第6話:変化

 朧月:「第6話:変化」を4000字以内で執筆してください。

 この話は母親視点になります。

 アルトのなにかが変わった、と母親が気付き、こっそりと特訓を覗くパートです。

 ※ここから別視点が入るようになります



 ☆----☆


 アルトの母、リナは日々の家事に追われる中、ふと息子の様子に違和感を覚えることが増えていた。


「最近、アルトが少し変わった気がする……」


 リナはふとした瞬間に思い出すように、そう考えることがあった。

 息子のアルトは、長い間何をするでもなく、ただぼんやりと家の中にいることが多かった。

 家事を手伝うわけでもなく、積極的に家族と話すわけでもない。

 彼の沈黙は、いつも空気のように存在していた。

 リナ自身も、それが普通のことだと感じ始めていた。


 けれど、ここ最近のアルトには、何かが変わったように見える。

 小さな変化だったが、母親であるリナは敏感にそれを感じ取っていた。


「何かをしている……?」


 アルトは最近、よく裏庭に出ていた。

 かつては部屋に閉じこもることが多かった息子が、外に出ること自体が珍しい。

 それだけでなく、裏庭から時折聞こえる静かな声や、不自然に落ち着きのない気配が、リナを不思議にさせた。


 家事をしながらも、リナの意識はいつもアルトに向いていた。

 何をしているのか気になって仕方がない。

 母親として、息子が何かに打ち込んでいるなら喜ぶべきことかもしれないが、それがどんなことなのか知りたい気持ちが膨らんでいった。



 ----


 ある日の午後、リナは裏庭で洗濯物を干しながら、アルトの動きに気を配っていた。

 息子はまた裏庭に出てきた。

 静かに、何かを始めようとしている様子が見て取れる。


「アルト……何をしてるのかしら」


 リナはそっと足音を消して、木陰からアルトの様子を伺った。

 彼は何かを持っているわけではなく、ただ手を前に突き出し、目を閉じて深呼吸をしている。

 それが何を意味するのか、リナには分からなかったが、どこか真剣な表情をしているのが印象的だった。


「……もしかして、何かの修行?」


 アルトが何をしているのかは分からないが、リナは息子がこんなにも真剣に何かに取り組んでいる姿を久しぶりに見た気がする。

 彼の変化に気づき、母親としての喜びが胸に広がる一方で、何をしているのか確かめたいという気持ちも抑えられなかった。


 リナは、こっそりとさらに近づいた。

 アルトの集中を邪魔しないように、息を潜めながら様子を見守った。

 彼の動作は慎重で、まるで何かを手に取り、触れようとしているかのようだった。


 その時だった。


 アルトの手のひらから、微かな光がふわりと浮かび上がった。


 リナは思わず息を飲んだ。

 その光は小さく弱々しいものだったが、確かにアルトの手のひらから生まれたものだ。

 母親としての直感が、それがただの幻想ではないことを強く感じさせた。


「……まさか、魔法?」


 リナの心臓がドキドキと高鳴る。

 魔法がこの世界でどれほど貴重で特別な力か、彼女は知っていた。

 魔法使いは特別な血統を持つ者や才能に恵まれた者だけが使えるものであり、アルトのような普通の家庭に生まれた者が扱えるとは思ってもいなかった。


「アルトが、魔法を……?」


 リナは信じられない思いでその光景を見つめ続けた。

 彼の手の中で光る光は、やがてゆっくりと消えていったが、その一瞬は確かに彼女の目の前で起こった現実だった。



 ----


 リナは息を呑みながらその場に立ち尽くしていた。

 アルトは再び集中を続けているようで、彼自身もまだその力を完全に制御できていない様子だった。

 しかし、リナには分かった。

 彼は確かに魔法を使っているのだ。

 弱々しい光とはいえ、それが彼自身の手で発現されたものだということに、リナは驚きと感動を禁じ得なかった。


「アルト……こんなことができるようになったなんて……」


 息子が変わったことを母親として喜ぶ気持ちが強くなる一方で、リナは同時に不安も感じていた。

 魔法は強力な力だが、その分危険も伴うことを彼女は知っていた。

 アルトがどうして魔法を使えるようになったのか、その理由も分からない。

 彼が何か無理をしているのではないか、誰かに強制されているのではないかという不安も拭えなかった。


「でも、どうして?」


 リナは家に戻りながら、自分の胸に浮かぶ疑問に悩まされていた。

 アルトが突然魔法を使えるようになるなど、考えもしなかったことだ。

 彼がその力をどうやって手に入れたのか、そしてその力をどう使っていくのかが、彼女にとっては見えない不安として残った。


「アルト……」


 夜、リナは台所で食器を片付けながら、またしても息子のことを考えていた。

 彼は何を考えているのだろう。

 なぜ魔法を使えるようになったのだろう。

 母親として、彼が何か大きな力を手にしていることに誇りを感じる反面、その力が彼を危険にさらすのではないかという恐怖が、リナの胸を締めつけていた。


「……話してみるべきかしら」


 リナは、自分からアルトに話しかけようか迷った。

 しかし、彼がこっそりと特訓していることを知ってしまった以上、直接問いただすのも気が引けた。

 彼が自分から打ち明けてくれるのを待つべきかもしれない。

 けれど、息子のことが心配でたまらない母親の心が、リナを押し続けた。


 その夜、アルトが部屋から出てきたところで、リナは思い切って声をかけた。


「アルト、少し話せる?」


 彼は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにその表情を隠して母親の前に座った。

 彼の顔には、少し疲れが見えたが、それでもいつもよりもどこか自信を感じさせるものがあった。


「お母さん、どうしたの?」


 リナは息を整えながら、静かに言葉を選んだ。


「最近、裏庭で何かしてるわね……少し気になっていたの。 もし話せることがあれば、聞かせてほしいの」


 アルトは一瞬戸惑ったようだったが、やがて静かに頷いた。


「……実は、少しだけ魔法が使えるようになったんだ」


 その言葉を聞いたリナは、やはり自分の見たものが本当だったことを確認して、胸が締めつけられるような感覚に襲われた。

 しかし、彼の顔にはどこか誇りが感じられ、彼が本当に自分の力で魔法を使えるようになったことを理解した。


「アルト……魔法は、とても大きな力よ。無理をしていない?」


「うん、大丈夫だよ。 まだ小さい光しか出せないけど、少しずつ練習してるんだ。 僕はこの力をちゃんと使えるようになりたい」


 その言葉に、リナは心から安堵した。

 息子はただ何かに流されているわけではなく、自分の力を信じて前に進んでいるのだと分かったからだ。


「そう……あなたが自分で決めて進んでいるなら、お母さんは応援するわ。 でも、無理はしないでね。 何かあれば、いつでも話してちょうだい」


 アルトは微笑んで頷いた。


「ありがとう、お母さん」


 その夜、リナは久しぶりに安らかな気持ちで眠りについた。

 息子が自分の道を見つけ、少しずつ変わっていく姿を見守ることができる喜びが、彼女の心を温めていた。



 ☆----☆


 お読みいただきありがとうございます!


 何故か父親はアルトが転生者だって知ってるみたいだけど、母親は知らないのか……。

 こりゃGPTたんの凡ミスだった可能性が高いですねw

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