続話6:速報

 朧月:「続話6:速報」を12000字以内で執筆してください。

 第三者視点。

 アルトが旅立ってから約1年半、街は変わらず穏やかな時間が流れていた。

 そんなある日、新聞に速報が載った。

 『S級モンスター討伐!』それは久しく成し遂げられていなかったことだった。

 内容を読んでいくと、討伐に関わったメンバーの中にアルトの名前が。

 父親、母親、妹はそれぞれ知人からそれを聞き、夜に三人でアルトの活躍話に花を咲かせるのであった。



 ☆----☆


 アルトが旅立ってから約1年半が過ぎた。

 街はその間も変わらず、穏やかで平和な日々が続いていた。

 両親や妹にとっては、時折届くアルトからの手紙が日々の楽しみとなっていた。

 彼の成長を感じる手紙の内容は、家族にとって誇らしく、いつも笑顔を運んできた。


 しかし、その日、街は少しざわついていた。

 商人や住民たちが通りで何かを話し合い、時折興奮した声が上がっている。

 誰もが手にしているのは、街の新聞。

 通常は日々の些細なニュースや商業の情報が載っているその紙面に、大きく目を引く見出しが踊っていた。


「S級モンスター討伐!」


 その見出しは、誰もが思わず足を止めてしまうほどの衝撃的な内容だった。

 S級モンスターの討伐――それは、数年どころか、もう何年も成し遂げられていない偉業であり、街にとっても大きなニュースだった。

 討伐は、わずか数人の冒険者によって行われたと報じられていた。



 --父親のガレルの場合


 ガレルはいつも通り鍛冶場で働いていた。

 火の熱と金属を打ち込む音が響く中、彼は何かに集中していた。

 そんな時、同僚のトーマスが興奮した様子で鍛冶場に飛び込んできた。


「おい、ガレル! 大変なニュースだぞ! 聞いたか?」


 トーマスの慌ただしい声に、ガレルは手を止めて振り向いた。


「何だ? そんなに慌ててどうしたんだ?」


 ガレルは汗を拭いながら、少し驚いた様子で問い返した。


「今朝の新聞だよ。 見たか? 『S級モンスター討伐』だってよ!」


 トーマスは新聞をガレルに見せながら、興奮した口調で続けた。


「S級モンスター……それはすごいな」


 ガレルは少し感心しながらも、特に自分には関係のないニュースだと思っていた。

 S級モンスターの討伐など、冒険者の中でも一握りの者しか達成できないことだ。


 しかし、次の瞬間、トーマスが信じられないことを言い出した。


「お前の息子、アルトの名前が載ってるんだぜ!」


「な、何だって?」


 ガレルは一瞬、トーマスの言葉が信じられなかった。

 アルトの名前が新聞に? S級モンスター討伐に関わったメンバーの一人に、アルトの名前が載っているというのか?


 トーマスがガレルに新聞を手渡すと、彼は急いでその記事に目を通した。

 確かにそこには、S級モンスター討伐に関わった冒険者たちの名前が記されていた。

 そして、その中に「アルト」という名前がはっきりと書かれていたのだ。


「アルト……あいつが、S級モンスターを……」


 ガレルは驚きのあまり声を失った。

 息子が冒険者として成長していることは手紙を通じて知っていたが、まさかここまでの偉業を成し遂げるほどに強くなっていたとは、夢にも思わなかった。


「ガレル、すごいじゃないか! お前の息子、立派になったな!」


 トーマスはガレルの肩を叩きながら嬉しそうに言った。


「……ああ、信じられないな」


 ガレルは呆然としながらも、次第に息子に対する誇りが胸の中で膨れ上がっていった。



 --母親のリナの場合


 リナは家で洗濯物を干していた。

 いつも通りの穏やかな日常の中、時折アルトのことを思い出しては、その無事を祈る日々だった。

 そんな彼女のもとに、近所の女性、エルナが駆け寄ってきた。


「リナさん、大変なニュースよ! アルト君、新聞に載ってるわ!」


 リナは驚いて振り向いた。


「え、アルトが? どういうこと?」


 エルナは息を切らしながら新聞を差し出した。


「これよ! 見て! アルト君がS級モンスター討伐に関わったって書いてあるの!」


 リナは急いで新聞を手に取り、その記事を読んだ。

 そこには確かに、S級モンスターを討伐した冒険者たちの名前が記されており、その中にアルトの名前があった。


「アルトが……S級モンスターを……?」


 リナは驚きとともに、胸が熱くなるのを感じた。

 アルトが無事であることを確認できたこと、そして彼が冒険者としてここまで成長したことに、リナの目には自然と涙が浮かんできた。


「アルト……よく頑張ったわね……」


 彼女は感動と誇りで胸がいっぱいになり、思わずエルナと喜びを分かち合った。



 --妹のミアの場合


 ミアは街の市場に買い物に出かけていた。

 普段と変わらない穏やかな日常の中、彼女は市場で野菜を選んでいた。

 すると、通りかかった友人のリサが興奮した様子で駆け寄ってきた。


「ミア! すごいことが起きたよ! アルトお兄ちゃん、新聞に出てるよ!」


「えっ、どういうこと?」


 ミアは驚いてリサを見つめた。


「これ見て! アルトお兄ちゃんがS級モンスターを討伐したんだって!」


 リサが差し出した新聞を受け取り、ミアはすぐに記事を読んだ。

 そこには、S級モンスター討伐に関わった冒険者たちの名前が記されており、その中に確かに「アルト」の名前があった。


「お兄ちゃんが……S級モンスターを……?」


 ミアは驚きと同時に、誇らしい気持ちが溢れ出した。

 お兄ちゃんがここまで強くなったなんて、信じられない気持ちだったが、同時に彼の成長を感じることができて嬉しかった。


「すごいよ、お兄ちゃん……」


 ミアは目に涙を浮かべながら、アルトのことを思い出し、彼の無事と成長に心から喜びを感じていた。



 ----


 その夜、ガレル、リナ、そしてミアは揃って夕食を囲んでいた。

 いつもなら日常のささいな話題で会話が進むが、今日は全員が一つの話題で盛り上がっていた。


「アルトがS級モンスターを討伐したって、本当に信じられないな」


 ガレルは夕食の手を止め、驚きと誇りが入り混じった声で言った。


「そうね。 手紙では彼が頑張っていることは知っていたけれど、まさかこんなに早く大きな偉業を成し遂げるなんて……」


 リナも同じように感動していた。


「お兄ちゃん、すごいよね……いつも頼りなかったのに、こんなに強くなったなんて……」


 ミアは笑顔を浮かべながら言った。

 彼女にとって、アルトはいつも心配していた存在だったが、今は胸を張って誇れる兄となった。


 三人はアルトの成長と活躍について語り合い、その話題に花が咲いた。

 彼が遠くでどんな冒険をしているのか、これからどんな未来が待っているのか――その全てが楽しみで、話は尽きなかった。


「アルトはこれからもきっと、もっと大きなことを成し遂げるわよ」


 リナがそう言うと、ガレルとミアも同意するように頷いた。


「そうだな。 あいつなら、どんな困難も乗り越えてくれるさ」


「お兄ちゃん、これからもずっと頑張ってほしいな……」


 家族三人で語り合いながら、夜は更けていった。

 アルトの成長を喜び、彼の未来を楽しみにしながら、彼らの心には温かい気持ちが満ちていた。



 ☆----☆


 お読みいただきありがとうございます!


 嬉しい知らせというのは、たとえ人伝に聞いたとしても嬉しいもの。

 遠く離れた家族のこととなれば尚更ですよね。

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