第十話 とうとう武術会で戦闘です
そして武術大会が始まった。この大会、名前こそ「武術」とあるが、魔法も使えるのが特徴だ。一応、全員参加が建前とはいえ、剣や魔法の技術に秀でていない者は「棄権」という形で不参加を表明できる。もっとも、棄権すると学業や芸術分野で相応の成績を収めなければならず、成績が振るわない場合はペナルティを課される仕組みになっている。
もちろん、俺が棄権を許されるはずもなく、剣術講師のアニスに「戦いから逃げるなんて甘えだ」と釘を刺されたうえ、魔法講師のリリスからも「初戦なら魔法でまとめて一掃してもいいのよ?」と厳しい指導が飛んできた。初戦はバトルロワイヤル形式で、みんなが入り乱れる状況だが、「絶対に負けるな」という無言の圧力すら感じる。
正直、全員の注目を浴びるこの大会は気が重い。今すぐ「お腹が痛い」と言って帰りたいくらいだが、それも許されそうにない。
そこで俺は、
作戦と言うには単純で、最初から多節棍をぶんぶん振り回す事で周囲に何事かと警戒させた後で、何度も振り回すうちに自分まで回転してしまい、目が回って場外に出てしまい、アウトを狙う作戦。
これでサクッと敗退できるはずだ……
大会のゴングが鳴り響き、バトルロワイヤルが始まった。周囲には数十人の生徒たちが各々の武器や魔法を構えている。火花が飛び交い、金属のぶつかる音が響き渡り、あちこちで魔法が炸裂する。その激戦の中心にいるはずの俺は、静かに多節棍を取り出し、構えていた。
観客席の方を見ると、美術講師になっているフィオーレが笑みを浮かべながらこちらを見つめている。エルザは彼女の隣で、いつもの柔らかな笑みを浮かべながら俺に向けて手を振っていた。その姿に、なんだか奇妙な安心感を覚えると同時に、「あまり派手に負けるわけにもいかないよな……」と心の中でつぶやいた。だが、そもそも負けを狙っている時点で、何かがおかしい。
「でも……これって結局どうすればいいんだ?」と軽くため息をつきながら、俺は周囲を見渡した。
誰もが奇妙な目で俺の多節棍を見ているが、俺としては計画通り、多節棍の奇妙さを活かしてあっさり脱落してやるつもりだった。
ゆっくりと構えて多節棍を振り、相手の足元を狙って“パシンッ”と払いにかかる。見た目は冗談みたいな攻撃だが、相手はまさかこんな攻撃してくるとは思っていなかったのか、反射的に後退する。
「うわっ!」
その瞬間、俺の攻撃を避けようとした数人が互いの方向に衝突。どこからか飛んできた風魔法が引き起こした突風に煽られ、さらに何人かがバランスを崩して場外に落ちていった。逃げようとした他の生徒たちも棍乱に巻き込まれ、次々と不意打ちを食らうかのように倒れていく。
「まさか、これでみんなやられてしまうのか?」
俺自身、予期せぬ展開に驚きつつも、再び多節棍を“パシンッ”と振ってみた。
周囲の選手たちは怯えた表情を浮かべ、一斉に後退する。が、背後には他の生徒たちが迫っており、棍乱が頂点に達していた。衝突、転倒、場外への転落が連鎖し、気がつけば広場には俺だけが残っていた。
静寂が訪れる。場外から観客のざわめきが聞こえる中、俺は一人、取り残された状態で呆然と立っていた。まさか、このまま勝ち上がってしまうとは思っていなかった。
試合監督の笛が鳴り響き、俺がバトルロワイヤルの勝者として認められる。その瞬間、観客席から拍手と歓声が湧き上がり、驚愕の視線が俺に集中する。
「なんでこうなるんだ……」
