第13話:二人2
朧月:「第13話:二人2」を4000字以内で執筆してください。
この話は母親視点になります。
アルトが泣いた日の夜、夫と二人で話をした。
アルトの成長を喜び、これからもっと変わっていくと力強く頷く。
☆----☆
夜が更け、家の中は静寂に包まれていた。
アルトが泣いた昼間の出来事が、リナの頭の中に鮮明に残っていた。
久しぶりに彼を抱きしめた感触、そして彼が自分の胸の中で泣き崩れた瞬間。
あの光の魔法が彼の手の中で輝いていたのを目撃し、母親として彼の成長を間近で感じたことが何よりも誇らしかった。
アルトが部屋で静かに眠りについている今、リナはそのことを夫のガレルと話したい気持ちでいっぱいだった。
彼もまた、最近のアルトの変化に気づいているはずだ。
彼がどんな思いで息子を見守っているのか、リナは知りたかった。
台所でガレルが仕事の合間に飲んでいたお茶を片付け、リナは夫が座っているテーブルの隣に腰掛けた。
暖かなランプの光が部屋を照らし、静かで落ち着いた雰囲気が広がっている。
「ねえ、ガレル。 今日、アルトがついに大きな魔法を発現させたのよ」
リナは少し興奮気味に話し始めた。
夫が彼女の言葉に顔を上げ、興味深そうに耳を傾けた。
「おお、そうか。 あいつ、やっと何か掴んだのか?」
ガレルは落ち着いた声で返事をしながら、じっとリナの顔を見つめた。
彼の目には、息子の成長を確かめる期待が浮かんでいた。
「ええ、輝く光の魔法を……すごく綺麗だったわ。 まだ完璧には程遠いけれど、アルト自身が自分の力で発現させたの。 彼はとても驚いていたけど、それ以上に感動して泣いてしまったのよ」
リナは、アルトが自分の胸に泣き崩れた時のことを思い出して、少し感傷的になった。
これまで何度も挫折し、誰にも頼れないと感じていた息子が、自分の力で前に進む姿を見た時、彼女もまた涙を堪えることができなかった。
「そうか……あいつが泣くほどのことだったんだな」
ガレルは穏やかな表情を浮かべ、感慨深げに頷いた。
「まあ、無理もない。 ずっと何もできないと思っていた自分が、ようやく成果を見つけたんだからな。 それだけの重みがあるんだろう」
リナは、その言葉に静かに頷いた。
アルトのこれまでの苦労と孤独を思うと、彼が泣いたのも当然だと思う。
彼はずっと自分を否定し続け、自分には価値がないと思い込んできた。
それがようやく報われた瞬間だった。
「アルトはこれからもっと変わっていくわ。 彼は、自分の力を信じ始めた。 これまでの彼とは違う、少しずつ自信を持てるようになるはずよ」
リナは力強くそう言いながら、夫の方を見た。
彼女の目には、息子の未来への希望が溢れていた。
ガレルは少し黙って考え込んでいたが、やがて微笑を浮かべてリナに頷いた。
「ああ、そうだな。 アルトは確かに成長してる。 まだまだ道のりは長いが、確実に前に進んでいるんだろう」
夫のその言葉に、リナは心から安心した。
彼女自身もアルトの成長を信じていたが、ガレルも同じ気持ちでいることを確認できたことが嬉しかった。
「でもね、今日は少しだけ心配になったの。 アルトが泣いているところに、ミアが帰ってきて……」
その言葉に、ガレルの表情が少し曇った。
「ミアか。 あいつは、アルトのことをどう思っているんだろうな」
「ミアはね……まだアルトのことをちゃんと見ていないのかもしれない。 彼が泣いているところを見て、何も変わっていないって思ってしまったの。 アルトがどれだけ頑張っても、彼女の目にはそれが届いていないみたいで……」
リナは、その時のミアの冷たい言葉を思い出しながら、少し悲しげに続けた。
アルトが泣いている理由を理解せず、ただそれを弱さの証として捉えるミアの態度に、リナは心を痛めていた。
「まあ、ミアにはまだ難しいのかもしれないな。 あいつもまだ若いし、兄貴の弱さばかり見てきたから、簡単には信じられないんだろう」
ガレルはそう言いながら、リナの手を軽く握った。
「でも大丈夫だ。 時間が経てば、ミアもアルトの変化に気づくさ。 お前がアルトを信じているように、俺もミアがいつか分かる時が来ると信じてる」
その言葉に、リナは少し救われた気持ちになった。
夫が家族全員を信じていること、その強い信念が彼女を支えてくれているのだ。
「そうね、きっとそうだわ。 ミアも、アルトのことを少しずつ理解してくれるはずよ」
リナは微笑みながら、夫の手をしっかりと握り返した。
彼女の心の中には、アルトだけでなく、家族全員が未来に向かって一歩ずつ進んでいけるという希望が芽生えていた。
「でも、本当にアルトは変わったわよ。 今まで彼がこんなに真剣に何かに取り組んだ姿を見たことがなかったけれど、魔法の練習を通じて、彼は自分の中にある力を少しずつ見つけているの」
リナの言葉に、ガレルは少し頷き、深く息をついた。
「あいつが魔法を使えるようになるとは、正直思ってもみなかった。 俺にはあの才能はなかったし、家系的にも普通の家庭だからな。 でも、アルトがその壁を越えたんだ。 すごいことだよ」
「ええ、本当に。 あの子はこれからもっと成長していくはず。 これまでの彼とは違う。 何かに挑戦し、乗り越えたその瞬間が、彼に自信を与えてくれると思うの」
リナは確信を持ってそう言った。
アルトが今日の魔法の成功を機に、さらに成長していくことを信じていた。
それがどんなに小さな一歩でも、彼にとっては大きな変化の始まりだったのだ。
ガレルはリナの言葉に深く頷きながら、静かに呟いた。
「ああ、アルトはきっと大丈夫だ。 俺たちが見守ってやれば、あいつはもっと強くなれる。 今はその成長を信じて、そばで支えてやろう」
その言葉に、リナは胸が温かくなった。
彼女もまた、夫と同じ気持ちでアルトの成長を見守っていけることに喜びを感じていた。
「ありがとう、ガレル。 あなたがいるから、私も頑張れるわ。 これからも一緒にアルトを見守りましょう」
「もちろんだ。 家族みんなで、支え合っていけばいい。 それが俺たちの役目だ」
二人は静かに微笑み合いながら、夜の静けさの中でお互いの手を握り続けた。
アルトの成長、ミアの理解、そして家族としての絆。
すべてが少しずつ変わり始めていることを感じながら、リナとガレルはこれからも息子を見守っていく決意を新たにした。
☆----☆
お読みいただきありがとうございます!
夫婦の会話は短い指示で良い感じに書いてくれるので、なんか好きだったりします。
この夫婦は放任主義なんですかね? ミアのことも「いつか分かってくれる」で置いておいてしまうのが、ちょっと気になります……。
まあ難しい時期の女の子って、何かを言う方が逆効果になるっていうのも実際あるんでしょうけどね?
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