第六話 入学前からろくでもない状態です

入学式の二日前、俺は義母リディアが準備した、これでもかと変な威圧感を漂わせるゴーレム馬車に乗って学園に到着した。

入学式当日には家族や親族も集まることになる可能性があるため、今日は義母や義弟、妹が同行してくれた。しかし、ひときわ目立つ馬車の存在感がかえって厄介で、門前で早速注目を集めてしまう。


さてこのゴーレム馬車だが、発動機エンジンが魔法を燃料とする自動車のようなものかと思ったら、本当に馬のようなゴーレムが馬車の前に装着されている。それも、女性型の半人半馬ケンタウロスで、彫像みたいな女性像の下半身が馬のものとなっている。

そして何より、ケンタウロスの女性像なのだが、大きい上に……なにげにエロい。小型の二輪馬車カブリオレと言えど結構目立つ。

ちなみに、ゴーレムケンタウロスの横から馬車の御者席に乗り込む形だ。小型軽量二輪馬車カブリオレ形式だから貴族の子弟、いわゆる公達オラナブルもちょくちょく自分で操っているので、一応不自然では無い。小型軽量なので、小柄な人間なら三人、大柄なら二人が並んで乗るのが限度。

そんな小ぶりな馬車を牽引する、普通の馬より女性の上半身分さらに大きなゴーレム。そりゃ変な威圧感もあると言うもの。

門の横の駐車場に馬車を停め、馬車から降りると、周囲の学生たちがざわつき始めたのがわかる。


「おい、あれが侯爵家の嫡男らしいぞ」

「優秀だって噂だけど、どうなんだ」

そんな噂が飛び交う中、少し不良じみた上級生の一団が目を光らせ、ニヤニヤと俺に近づいてきた。

彼らは男爵や子爵、そしてリーダー格は伯爵家の次男や三男といった出身で、貴族には違いないが、将来が安泰とは言えない境遇の者たちだ。

騎士や魔法使いとしての道も、どちらも身分制と実力主義の混成ハイブリッドな狭き門なので、とりあえず名前を売ったり力を見せつけて騎士として雇ってもらおうとしたりと、力に頼った短絡的でやや荒れた学園生活を送っているらしい。

もっとも、本気で田舎の男爵ともなると、そんな不良やってる余裕も無くなるらしく、逆に将来の嫁や婿養子先を求めて切磋琢磨している、と聞いている。

……ほんとに良いのか、それで。


そんな不良じみた一段が俺の前に立ち塞がると、リーダー格の伯爵家の次男が挑発的な笑みを浮かべ、見下ろすように俺に言い放った。


「お前がアルヴィンだな?

さすが侯爵家のご嫡男なら、さぞ腕が立つんだろう。

騎士団に遊びに行ってると聞いてるぞ。

少し手合わせでもしてみないか?」

その目つきは単なるいたずらではなく、俺の力量を試し、可能なら貶めたいと言う意図がはっきりと見て取れる。

(ふむ、これは無能アピールの絶好の機会じゃないか)

彼らの挑発に乗りつつも、俺は内心で策を練る。ここであえて負けておけば、上級生たちが噂を広めてくれて、俺の「無能」ぶりが定着するかもしれない。もしそれがうまくいけば、義弟カインに家を継がせるという俺の計画が一歩進むことになる。


「……まあ、そんなに言うなら少しだけね」

わざと無気力な態度を取りながら答え、歩を進めた。いかにも「やる気がない」という雰囲気をまとわせて、上級生たちが待ち構える一角へ向かう。

軽く構えを取った瞬間、派手な装飾が施された剣を腰に佩いた青年がにやりと笑い、威圧感たっぷりに家名を名乗った。


「レオンハルト・エッカルト。伯爵家次男にして、未来の騎士団長候補だ。せいぜい見せ場を作るといいさ、侯爵家の坊ちゃん」


その宣言と同時に、レオンハルトは容赦なく木剣を振り下ろしてきた。

目の前の青年――レオンハルト・エッカルト――その名前は聞いたことがある。直接的な関わりはないが、彼の家は領地経営の成功で名を馳せている伯爵家で、次男という立場ながらも早くも叙勲され注目されているらしい。