結局、多節棍と言う名の南京玉簾を使った奇策で「無能アピール」するつもりが、誰よりも異色の目立ち方をしてしまい、思わぬ形で勝ち進む羽目になってしまった。
バトルロワイヤルを制した後、俺の次の相手はリヴィアだった。一年生同士の対戦ということで、観客席からも期待の声が高まっている。開始の合図が響くと、リヴィアは鋭い視線を俺に向け、凛とした声で名乗りを上げた。
「私はリヴィア・アルステッド・フォン・シュタインベルク! 家名にかけて、全力で戦う!」
え、リヴィアって
頭の中でそうツッコミつつも、その堂々たる宣言に気圧される俺。彼女の名乗りに聞き入っている暇もなく、彼女の鋭い突きと斬撃が容赦なく襲いかかってきた。
俺は当初、「無能アピール」を続けるつもりだったが、リヴィアの攻撃は想像以上に鋭く、身を守ることで精一杯だった。彼女の剣さばきはまるで嵐のようで、防戦一方の俺には余裕などなかった。
「どうしたの、アルヴィン! その程度なの?」
リヴィアが挑発するように声をかけてくる。観客の視線が俺たちに集中する中、俺は内心焦りながらも、「いやいや、これ以上目立つのはマズい」と必死で自分に言い聞かせていた。
しかし、彼女が一歩大きく踏み込んできた瞬間、俺は体勢を崩してしまった。タイミングをずらして反撃に転じようとしたところが裏目に出て、バランスを失い、リヴィアに向かって倒れ込む形に――。
「きゃっ!」
もみくちゃになって地面に転がる。何とか女の子の上にのしかかるセクハラ体勢は回避したものの、受け身の要領で体をひねった拍子に、俺の手が何か柔らかいものを掴んでいた。
「……むに?」
指先に感じる弾力。何度か握り、ようやく気づく。え、これ、まさか――。
「……変態!!!」
リヴィアの怒声が響き渡り、俺は飛び上がるように手を離した。怒りに顔を真っ赤に染めたリヴィアが、剣を握り直してこちらを睨む。その視線はまさに雷を落とさんばかりだった。
「ご、ごめん! 本当に事故で――!」
言い訳をする間もなく、リヴィアの怒りを増幅させた攻撃が俺に向かって再開された。その勢いはさっき以上で、俺は防戦一方になりつつも、観客席に視線を向ける。そこには、フィオーレが呆れた表情を浮かべながら見つめる姿と、エルザが微笑んで手を振る姿と一緒に、いつの間にかやってきて顔を真っ赤にしているセリーナの姿があった。
(……なんでこうなったんだよ)
観客席の彼女たちを見て、派手に負けるわけにはいかないと考える。だが、手を抜けばリヴィアに対して失礼だし、それ以前に怒り心頭の彼女は手抜き以前に全力でも命が危ない。
これはこれで困った状況だ。
「よし……仕方ない!」
俺は、老師から習った多節棍の技を繰り出すことを決意した。南京玉簾のように変形する多節棍を蛇のように動かし、リヴィアの剣に絡めてその動きを封じた。
「なんなの、その奇妙な武器は!」
リヴィアが驚きの声を上げる間もなく、俺は体を回転させて剣を弾こうとした。しかし、予想外にもリヴィアが体勢を崩し、俺に倒れ込んできた。
「きゃっ!」
咄嗟に彼女を支えようと手を伸ばしたが、その手は彼女の引き締まったお尻を掴んでしまった。
むにゅっ。
再び鋭い視線を浴び、「変態!」と叫ばれた俺は、慌てて掴んでいた手を話すと90度腰を折り、頭を深く下げた。
ビュンッ――風を切る音が頭上で響いた。目の前の地面に視線を向けつつも、なんとなく感じた気配に目を上げると、リヴィアが驚くべき勢いで回転しながら倒れていくのが目に入った。
(……ちょっと待て。下げた俺の頭の上を、力一杯張り手した反動で独楽みたいに回転したのか?)
