第3話

あの人に出会う少し前

私は妻帯者の國男という男と付き合っていた


付き合っていたと言うと響きはいいけれど

朝晩 國男の都合のいい時にうちにやってきて私の作った食事を食べ 私を抱いて仕事に向かう

ただそれだけの事だった


特別美人でもない

スタイルがいい訳でもない私を國男はよく

「飾りだ」と言っていた


國男とのセックスは嫌いではなかった

むしろ

麻薬的ななにかがあるような

体の中心が共鳴するような深い快楽があった


だから私は國男が妻帯者でサイテーな男でもすぐに別れることが出来なかった


それに

いつか付き合っていたやっぱり妻帯者の人が

「お前は魔法が使えるかもしれないね」

と言っていた


その時は意味がわからなかったけど

もしかしたら

妻より私を選びたくなるような魔法をかけることができる

そんな意味だったのかもしれないとずっと先に思った


魔法を使うたくなるような

そんなにまで愛する人に出会うことがあれば

1回くらい使ってみたいとも思う



狭いシングルベッドで

もがくように國男の背中やシーツをつかみ

声をあげる度國男の拳が私の口を塞いだ


突き上げる快楽と声を出すことを抑えられた苦しさで私は國男の拳に噛みつきながら果てることが多かった


そしてその後は

どこを触られても全てが反応して1人で眠ることが難しかった


私が眠りにつくまで國男がいられない日は冷蔵庫にもたれて毛布にくるまって眠った


冷蔵庫の振動が國男の心音にほんの少し似てる気がした

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不機嫌な幸福 @marimo0914

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