第84話

洗面所に来て何分経っただろうか … 。

帆夏はというと未だに洗面所から動かずに考え事をして悩んでいた 。準備をしなければならないというのに 。



夏樹はいうと 、部屋の中で着々と準備を進めていた 。

新しい制服に着替え 、鏡台の前に立つ 。そしてその後

手慣れた手つきでワックスを付けた髪を自分好みに整える 。



隣の部屋から何も音がしないので夏樹はある程度

整えた後帆夏の様子を確認しに洗面所へと向かう 。

するとそこには未だにずっと鏡を見つめてる彼女が居たので耳元でこう囁いた 。



「 早く準備しねえと何するか分かんねえよ ? 」



すると帆夏は流石に気付いたのか夏樹の方を

振り返ようとはせずに無言で階段を駆け上がって行った 。



その様子を見た夏樹は 「 面白いヤツ 」 と呟いた 。




ようやく全ての準備を終えた帆夏は下に降り 、

朝食をちゃっちゃかと済ませ 〝 行って来ます 〟と

言って鞄を持ち玄関へと向かう途中で誰かに呼び止められる 。



「 あのさ 、 何一人で行こうとしてんの ?

誰が一人で行っていいなんて言った ? 」



声の主は夏樹だ 。手には綾子が夏樹のためだけに作った手作りのベーグルを持っていた 。



「 … これからはさお互い別々に行こうよ 」



そう言った瞬間 夏樹は無言で帆夏を睨み付けた後

靴を履きドアを開け先に出て行った 。



「 …… 。 」



夏樹が怒るのも無理ない 。だって2人は今まで一緒に通っていたのだから 。2人一緒に 。夏樹にとってそれが唯一の楽しみだった 。それを帆夏は一瞬で台無しにした 。



夏樹が帆夏を睨むなんて初めてだった 。

帆夏は曇った表情を浮かべながらも学校へと向かった 。

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