呆然としたその瞬間、試合終了の合図が場内に鳴り響いた。
周囲がどよめきに包まれる中、観客席からは、「今の技、すごかったな!」「いや、技っていうか……偶然じゃないか?」と、さまざまな噂が飛び交っている。
「くっ……」
一方のリヴィアは、地面に膝をついたまま、顔を真っ赤にしていた。彼女が眉間に皺を寄せ、真剣に怒っている様子を見た俺は、「完全に怒らせたな」と冷や汗をかきながらおそるおそる声をかける。
「ご、ごめん! 俺、そんなつもりじゃ……!」
だが、彼女は鋭い視線をこちらに向けると、強い調子で言い放った。
「黙ってなさい、変態!」
怒りを込めた言葉……に聞こえたが、よく見るとリヴィアの頬はさらに赤く染まり、視線はちらりと俺の顔に向けられてはすぐに逸らされる。
俺が戸惑う中、リヴィアは身を起こし、乱れた服を直しながら、なおも視線を合わせようとしない。
「次の試合では……絶対私が勝つんだから!」
その声には怒りの中に微妙に震えた響きが混ざっていて、相当恥ずかしかったらしい。
「う、うん! そうだよな!」
とりあえず勢いで返事をしておいたが、観客席からはまたざわめきが広がる。リヴィアは唇を一瞬噛みしめると、ふいっと顔を背け、堂々とした表情で言い放った。
「次は絶対に勝つ! フォン・シュタインベルクの名にかけて!」
その言葉に圧倒されつつも、「責任取ってもらうから」と去り際に言い残したリヴィアの言葉に、俺は内心の動揺を隠しきれなかった。
(……これ、どう責任取ればいいんだよ)
観客席のエルザとセリーナが俺に視線を送る中、俺はただ頭を抱えるしかなかった。
第三試合の相手は、入学前に絡んできたあの不良先輩だ。
正直、ここは負けるつもりだったし、手を抜いてサクッと脱落する予定だった。だが、先輩がニヤニヤと笑いながら観客席にいるリヴィアを見て、口を開いた。
「お前ごときに負ける程度か、あの女も案外たいしたことねえな」
……その一言で、俺の中で何かが弾けた。
俺に対してならまだしも、リヴィアをバカにするなんて許せない。いつもは冷静であろうと心がけている俺が、なぜかこの時ばかりは抑えられなかった。
胸の奥にわき上がる怒りを必死で押さえながらも、「たいしたことないのはどっちか、見せてやる!」と決意が固まるのを感じた。
試合開始の合図が鳴る。
俺はリラックスした態勢を保ちつつ、力んでいる風に装いながら慎重に動いた。
観客席からは、強敵にすくんでぎこちない動きをしているようにも見えるだろう。
先輩を挑発するように軽い一撃を放つと、「ほら、来いよ!」と余裕たっぷりの表情で構える先輩。そこが狙い目だ。
「じゃあ、行きますか」
と、観客席には聞こえない位の、あえてのんびりした口調で返しながら、俺は老師から教わった技を流れるように繰り出した。
そして多節棍を一本の武器として使うのではなく、両端を別々に伸ばしたり縮めたりしながら、二本の鞭のように不規則な動きで先輩を翻弄する。生き物のようにうねる多節棍が、先輩の剣の周りを絡むように、ニ方向で跳ね回る。
「おい、なんだその武器!」
先輩が苛立たしげに叫ぶ。だが、俺はニヤリと笑みを浮かべながら技をさらに変幻自在に繋げていった。
観客席からアニスの声が響く。
「アル! 手を抜くなよ!」
その声に一瞬気を緩めそうになったが、逆に気合が入る。
(楽しんでるんだよ、師匠。心配すんなって!)
俺は軽快な足さばきで先輩の攻撃を受け流しながら、さらに多節棍の軌道を複雑にしていく。先輩の剣は空を切り続け、まるで彼が風を相手に戦っているように見える。
(いや、これ、猫じゃらしで遊ぶ猫じゃないか?)
