第9話 期待に裏切りは付き物だよね
今日は水曜日。
雨が降る気配など全くない晴天の午後。
貞操逆転世界に転生したボクだが前世の年齢そのまま引き継いでいる。
つまり学校に通うのが義務付けられているわけだが、今日は行ってない。
というか行く必要なんてなかった。
「行っても虚しくなるだけだもんなあ」
イレナとデートしたのは一昨日の早朝から。
これだけみれば立派な不良に見えるがここはラノベみたいな貞操逆転世界。
そこら辺のテンプレ通り男に都合のいい設定が転がっていたりする。
「男はリモート授業がむしろ奨励されてるなんて」
まあ理由というか言い分というかそこら辺は理にかなってるよね。
非力で内向的かつ女子とあんまり関わりたがらないこの世界の男子とセオリー通り力も性欲も強い年頃の女子が同じ空間にいたらどうなるかなんて火を見るより明らか。
性に飢えた女子共に襲われて後はなだれ込むよう教室からヤリ部屋へと様変わりするだけ。
「統計的には欲求不満の女教師が男子に襲い掛かる方が上なのがツボポイントなんだよね」
そう。名目上、“同じ生徒同士いざこざが起こらぬよう”に見せかけて欲求不満な教師から男子を遠ざけようとするためだったりする。
「まあボクには関係ないけどねっ!」
マンツーマンの状態で女教師に襲われたり初めてのオスの匂い~みたいなバカな導入で教室中の女子たちにメチャクチャにされたりするらしいけど、ボクはそんな目に全く遭ってないんだよね。
マンツーマンの授業はむしろ願ったり叶ったりなものの大人の授業なんて皆無。
女子オンリーの教室でも何も起きないどころか友達ひとり作れてない。
いい加減泣いてもいいんじゃないかな。
「昨日あげてたやつの影響もまったくなかったし。はぁ」
デートがあった一昨日なんかこの世界に感謝しながらリモートに変えてたし、翌日から堅実に学園に顔を出してアピールするつもりだった。
デートから帰って来てさらにSNSにも『本物のレンタル彼氏』という動向が見え始めたあの日、夕飯済ませるためにわざわざ出かけてみた。
ぶっちゃけ誰かにお持ち帰りされるか路地裏に連れてかれて『本当はあなたもしたかったんでしょ?』って逆ナンされるのが目当てあったわけだけど………。
今まで通り何もナシ、ナッシング、人生の詰み。
「んもぅっ~~~!!」
「少し変わってるかなぁって期待したボクがバカだった………!!」
今まで通り誰にも男子だって気づいてもらえない何の変哲もない日常の続きだった。
これでは学園に顔出しても無意味なだけ。
暗澹たる現実にすっかりメンタルやられてリモートにしたまま学園に出てない。
「しょうがないのはわかるけど………はぁ~」
手がどうとか骨格がどうとか。
そりゃあはしゃいでしまうものですよ。
見た目はこれでも中はれっきとした男の子ですもん。
女の子と仲良くなれるかもって思ったらとことん調子に乗っちゃいますよ。
「すっかり遅くなったけどお昼ごはん、外で済ませよっかな」
もう希望が全く見えない学園よりひょんなことから巻き起こる出会いに期待した方が確立的にありな気すらしてきた。
「女装癖とか出来ちゃったらどうしよう………」
ピンク基調の女の子っぽい部屋に最初感じた違和感が薄れていくのが怖い。
見た目のせいで女子っぽい服着ることに抵抗は薄い方だったけどこの世界の服は女性服としか思えないやつが多い。
この前なんてイレナ好みの服着て歩き回ったりしたし。
このままじゃあいつか開いてはイケない扉がひらかれるんじゃあ………?
「いや、あり得ない。ボクは男の子、見た目はこれでも女の子が大好きな年頃の男子………」
自分自身に『大丈夫』だって唱えながら自分の部屋を後にした。
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