続話3:父親

 朧月:「続話3:父親」を6000字以内で執筆してください。

 父親視点。

 息子のアルトが旅立ってからしばらく経ったある日、同僚との何気ない会話。

 無意識に息子自慢をしていたようで、それを指摘されて頬をポリポリとかく。

 今頃どこでどんな活躍をしているのかと、頬を緩ませた。



 ☆----☆


 アルトが家を旅立ってから、数ヶ月が経った。

 父親のガレルは、彼がいなくなった家の中が静かになったことに、少しばかりの寂しさを感じていた。

 アルトが成長し、旅立っていくことは誇りでもあったが、やはり息子が側にいないというのは、父親としては少し物足りないものだった。


 今日もガレルは仕事へ向かい、いつものように同僚たちと過ごしていた。

 彼は地元の鍛冶屋で働いており、日々の仕事は忙しくも充実していた。

 鍛冶場の熱気に包まれながら、金属を打ち込む音が響く中、彼はふと同僚と何気ない会話を交わしていた。


「なあ、ガレル。 そういえば、お前の息子、旅に出たんだろう?」


 同僚の一人、トーマスがふとそんなことを言い出した。

 彼は仕事の手を休め、ガレルに興味深そうに目を向けている。

 ガレルは一瞬驚いたが、すぐに頬が緩んで答えた。


「ああ、アルトは今、外の世界を旅してるよ。 冒険者になって、色んな経験を積んでるんだ」


 そう言いながら、ガレルの胸の中には息子への誇りが湧き上がってきた。

 アルトが冒険者として成長し、自分の力で世界に踏み出していったことは、父親として何よりも嬉しいことだった。


「へえ、冒険者か。 そりゃすごいじゃないか。 お前の息子、相当強くなったんだろ?」


 トーマスは感心したように頷きながら、さらに質問を続けた。

 その言葉にガレルは、少し得意げな表情を浮かべた。


「ああ、そうだ。 アルトは六属性の魔法を使いこなせるようになっていてな、火や水、風に土、光に闇――どれも安定して発動できるんだ。 あいつ、昔はあまり自信がなかったんだけど、今じゃすっかり立派になってるよ」


 ガレルは息子の成長を思い浮かべながら、無意識のうちに自慢話を始めていた。

 彼がどれだけ魔法を練習し、どれだけ成長したのか、父親として見守ってきたからこそ、その変化は特に誇らしかった。


「六属性ってすごいじゃないか。 普通、そんなに全部扱えるやつなんて滅多にいないぞ?」


 トーマスは驚いたように目を見開き、さらに興味を持ったようだった。


「それに、冒険者としての道を歩むなんて、お前の息子、相当な才能を持ってるんじゃないか?」


「まあ、アルトは頑張ってるからな。 才能というよりも、努力の結果だよ。」


 ガレルは少し謙遜しながらも、心の中では息子の頑張りを誇らしく思っていた。

 アルトがここまで来るためには、相当な努力を重ねてきたことをガレルは知っていた。

 それを思うと、自然と頬が緩んでしまう。


 トーマスはその様子をじっと見つめていたが、やがてニヤリと笑った。


「おいおい、ガレル。 無意識に息子自慢してるじゃないか。 随分と誇らしそうな顔してるぞ」


 その言葉に、ガレルは少しばかり照れくさそうに頬をポリポリと掻いた。

 自分では意識していなかったが、確かに無意識のうちに息子の話をしてしまっていたことに気づいた。


「……まあ、そりゃそうだよ。 アルトが頑張ってるんだから、自慢したくもなるさ」


 ガレルは少し恥ずかしそうに笑いながら、開き直ったように答えた。


「そりゃそうだ。 親なら誰だってそう思うもんさ」


 トーマスも笑いながら頷いた。

 父親として、息子の成長を誇りに思うのは当然のことだ。

 それがどんな小さなことでも、親にとっては特別なことなのだ。


 しばらくの間、二人は仕事の合間に軽い会話を交わしていた。

 鍛冶場の忙しさは続いているが、ガレルの心の中は、息子のことを思い出すたびに温かくなる。



 ----


 仕事を終えて家に帰る途中、ガレルはふと空を見上げた。

 青空が広がり、風が心地よく頬を撫でていく。

 その風を感じながら、彼は無意識にアルトのことを考えていた。


「今頃、アルトはどこにいるんだろうな……」


 ガレルは一人ごとのように呟いた。

 息子がどこで何をしているのか、詳しいことはわからないが、彼が冒険者として成長している姿を想像するだけで、胸がいっぱいになる。

 どこかで危険な目に遭っているかもしれないし、困難な状況に直面しているかもしれない。

 それでも、ガレルは息子を信じていた。

 アルトは強くなったし、どんな困難も乗り越えられるだろうと。


 家に帰ると、リナが笑顔で出迎えてくれた。

 彼女もまた、息子のことを日々気にかけている。

 ガレルが家に入ると、二人で夕食の準備を進めながら、自然とアルトの話になった。


「ガレル、今日はどんな一日だったの?」


 リナが聞いてくると、ガレルは少し照れながら答えた。


「ああ、いつも通りだったさ。 でも、トーマスと息子自慢をしちまったよ。 無意識にアルトのことを話してたら、気づいたら自慢話になってたんだ」


 リナはそれを聞いて、くすっと笑った。


「それはいいじゃない。 アルトが頑張ってるんだから、あなたが誇りに思うのも当然よ」


 ガレルは妻の言葉に頷きながら、夕食の支度を手伝った。

 アルトの話をすることで、家の中もどこか温かい雰囲気に包まれる。

 それは、家族としての絆が確かにそこにあることを感じさせてくれた。



 ----


 夕食を終え、ガレルはリナと二人、静かにくつろいでいた。

 息子の話をしながら、彼が旅立った後の家の様子や、これからのことについてゆっくりと話す時間は、夫婦にとって大切なものだった。


「アルトがいなくなって、少し静かになったわね」


 リナがそう言うと、ガレルは頷いた。


「ああ。 寂しくもあるけど、あいつが成長していく姿を見守るのは、親としては嬉しいことだよな」


「そうね。 アルトはきっと、この旅でさらに強くなって帰ってくるわよ」


 リナの言葉には確信があった。

 息子が成長し、無事に戻ってくることを信じているのだ。


「そうだな。 あいつなら、どんな困難だって乗り越えてくれるはずさ」


 ガレルはそう言いながら、また頬を緩ませた。


 今頃、アルトはどこでどんな冒険をしているのだろうか。

 自分が鍛えた魔法を駆使し、新たな経験を積んでいるのだろうか。

 もしかしたら、困難な戦いに直面しているかもしれない。

 それでも、ガレルは息子を信じていた。

 彼がこの先どんな道を進もうとも、きっと強くたくましく成長して帰ってくると。


(……アルト、頑張れよ)


 ガレルは心の中でそう呟きながら、静かな夜の時間を過ごしていた。

 息子のことを思い出すたびに、彼の成長を感じ、誇らしい気持ちでいっぱいになる。

 そして、いつか再び彼が家に帰ってきた時、さらに成長した姿を見せてくれることを、ガレルは心から楽しみにしていた。



 ☆----☆


 お読みいただきありがとうございます!


 父親は子ども自慢しがち。

 写真持ち歩いたりして、会社の人に自慢話しちゃうやつw

 特に幼年期にありがちな、父親あるある。

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