思わず笑いそうになるのをこらえながら、連続技の合間に距離を取り、冷ややかに問いかける。
「まだわかんないかな、どっちがたいしたことないかって?」
その言葉に先輩はカッと顔を赤くし、攻めの勢いを増してきた。しかし、勢い任せの攻撃は荒くなるばかり。やがて先輩は大きく体勢を崩し、ふらつき始めた。
そして、剣を無意味に大きく上段に振りかぶって、叩き付けるように切りつけてくる。
「今だ!」
俺は先輩の腕を掴み、回転を利用して一本背負いの要領で彼を場外に投げ飛ばした。
「うおおおおっ!」
先輩は放物線を描いて飛び、場外へと落下。
「やりすぎたか?」と焦る俺。だが、観客席からの大歓声に、どうやら俺が冷静に立ち回り、先輩が勝手に自滅したようにしか見えていないらしいことに気づく。
どうやら「要領だけは良いやつ」位の扱いらしい。
案外、同程度の実力者がいない程度には強いやつだったのだろう。
有り体に言えば、弱いやつには強いだけな状態とも言える。
アニスも満面の笑みで親指を立ててくれている。ふと観客席に目をやると、リヴィアが「ありがとう」と唇を動かし、手を振っているのが見えた。
エルザやフィオーレも微笑みながら応援してくれているのが見える。その姿に、俺はほっと胸をなでおろしつつ、内心で新たに決意を固めた。
(これ以上、目立たないようにしないと。でもなんで、こんなに腹が立つんだ? リヴィアが何を言われようと俺には関係ないはずなのに……)
俺は自分の気持ちに戸惑いながらも、次の試合に備えることにした。
試合が終わり、昼食を取るために食堂に向かった俺は、軽く食事を済ませるつもりだった。
だが、その目論見は早速崩れた。
「さっきのことは……まあ、事故として許してあげるわ。でも、それはそれ。きちんと責任は取ってもらうからね」
リヴィアがテーブルの向かいに座り、俺をまっすぐに見つめながら言い放った。その表情には、どこか挑戦的な光が宿っている。
「責任って、何のことだよ?」
俺が戸惑いながら問い返すと、彼女は眉をきゅっと上げ、少しだけ顔を赤らめながらも、視線をそらすことなく答えた。
「何のことか、自覚がないのがまた腹立たしいわね。でも……ちゃんと覚悟しておいて?」
その言葉にどう反応すればいいか分からず、困っていると――
「リヴィアさん! ちょっと!」
タイミング良く現れたセリーナが、少しむくれた表情でリヴィアと俺の間に割り込んできた。
「アルヴィンさんが悪気なくやったことを、そんなふうに責めるなんてひどいと思います!」
セリーナは腕を組みながらリヴィアを非難するが、その瞳には俺への強い信頼が感じられる。
「セリーナには関係ないでしょ? そもそも、これは私とアルの問題なんだから!」
リヴィアは反論し、二人の間にピリピリとした緊張が走る。
「私とアルヴィンさんの関係だって、関係ないとは言えません!」
セリーナは一歩も引かず、負けじと声を張り上げた。
「そうやって何でもかんでも首を突っ込んでくるけど、本当にアルのことを分かっているのかしら?」
「もちろん分かってます! 少なくとも、リヴィアさんよりは!」
二人の間で火花が散り、まるで見えない剣戟が交わされているようだ。俺は必死で場を和らげようとするが、二人とも俺には目もくれず、互いに視線をぶつけ合っている。
(なんだこの空気は……俺がどうにかするべきか? いや、それとも黙って嵐が過ぎるのを待つべきか……)
ふと横を見ると、エルザがニコニコと笑顔を浮かべながら俺の隣に座っていた。
「レオハルト様、次の試合も頑張ってくださいね」
彼女は無邪気に声をかけてくれるが、当たり前のようにすぐ隣にいるその感じが、妙に心地よい。そして、それが逆に落ち着かない。
「何であなたがそこに座ってるんです!」
「何でエルザがそこにいるのよ!」
セリーナとリヴィアがほぼ同時に声を上げ、微妙にハモった言葉が響く。二人はテーブルに食器を置くと、俺の正面に腰を下ろし、さらなる言い争いの準備をしているように見えた。
(……これはもう、どうしたらいいんだ? むしろ俺が席を立つべきか?)