俺はわざとぎこちない動きで木剣を受け止め、体勢を崩すように後ずさりしてみせた。観衆の間から失笑が漏れるのが聞こえる。


「どうした、さっきの自信はどこへ行ったんだ?」


レオンハルトは余裕の笑みを浮かべながら、木剣を軽く肩に乗せ、俺を見下ろすように挑発してくる。その視線には、単なる侮蔑だけではなく、どこか値踏みするような鋭さも混じっていた。


(こいつ……ただの見下しじゃなくて、本気で俺の技量を探ってるな)


内心で警戒しつつも、俺は「無能アピール」を続けるために、さらにぎこちない動きを演じてみせた。


「どうした? 本気を出していいんだぞ、侯爵家の坊ちゃん」


次男は木剣を軽く肩に乗せ、挑発的な笑みを浮かべて俺を見下ろしている。その態度には明らかに侮蔑の色があったが、視線にはどこか鋭いものが混じっていた。


「いやいや、ここはお手柔らかにお願いしますよ」


へらっと笑って言葉を返しながら、内心では舌打ちしたくなるほどに怒りがこみ上げていた。俺がバカにされるのは慣れているが、リヴィアや他の誰かを侮辱されるのは、どうにも我慢ならない。けど、なんでこんなに腹が立つんだろう……? 自問しながらも、怒りを抑えるのに必死だった。


手合わせが始まると、俺は「戦いに勝って試合に負ける」作戦を決意し、わざとぎこちない動きで無様な負け方を試みた。しかし、次男が勢いよく木剣を振りかぶると、体が無意識に反応してしまう。剣道で培った動きが自然に出てしまい、相手の攻撃をさっと受け流し、隙を突いてしまう。


「ほう……さっきのはただの偶然ってわけじゃなさそうだな?」


次男は木剣を振り直しながら、俺の顔を値踏みするようにじっと見つめてきた。


「え、そ、そんな余裕無いですよ。とっさの、反射神経です」と、あくまで余裕のない新入生を演じながら応じるが、次男の笑みは消えない。むしろ、その目は俺の動きを注意深く追っていた。


「反射神経であんな動きができるなら、さぞ訓練された体なんだろうな? さすが侯爵家の坊ちゃん……お手本みたいな優雅な剣だ」


その言葉は褒めているようで、棘のある含みを持っていた。


焦った俺は、「いや、こんなことじゃダメだ!」と自分に言い聞かせ、わざと大振りをしてみる。しかし、またもや体が勝手に反応してしまい、相手の攻撃をかわしながら、自然と隙を突きかけてしまう。


「おいおい、侯爵家の剣ってのはこんなに軽々しいのか?」


次男は冷たく笑いながらも、目の奥にはわずかに警戒の色が浮かんでいる。


(ああ、くそ……これじゃ無能アピールにならない!)


考え込む間もなく、彼の攻撃がさらに勢いを増してくる。俺は仕方なく、意識的に大きな隙を作り、彼に技をかけさせるよう仕向ける。次男が満足げに振り下ろした一撃を受け、俺はわざと後ろに倒れ込んだ。


「どうした? 逃げてばかりじゃ勝負にならないぞ」


次男の余裕の声が聞こえる。取り巻き連中からは、俺が手も足も出ないと思ったのか、からかうような笑い声が上がった。


「おやおや、やっぱり大したことないな?」


そう言いながらも、次男は木剣を構え直し、わずかに目を細めて俺を観察しているのがわかる。その表情には侮蔑と疑念が混ざっているようだった。


「では、もう一度お手本を見せてもらおうか」


彼の言葉に、俺は心の中で舌打ちしながらも、あえてぎこちない動きを繰り返し、彼の攻撃をわざと受け続けた。衝撃を逃がしながら、またも後ろに倒れ込む。


観衆の中からは、「最初の動きはすごかったけど、やっぱり大したことないな」「新入生としては上出来だけど、上級生にはまだ遠いな」という声が聞こえ始めた。


「ふん、これで満足?」


わざと悔しそうな表情を浮かべてみせると、次男は勝ち誇ったように肩をすくめて笑った。しかし、その奥にはまだ俺を完全に信じきれない警戒の色がわずかに残っているように見えた。


