狼少年と晴れ男の関係性について
ぼくは晴れ男なんだ。ニッコリ笑って言い放つきみの言葉は信用ならないものである。なぜならそれを口にした今も雨が降り、傘をさしているのだ。友達の友達という決して近くはない距離感のきみは、昔から時折どこから現れてはこんな戯言を口にしていた。狼少年と呼ぶのもバカバカしく、晴れ男というよりは雨男なんじゃないかと言いたくなるが、そもそもこの男一人が天候を操れるわけでもないのだから、ただの戯言をいちいち取り上げるものでもない。
連日のように降り続く雨の中、翌日の天気を確認すると降水確率が一〇〇パーセントと表示されている。ため息をひとつこぼすと例のごとくきみがどこかから現れ、ぼくは晴れ男なんだとニコリと笑った。明日は弟の野球の試合がある。レギュラーに選ばれた初陣が雨で中止だなんてあまりにも酷で、それなら明日晴れにしてよとわたしは意味もないことを口にした。いいよ、てるてる坊主を窓際に吊るすといい、とたんぽぽの綿毛よりも軽い言葉を放ち、きみは雨の中溶けていくように姿を消す。その日の夜は窓ガラスが割れるのではないかと想像するくらいに強い雨が打ちつけて、これじゃあ明日晴れるなんて無理だろうと思いながら、気休めにてるてる坊主を吊るして翌朝を迎えると、嘘みたいに晴れ渡る空があった。あまりの天気の良さにコンクリートに広がった水気も消え失せている。
それからしばらく経った雨の日、きみはどこかから現れて、ぼくは晴れ男なんだとニコリと笑う。わたしはそうかもねと肯定にも似た言葉を出しながら、さした傘の柄を握り締めた。
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