俺は三人の視線に挟まれながら、昼食どころではなくなったことを痛感したのだった。
すると、ふいに近くから低い声が聞こえた。
「お前がアルヴィン・レオハルト・フォン・ヴィンターハルトか」
その声に振り向くと、そこに立っていたのは次の準決勝で対戦する予定のマルセル・クラインだった。鋭い目で俺を睨みつけ、挑発的な笑みを浮かべている。
「俺はマルセル・クライン。多分知らないだろうから教えてやるが、俺の流派はお前たちセイルバーグ流とは宿命のライバルだ」
その言葉に、俺は眉をひそめた。
一度アニスが言っていたライバルの流派。護衛も主任務に含まれる近衛騎士団ではあまり使われていないが、野戦を主体とする騎士団では使用者も多いという。
そんな俺の学んでいる流派とは真逆な流派のその名は……
「……レーヴェンシュタイン流、か?」
聞き返す俺に、マルセルは鼻で笑いながら堂々と続ける。
「ああ、そうだ。レーヴェンシュタイン流は騎士階級に伝わる実戦型の剛の剣だ。
俺たちは力と速さを併せ持ち、相手を圧倒して叩き伏せることを信条としている。お前みたいな貴族の流派とは違う、生き抜くために磨かれた剣だ」
「貴族の流派、ね……」
俺はその言葉に引っかかりを覚えたが、彼の熱のこもった瞳に気づき、内心でそれを飲み込む。彼は挑発しているように見えて、自分の流派への誇りと、自分が磨いてきた技術に対する自信を滲ませていた。
「それに、お前の師匠、アニス・セイルバーグとは因縁がある。セイルバーグ流は柔の剣――受け流し、相手を翻弄することで勝利を掴む。それが俺たち剛の剣と対照的だからだ。
次の試合、お前には絶対勝つ。覚悟しておけよ」
そう言い放つマルセルの言葉は力強く、真剣そのものだった。彼は背を向けると、堂々とした足取りで食堂を去っていく。
その後ろ姿を見つめながら、俺は不意に胸がざわついた。マルセルの目には明らかに俺をただの「対戦相手」以上の存在として認める視線があった。
「ライバル、か……」
俺自身がその立場にふさわしいのかどうかはともかく、彼の言葉に込められた敬意を否定することはできなかった。
だが同時に、アニス・セイルバーグという名前も気になる。
アニスの名字はフェリアで、ミドルネームもロンドなはず。
セイルバーグ流の正当後継者という意味でそう呼んだのだろうか?
「ほら、ぼんやりしてないで準備だぞ」
聞き慣れた声がして振り向くと、師匠のアニスが立っていた。彼女は手を腰に当て、俺を見下ろして笑っている。
「師匠……」
「何だ、その気の抜けた声は。ほら、準決勝の会場に行くぞ」
俺が先ほどのマルセルとのやり取りを話すと、彼女は真剣な顔で黙って聞いていた。だが、その話が終わると、彼女の拳が固く握られる。
「アル! 絶対に負けるなよ!」
アニスの声はいつもの軽さを感じさせない、力のこもったものだった。
「レーヴェンシュタイン流は確かに強い。一撃の威力も凄いが、それでいてスピードも我々についてこられる。
それでも、お前はセイルバーグ流の一員だ。その真価を見せてこい!」
その激励に俺は背筋を伸ばし、「……了解、師匠!」と力強く返事をした。
アニスの言葉に背中を押されるようにしながらも、リヴィア、セリーナ、エルザの顔が思い浮かぶ。皆の期待が俺の肩に重くのしかかっている気がして、自然と拳を握り締めた。
だが、ここでひとつ大きな問題が――俺は「無能なふり」を続けるつもりでいる。どうやってこの期待に応えながら、目立たないように振る舞うか……悩みは尽きない。
「皆の期待に応えつつ、どうにか目立たずに負ける方法……あるのか?」
そう考えながら、俺は準決勝に向けて会場へと足を進めるのだった。
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