「まあまあ、楽しい時間だったよ、坊ちゃん」


「最近入園準備で忙しかったからね」と、思いついた負け惜しみを言い返す。

俺の負け惜しみに、彼は鼻で笑いながら木剣を収めた。周囲の観衆が「やっぱり貴族だからってもられてたのかな」「まあ、入学前でこれだけ出来れば、すごい方かもよ」と囁く中、数人の目がまだ俺に注がれていることに気づき、心の中で軽くため息をついた。

(……これで本当に無能アピール成功なんだよな? だよな?)

これで終わりってことでいいんだよな?」


「いや、こんなもんじゃわからんよ。

剣の方だけで無く、何でも、魔法の方で名前が売れてるらしいじゃ無いか。

ちょっとその実力とやらを見せてもらいたいね」



相手の挑発に乗ったふりをし、無能アピールの絶好の機会だと思っていた俺だったが、どこかで魔法の詠唱を始めると妙な高揚感が湧いてきた。

かつて学んだ知識が頭の中で連鎖し、理論が勝手に動き出すような感覚だ。

「こちらから先に行くぞ」

起動詠唱を終えたらしい相手が、雑な理論で作られた魔方陣を起動し、派手だが威力の無い光線を放ってくる。

周りが見守る中、俺は落ち着いた口調で「Si vis pacem, para bellum」と起動詠唱を始めた。

静寂の中、魔法陣がゆっくりと地面に浮かび上がる。構築された魔方陣は複雑で、光の筋が地面を伝うように広がっていく。

「よし、これで相手の魔法を受け止めきれず、無様に負けるはずだ…」

そう自信を持っていると、その瞬間、見覚えのある銀髪が視界に入ってきた。驚いて顔を上げると、そこには幼少期に魔法を教えてくれた講師のリリスが、教師の装いでこちらを睨んでいた。

「この馬鹿弟子、何をしてるんだ!」

(えっ、なんでリリスがここに?)

俺は単に理論通りの魔法を起動しているだけのつもりだったが、どうやらリリスの出現に慌てたらしい。いつの間にか周囲の空気がピリピリと震え、魔力が高まりすぎていた。

そして、まだ完成前なのに。放たれた光線をすべて吸収し、正確に跳ね返して行く。

やばいかも、と思った瞬間

「ちょっと、アル君!

ちょっと待ちなさい、それ以上は……!」と言う叫び声とともにリリスが駆けて来た。

彼女の表情は青ざめながら、『fac, quod rectum est, dic, quod verum est.』と唇が動くのがわかる。

「アル君!

その魔法は今すぐキャンセルしなさい!」

起動詠唱え終えると同時に、声を張り上げながら、彼女は光の速さでキャンセル用の魔法陣を即座に構築し始めた。

リリスは数歩先に迫ると、俺の魔法を制御しようと呪文を繰り出し、キャンセルの魔力をぶつけて流れを止める。

「本当に危険なことをするな、この無鉄砲が!」

リリスは額にうっすら汗を浮かべ、叱るように叫ぶと同時に、魔力による爆発が起きる直前にそのエネルギーが吸収された。


「ふぅ…これでよし…」

彼女が、数度に分けて上空に魔力を放出し終えようやく安堵のため息をつくのを横目に、俺は事なきを得たことに胸を撫でおろした。

だが、すぐさまリリスがこちらに向かって厳しい目を光らせてくる。

「アル君、何を考えているの?

