第14話:思出
朧月:「第14話:思出」を4000字以内で執筆してください。
この話は幼馴染視点になります。
アルトの妹とお出かけをする日、準備をしている時にアルトとの幼少期からのことを思い出し、思わず微笑む。
最後にアルトの妹と合流し、市場へと繰り出す。
☆----☆
カレンは、鏡の前で髪を整えながら、ふとアルトとの幼少期のことを思い出していた。
今日、彼の妹であるミアと一緒に市場へ出かけることになっているが、その準備をしていると自然と昔の記憶が蘇ってきた。
「アルト……小さい頃はあんなに元気だったのに」
カレンは、鏡に映る自分を見つめながら、小さく微笑んだ。
幼い頃のアルトは、今の彼とはまったく違っていた。
活発で、好奇心旺盛で、いつも笑顔を浮かべていた。
カレンと一緒に遊んだり、冒険ごっこをしたり、当時のアルトは本当に無邪気で楽しい存在だった。
彼が今のように引っ込み思案になってしまったのは、いつからだろうか。
小学校の高学年になる頃から、徐々に暗い表情を見せるようになり、友達ともあまり話さなくなった。
そして、次第に家に閉じこもりがちになり、誰とも話をしなくなった。
カレンはその変化に心を痛めていたが、どう接していいのか分からず、ただ見守るしかなかった。
「あの頃、何かできたのかもしれないけど……」
カレンは少し後悔していた。
幼い頃は、ただ楽しく遊んでいるだけで満足していたが、アルトが変わっていく中で、彼を助ける方法を見つけられなかった。
それでも、彼が大切な幼馴染であることは変わらない。
アルトの変化を見守り続けてきたカレンにとって、彼が今どんな風に成長しているのかを知ることが、少しだけ希望になっていた。
「でも、最近は少し変わったみたいだし……」
カレンは、自分に言い聞かせるようにそう呟いた。
アルトが魔法の練習をしているという噂を聞いた時、最初は信じられなかった。
彼が自分から何かに挑戦するなんて、まるで想像もつかなかったからだ。
それでも、彼が少しずつ変わろうとしていることを感じ取った時、カレンは心の中で静かな喜びを覚えた。
「もしかしたら……彼も自分の道を見つけ始めたのかもしれない」
カレンはもう一度鏡の前で身だしなみを確認し、出かける準備が整ったことを確認した。
今日はアルトのことは少し脇に置いて、ミアとの時間を楽しもうと思った。
ミアはアルトとは対照的に明るくて快活で、時には厳しいところもあるが、芯の強い性格だ。
彼女と一緒に過ごす時間は、カレンにとっても大切なひとときだった。
「さて、そろそろ行かないと」
カレンは家を出て、ミアとの待ち合わせ場所に向かった。
市場に出かけるための準備は整い、彼女は少しだけウキウキした気持ちで歩き始めた。
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「カレン、お待たせ!」
ミアは待ち合わせ場所に元気よくやってきた。
彼女の明るい声が、周囲の人々の注意を引くほどだった。
カレンは思わず笑みを浮かべて、手を振った。
「待ってないわよ、ミア。 ちょうどいいタイミングだったわ」
ミアは小さく鼻を鳴らしながら、軽く肩をすくめた。
「そう? まあ、いいわ。 今日は市場に行くんだから、楽しまなきゃ損よ!」
カレンはその元気さにほっとした。
ミアといると、自然と気持ちが明るくなる。
彼女はお兄さんであるアルトのことを時々厳しい目で見ているけれど、カレンにはそれがミアなりの兄への期待なのだと感じられる。
だからこそ、ミアの口から出る冷たい言葉の裏に、どこか複雑な感情が隠れていることもわかっていた。
「ねえ、今日は何を買うつもり? 私、アクセサリーとか見てみたいんだけど」
ミアが嬉しそうに問いかけてきた。
彼女は、いつも明るくて何事にも積極的だ。
アルトとは正反対だが、そこにこそ彼女の魅力がある。
カレンはミアと一緒に市場に出かけるのが楽しみだった。
市場ではいつも新しい物が見つかるし、彼女と話していると時間が経つのが早い。
「いいわね。 じゃあ、まずはアクセサリーを見に行きましょう。 何か素敵なものが見つかるかもね」
二人は笑顔で頷き合い、足並みを揃えて市場へと歩き出した。
市場はすでに多くの人々で賑わっており、商人たちの声があちらこちらから響いてくる。
色とりどりの商品が並び、風に乗って漂う香りが二人の鼻をくすぐった。
「こういう日って、気持ちが晴れるわよね」
ミアは嬉しそうに言いながら、周囲を見回した。
「家のことやお兄ちゃんのこと、いろいろ考えることはあるけど、こうやって外に出ると、全部どうでもよくなるの」
「うん、分かるわ。 気分転換は大事よね」
カレンも賛同しながら、ミアと並んで歩き続けた。
彼女は、アルトのことを考えすぎず、今日一日はミアと楽しむことに集中しようと思っていた。
「そういえば、カレン」
ミアがふと振り返って、少し真剣な表情で続けた。
「お兄ちゃん、最近どう思う? 何か変わったと思う?」
その質問にカレンは少し驚いた。
ミアがアルトについて聞いてくるのは珍しいことだ。
しかし、カレンはすぐに笑顔を浮かべて答えた。
「変わったかどうかは、本人次第だけど……私は、アルトが少しずつ前に進んでいるんじゃないかって感じてるわ」
ミアはその言葉を聞いて、少し考え込んだ様子を見せたが、すぐに肩をすくめて笑った。
「そうかなぁ。 でもまあ、いいわ。 とにかく、今日はお兄ちゃんのことは忘れて、楽しみましょう!」
カレンは微笑みながら頷き、二人は市場の喧騒の中へと繰り出していった。
色とりどりの屋台が並び、賑やかな人々の声が響く中で、カレンは幼少期からのアルトとの思い出を心の片隅に置きながらも、今はこの瞬間を楽しむことにした。
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お読みいただきありがとうございます!
異世界なのに小学校どうこうっていう話が出てきちゃってますね……設定の区分けがちゃんとできてなかったのかな……?
実際はアルトとして生を受けて、物心ついた頃から今のアルトの性格や人格が受け継がれているので、幼馴染として出会った時からになります。
カレンがここまでアレンのことを考えているのは、幼馴染だからということもありますが、オドオドとネガティブな面を見せながらも、遊ぶ時はおぼつかないながらも頑張って楽しませようという優しい心が見えていたから。
ほっとけないというか、気が付けば「何してるのかな」と考えてしまう、そんな世話焼きなお姉さんのような心情が真ん中にあります。
それにしても、ミアのカレンに対する考え方がいまいち理解できていませんw
好きでも嫌いでもないようだけど冷たい言葉を言うし、自分から離れていったと思えばこうして一緒にお出かけするのを楽しみにしていたり……乙女心は難しいってことなんですかね?
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