続話5:揺思

 朧月:「続話5:揺思」を6000字以内で執筆してください。

 幼馴染のカレン視点。

 洋服屋を営む両親の手伝いで会計をやっている。

 そんなあるお客さんが居ないある日、ふとアルトのことを思い出す。

 今頃何をしてるんだろうなと思いながら、自然と心が踊り顔が赤くなっていく。

 ふとその姿を目撃した母親に茶化され、必死に誤魔化すカレンなのであった。



 ☆----☆


 カレンは、いつも通り両親が営む洋服屋で働いていた。

 店の奥で母親が新しい服の仕立てをしている間、カレンは店のカウンターで会計を担当していた。

 今日は比較的静かな日で、店内にはお客さんの姿がなく、しばらくの間、仕事も一段落した状態だった。


「今日は静かね……」


 カレンは窓から外を見つめながら、ついそんなことを呟いた。

 忙しい日は接客に追われて大変だが、こうして店が静かになると、自然と考え事が始まってしまう。


 ふと、アルトの顔が頭に浮かんだ。

 旅立ってからしばらく経ったアルトは、今頃どこで何をしているのだろうか。

 手紙が届くこともあったが、旅先での彼の冒険の様子を思い描くたびに、胸が少しだけ高鳴るのを感じていた。


(アルト……今頃、どうしてるんだろう?)


 カレンは心の中でそう呟きながら、彼との思い出がふわりと浮かんできた。

 幼い頃からずっと一緒に過ごしてきたアルトは、カレンにとって特別な存在だった。

 頼りなかった頃の彼が、少しずつ成長していく姿を見てきた。

 そして、冒険者として旅立った彼の姿を思い出すと、胸の中に暖かい気持ちが広がってくる。


「今頃、強くなってるのかな……」


 カレンはそう考えながら、自然と頬が赤くなっていくのを感じた。

 アルトが成長していく姿は、自分にとって誇らしいものでもあったし、同時に少し寂しさも感じていた。

 自分の知らない場所で、アルトが新しい仲間と共に成長していることを考えると、どこか遠くに感じる瞬間もあった。


「……バカみたい、私。」


 カレンは軽く頭を振って、考えすぎる自分を戒めた。

 自分は店の手伝いをしているのだから、こんな風にぼんやりと考え込んでいる場合じゃない。

 しかし、アルトのことを思い出すたびに、どうしても心が揺れ動いてしまう。

 そんな自分が少し恥ずかしくて、手元の帳簿に視線を落とした。


「カレン、何か考え事してるの?」


 突然の声に、カレンはびくりと体を震わせた。

 振り返ると、店の奥から母親が笑顔でこちらを見つめていた。

 カレンは慌てて背筋を伸ばし、いつものように明るく振る舞おうとした。


「あ、えっと……別に、何でもないわよ!」


 カレンは少し高めの声で答えたが、どうしてもその顔に浮かぶ赤みを消すことができない。

 アルトのことを考えていたなんて、母親には絶対に知られたくなかった。


 しかし、母親はそんなカレンの様子を見逃さなかったようだ。

 にやりと微笑み、カレンに近づいてくる。


「ほう……何でもないって言うわりには、随分と顔が赤いんじゃない?」


 母親は、まるで何か面白いことを見つけたかのような表情でカレンを茶化し始めた。


「えっ、そ、そんなことないよ! ただ、ちょっと暑いだけ……!」


 カレンは必死に取り繕おうとしたが、顔の赤みはさらに強くなってしまう。

 心の中では「お願いだからやめて……」と必死に叫んでいたが、外見はどうにも誤魔化しきれない。


「へえ、暑いだけでそんなに赤くなるかしら? それに、さっきからニヤニヤしてたじゃないの。 もしかして、誰か特別な人のことを考えてたとか?」


 母親はさらに追い打ちをかけるように、ニヤリと笑いながら言った。

 その言葉に、カレンはさらに動揺し、顔全体が真っ赤になった。


「そ、そんなことない! 誰かのことなんて、全然考えてないから!」


 カレンは勢いよく否定したが、どうにも言葉に説得力が欠けていた。

 顔の赤みは隠せないし、心の中で思い浮かべていたのがアルトだったことは、もう明らかだった。


 母親はそんなカレンの様子を見て、ますます楽しそうに笑った。


「本当に? どうせアルトくんのことでも考えてたんでしょ?」


「……ち、違うってば!」


 カレンは必死に否定しようとしたが、声が震えてしまう。

 心の中では完全に図星を突かれていた。

 アルトのことを考えていたのは事実だし、母親にそれを見透かされたことで、さらに恥ずかしさが込み上げてくる。


「ふふ、可愛いわね。 そんなに焦らなくてもいいのよ、カレン」


 母親は優しく微笑みながら、カレンの頭を軽く撫でた。

 その温かさに、カレンは少しだけ心が落ち着いたが、それでも恥ずかしさは消えない。


「……お母さん、いじわるしないでよ」


 カレンは少しだけ拗ねたように言いながら、母親から顔を背けた。

 だが、その表情には照れ隠しが混じっていた。


「ごめんごめん。 でも、カレンがこうして顔を赤くしてるのを見ると、何か可愛らしくてね」


 母親はそう言って笑いながら、カレンに再び優しく声をかけた。


「アルトくんも、今頃頑張ってるでしょうね。 あなたもあまり心配しすぎずに、彼の帰りを楽しみに待っていればいいんじゃない?」


「……うん、そうだね」


 カレンは少し小さな声で答えた。

 母親の言う通り、アルトが無事で元気に過ごしているなら、それで十分だ。

 彼が遠くで何をしているのかを気にしすぎるのはやめようと、自分に言い聞かせた。


(でも、やっぱり気になるんだよね……)


 カレンは心の中でそう呟きながら、手元の帳簿に視線を戻した。

 アルトがいない間、自分も店を手伝いながら成長しようと頑張っている。

 しかし、ふとした瞬間に彼のことを思い出してしまうのは、どうにも止められなかった。


(アルト……無事で元気にしててね)


 カレンは心の中でそう祈りながら、彼がまた帰ってくる日を楽しみにしていた。



 ☆----☆


 お読みいただきありがとうございます!


 女三人寄ればかしましい。

 いや二人でも十分姦しいよ、ホント。

 女二人寄れば姦しい、三人寄れば騒がしい、これが正解!


 それよりも、幼馴染と恋愛したい人生だった。

 女の幼馴染なんて居なかったけど……。

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