【番外編5】sweet situation

いつもの昼休み


―――――番外編 いつもの昼休み―――――


「二人は休日とか普段どこ行ってるの?」



昼休みに菊池くんが私達に聞いてきた。


春平をチラッと見ると、黙々とお弁当を食べているから、代わりに私が答えた。



「普段は私が部活あるから」


「あ、そっか」


「でもたまに部活ない時は春平のお家とかに遊びに行ったりしてる。あっ、私の家に来たこともあるよ!!」



真葵にはいつも春平とのことは喋っていて知っているから、リアクションしたのは菊池くんだけだった。



「へぇ〜。外に出掛けたりとかは……って、それは無いか。春平は人混み嫌うもんなぁ」



あんまり気にしてなかったけど、そういえば春平と街に出掛けるってことは初デートの映画……だけだったな。


なんとなく春平は人が多いところは苦手なんだろうなって思っていたけど、やっぱり人混み嫌いだったんだ。



もう一度春平を見ると、たまたま目が合ったから春平が「ん?」って私にアイコンタクトをくれた。


……春平、人混み嫌いだったのに私のために映画見に行ってくれたんだ。


やばい、きゅ〜ん。



ついデレッとしたら真葵が「マヌケ面」ってホッペを突いてきた。


ひどい!!



菊池くんはずっと黙っている春平の肩を叩いた。



「“こんぺいとう”で大勢の前とか面倒いこともあるかもしれねぇけど、春平も部屋に連れ込んでばっかじゃなくてたまには奏ちゃんをどこかに連れて出掛けてあげなよ」


「……なんでお前にそこまで言われなきゃなんねぇの?あと『連れ込む』って表現やめろ。……別に変なことしてねぇから」


「でもだからってずっと奏ちゃんの好意ばっか甘えんなよ。それに“こんぺとう”が落ち着いてきた最近なら、ちょっとずつでもいいから色々な場所に行くのも俺は良いと思うんだけど?」


「……」



菊池くんの言う通り、ちょっとずつ色んな人達とも打ち解けてきた春平のことを考えると……そうなんかな?


でも正直、私は不満もないし……何というか……



「私は春平と一緒にいれたらそれだけで充分だなぁ」



照れながら私が言うと隣の真葵も何故か顔を赤くした。



「カナ……あんた、皆の前でハッキリと……恥ずかしくないわけ?」


「え……だってホントだし」



私はお茶を開けると「奏」と呼ばれた。


春平は私をまっすぐ見ていた。



「……奏……俺も」



春平にそう言われてお茶を飲むのも忘れて、顔が茹で上がった。


その言葉を聞けたら、私はもう幸せ者だー!!


真葵が大げさな溜め息を吐いた。



「やだやだ、教室の真ん中でバカップル!!」


「もー!!真葵が皆でお昼ご飯食べようって言ったくせに!!」



今日のおだやかな昼下がり。

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