたようだ。

私もまだまだだな、こうしてみると。

しかし……確かにリリス嬢の弟子だけのことはある」


先ほど舌打ちをした教師が、座り込んだ状態で話しかけてきた。先ほどまでの険のある表情が、嘘のように穏やかになっている。


「……さっきのことですが、先ほど俺の名を呼んだのって?」


俺が口を開くと、教師は微笑んで言った。


「ああ、私だ。

あんな素晴らしい制御が出来るなんて思いもしなかったからな。

あの見事な制御も素晴らしいが、それ以上に胆力もたいしたものだ。

黄色の塔が手放したがらないのもよくわかる」

「あ、あの壁抜けに気づいたんですか……?」

驚いて尋ねると、教師は頷いた。


「ん? 

ああ、黄色の塔の秘術か何かだったのか。安心したまえ。多分私しか気づいていない。まったく、あの壁抜けの素晴らしい技術に気づかない連中ばかりなのが嘆かわしい……」


「出来れば……」


「ああ、秘術のことは黙っていよう。

ここで私の手伝いをしていたことにすれば良いだろう」

彼はニヤリと笑った。

「代わりに、今後も私の手伝いもしてもらおうか、我が弟子よ」

俺はきっととんでもない人に目を付けられたんだろう……



あれから数日後。

最近、俺は妙なことに気がついてしまった。

「無能アピール」、それは俺がこの学園生活で影を薄くして平穏を保つための秘策。しかし、どうも最近は効果が薄いどころか、完全に逆効果になっている気がする。相談事やら騒動やらに巻き込まれて、注目度が下がるどころかむしろ増している。


さらに厄介なことに、この世界には「転生者」という存在がある。「転生者」たちは前世の記憶を持ち、独自の知識やスキルで頭角を現すことが珍しくないらしい。実は、俺の父親も転生者だったのではないかと密かに噂されており、その影響で俺も転生者だと疑われることがしばしばある。義母のリディアなんて、まるでそれが事実だと言わんばかりの目で俺を見るし、リヴィアやセリーナ、エルザの三人も、それを密かに信じている節がある。


(……いやいや、確かに転生してるけど……俺はその「転生者」なんかじゃない。ただの平凡な学園生だっての)

そんな中、俺は机に突っ伏して考え込んでいた。無能アピールが通じないなら、いっそ次の手段を試してみるか――。


ふと、俺の中にアイデアが閃いた。

(そうだ……! 転生者だと誤解されるのを逆手に取って、勘違いした踏み台転生者を演じればいいんじゃないか?)


転生者というのは、前世の記憶を持ち、現代知識でこの世界に無双するという設定が定番だ。俺がそんなテンプレそのものの傲慢キャラを演じれば、さすがに三人も呆れて俺を避けるだろう。

(これで少しは平穏が戻るに違いない……!)

思いつくや否や、俺は早速行動に移すことにした。


翌日、俺はリヴィアたちと昼食を共にしていた。絶好のタイミングだ。

「ふっ、嫁たちよ。お前たちは知らないだろうけど、俺はただの学生じゃない」

俺はいつもより少し上から目線で、わざとらしい口調で言い放った。


「はぁ? 何言ってるのよ、アルヴィン」

リヴィアが眉をひそめ、箸を持つ手を止める。


「俺には前世の記憶があるんだ。この世界の常識なんて、俺にとっては取るに足らない。そう、俺は、転生者だ」

場の空気が一瞬静まり返る。セリーナが驚いた表情でこちらを見る。エルザは目を輝かせている。

(よし、この反応は悪くない。これで俺を避けてくれるはずだ)

「この世界の知識は、俺にとって小学生の算数みたいなものだ。君たちにはわからないだろうけど、俺がその気になれば――」


「へぇ、じゃあその『すごい知識』とやらで、何か見せてくれるのかしら?」

リヴィアが腕を組み、挑発的に微笑む。

「え、いや、その……」

「何よ、まさか口だけじゃないでしょうね?」

彼女の目がキラリと光る。ツンデレ特有のツンが全開だ。


セリーナが口を開く。

「アルヴィン様は、転生者でいらっしゃるのですね。それは大変素晴らしいことですわ。ぜひその知識で、私たちに新しい魔法でも教えていただけませんか?」

彼女は微笑みながらも、どこか棘のある口調だ。俺の呼び方だけでも、そのことがわかる。


「えっと、それは……今はちょっと準備が……」


そして、なぜかエルザは手を叩いて喜ぶ。

「お兄様、やっぱりすごいです! 転生者だったんですね! 前世の話、ぜひ聞かせてください!」

「いや、エルザ、その……あまり詳しくは言えないんだ」

(やばい、逆効果だ。全然避けてくれないじゃないか)


リヴィアが溜息をつく。

「結局、何も言いたくないってことね。期待して損したわ」

「リヴィア、別に期待しなくてもいいんだぞ?」

「別に期待なんてしてないわよ。ただ、あなたが嘘つきじゃないか確認しただけ」

彼女はそっぽを向くが、頬がわずかに赤い。


セリーナがじっとこちらを見つめる。

「ところでレオンさん、先日の魔力暴走の件で、何かご存知ではありませんか?」

「え? いや、何も知らないけど……」

「そうですか。でも、あの時あなたがいなかったのに、突然魔力暴走が収まったと聞きましたわ。不思議ですね」

彼女の目が鋭く光る。


(くそ、やっぱり疑われてるのか?)


エルザがにこにこしながら言う。

「お兄様、隠さなくてもいいですよ! 皆、お兄様が助けてくれたって噂してますから!」

「だから、それは――」


リヴィアが突然立ち上がる。

「もういいわ。アルヴィンが何を隠してるか知らないけど、無理に言わせるつもりもないから」

彼女はそのまま足早に食堂を出て行ってしまった。

「リヴィア!」

呼び止めようとするが、彼女は振り返らない。

セリーナがため息をつく。

「レオンさん、リヴィアの気持ち、少しは考えてあげてくださいませ」

「え、どういうことだ?」

「本当に鈍い方ですわね。これ以上は申し上げませんけど

……私の気持ちにも気づいて欲しいものですわ…」

何かつぶやくと彼女も席を立ち、優雅に歩いて行く。

エルザが微笑みながらこちらを見る。

「お兄様、女心は複雑なんですよ。もっと勉強しないとダメですね」

「エルザまで……」

「ふふ、でもお兄様なら大丈夫です! 応援してますから!」

そう言って、彼女も立ち上がる。


一人取り残された俺は、深いため息をついた。

(結局、今回の作戦も失敗か……)

三者三様の反応に、俺は内心で頭を抱える羽目になった。どうやら今回の作戦も「思ってたんと違う」結果に終わりそうだった。

(くそ、俺の無能アピールも平穏な生活も、どうすれば戻るんだ……)

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