こんなに制御を疎かにした魔法を使って、無茶をするのもいい加減にしなさい!」

彼女はいつも通りの落ち着いた口調だったが、口調の端々には怒りが込められていた。

アルって呼ばれ方も懐かしいなと現実逃避しながら俺は少し目を逸らし、「いや……別にわざと強力にしたわけじゃなくて……その、リリスがいることに驚いて、制御が、その……」と弁解してみるが、リリスの視線は鋭かった。


「制御ミス、ってこと?

いいえ、雑な部分はあるけどきっちり制御出来ていたわね。

むしろ相手の攻撃を吸収して変換するって部分を、吸収して爆発するに構築ミスしたってことかしら。

幼い頃から理論には秀でていると思っていたけど、実際に放つとあれほどの魔法を発動させるとは。

ともかく。

これ以上、危険な魔法を無責任に使っては駄目よ。もう少し基礎から学び直す必要がありそうね」

これからきっちり基礎から教えてあげますと言う彼女の叱責を、俺は「まいったな…」と思いつつも受け止めるしかなかった。


上級生は、リリスが突撃してきたタイミングで、どこかに非常避難しているらしい。いつの間にかいなくなっていた。

だが周りからは「結局魔力は大きいけど、制御が甘いんじゃたいしたことなさそう」とか「将来はすごいんだろうけど、今は発展途上ってところか」という囁きが聞こえ始め、俺の狙い通りの反応でこそ無かったが、才能を生かし切れない無能な嫡男という噂が広がっていた。

正直、面倒ごとは避けたいのだけど――。

と、思っていたら……


「それにしても…」

リリスがため息をついた。

「私は剣術のことは詳しくないけど、アニスが『あのわざとらしい動きは何だ?

あからさまな手抜きではないか。実力を隠すなら、もっと上手くやれ。

それにしても、相手も、あんなバレバレの手抜きに気づかないとは情けない。

どっちも鍛え直しが必要だな』って怒ってたわね。

あなたが入学するからと、弟子が来るって自慢してたけど、結局来なかったみたいで。

それもあってか、試合の間、鋭い目つきで見ていたわよ」

「えーと、アニスさん、ですか?」と尋ねた瞬間、不意にどこからか、赤に近い茶髪をポニーテールにした、たくましい体つきの女性が姿を現した。その風貌には見覚えがある。

「忘れたとは言わせないぞ、レオハルト!」

アニスが堂々と言い放つ。

「幼少時にお前に剣を教え小姓ペイジとしたが、いよいよ学園に入学するお前を、余所に取られないよう近衛騎士団に迎えに来たんだ。

学園を卒業する前後には騎士として叙任も考えねばならない時期だからな」

その瞬間、リリスが眉を上げて言葉を挟んだ。

「ちょっと、何、そんな訳のわからない戯れ言を。アル君は魔導師として我が黄色の塔の期待の新人ホープなのよ。

学園に入ったこの機に、正式に魔導塔の弟子魔法使いとして登録するつもりなんだから」

アニスはふんと鼻で笑った。

「こいつは我が小姓の“レオハルト”だ。

お前の言うアル君とやらを探して登録すればいいだろう」

リリスも負けじと挑戦的に微笑んだ。

「それなら貴方こそ、レオハルトさんを探して叙任でも何でもすればいいじゃないの。

結局、来てなかったんでしょ」

アニスはさらに一歩踏み込み、リリスの顔を睨みつけた。

「来ていないなどとは一言も言っていないだろう?

これはお前の早とちりだ」

リリスも譲らず、目を細めた。

「それなら彼がどこにいるのかしらね?

立派な魔導師候補を育てるのは私だし、そう簡単に譲れるわけがないわ」

「ふん、すでにミドルネームを預けられているのだ、後は正式に叙任すればよいのだ」

「何よ、こっちだってもう愛称で呼んでるんだから」


突然、「お待ちなさい!」と鋭い声が割り込んできた。

声の主は、華やかな装いに身を包んだ女性で、豊かな巻き髪と印象派ならではの柔らかい色合いのドレスが目を引いた。俺が驚いて見上げると、その女性は自信に満ちた微笑みを浮かべ、アニスとリリスの間に立ちはだかった。


「あなた方が弟子にするのは結構ですが、彼がすべきは芸術の道ではありませんこと?」

その言葉に、アニスとリリスは一瞬きょとんとした表情になった。

「……ひょっとしてフィオーレ?」

「ひょとしなくても、フィオーレだ」

アニスが苦々しそうに言った。

「そうよ、アニス先生。そして、アルヴィン君は“印象派”を見いだしたように特別な才能を持っていることをご存じかしら?」

そういえば、最初に買った印象派の絵を紛れ込ましたのは、フィオーレだったなと、思い出す。そして最後にあったとき、彼女は……講師に推薦されたって言っていたのを今更思い出した。

「私たちの世界に彼のような人材が現れるのは百年に一度あるかないか。

彼が芸術の道に進めば、多くの人々の心を動かし、新しい潮流を生むわ」

フィオーレの言葉にリリスも呆れたように腕を組み、息を吐いた。

「いやいや、アル君には魔導の才がある。

たとえ芸術の才能があっても、彼の魔力を生かすべきなのは明らかよ」

「違います、リリス先生。

彼の心に宿るものは、魔法や剣術とは別の場所にこそ花開くのです」

フィオーレが再び主張する。

アニスも譲らずに一歩前に出る。

「何を言っている。レオハルトは私の剣術を継ぐ者だ。

魔法や芸術などの道で無駄にさせるものか」


三者三様の熱意に、俺は顔を引きつらせるばかりだった。

修羅場というには少し違うかもしれないが、どうにも複雑な状況に巻き込まれてしまったようだ…。



広々とした中庭には、どこか張り詰めた空気が漂っていた。

そんな中、俺の視界に鮮やかな濃い緑色髪をたなびかせた少女が映った。彼女はどこか懐かしい眼差しで周囲を見渡していた。

(あれは……どこかで見たことがあるような)

その時、彼女の目がこちらを捉え、瞬間、瞳が輝いた。少女は歩み寄り、ややはにかんだ笑みを浮かべて言った。

「……もしかして、あの時の……」

その一言で記憶が鮮明に蘇った。王宮に行く道に迷っていたとき、助けた少女だ。

「君は……あの時の?」

俺がそう問いかけると、彼女は嬉しそうに小さく頷いた。

「はい。レオハルト様、お忘れではないですよね?」

まさかの呼びかけに、思わず驚きを隠せなかった。王宮で会った時に名乗っていなかったはずなのに、彼女は俺の名前を覚えていた。


その時、後ろから別の声が聞こえてきた。

「あら、これは偶然ね。レオハルト、学園の下見に来ていたなんて思わなかったわ」

振り向くと、そこにはリヴィア・アルステッド――俺が密かに“ドジョウ様”と呼ぶ活発な少女が立っていた。まさかこの場で再会するとは思わず、俺は一瞬戸惑った。

「リヴィア、久しぶりだな。君も入学の準備か?」

「ええ、そうよ。でも驚いたわ。まさかあなたがこの学園に通うなんて」

リヴィアは意味ありげに微笑み、俺とセレナを交互に見た。

「まあ、レオハルト様。そちらの方は……?」

セレナが少し不安そうに尋ねる。

「え、ええと、こちらはリヴィア・アルステッド嬢。昔、旧街道の工事で協力してくれたことがあるんだ」

「そうなの……?」

セレナは興味深そうにリヴィアを見つめた。

リヴィアは軽く肩をすくめ、いたずらっぽい笑みを浮かべる。

「そうよ、なんだかんだで頑張ったんだから」

「でもレオハルト様、学園でまたお会いできるなんて、本当に嬉しいです」

セレナははにかむように言い、少し緊張した面持ちで続けた。

「あの時はありがとうございました。助けてもらったこと、ずっと忘れられませんでした」

その言葉に、リヴィアの眉がわずかに動いた。

「あら、レオハルト、どうやら人気者みたいね。学園生活が楽しみだわ」

俺は心の中でため息をつきながらも、軽く微笑んだ。

「何だか賑やかな入学になりそうだな」




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