第82話

しかし早く顔を洗わないと次の段階に進めない 。

帆夏は意を決して顔は俯いたままで左に扉をスライドさせ真っ先に洗面所へと向かい 、髪留めを探す 。




一方の夏樹は帆夏のあからさまの態度が気に食わなかったのか後ろから近付き彼女を抱き締める 。

当然帆夏は驚き手の動きが止まる 。



「 …… !?!? ちょっと !! 夏樹 何 !? 」



「 何じゃなくね ? 何で避けんの ? 」



「 べ … 別に避けてなんかないでしょ !

とにかく顔を洗いたいから離して ! 」



「 理由教えてくれたら解放してやるよ 」



「 … ッ ! … 何なのよ本当に … 。

何でそんな意地悪するの … 。困る 。 」



「 意地悪する理由なんか一つしかねえだろ 。

つーか人の話聞いてた ? 俺が聞きたいのはそれじゃない」



「 … 避けてはない 。 アンタの … 、 … ッ … !

そんな姿見たら何も考えられなくなるから … ッ !!

だから素通りしたのよ !! これでいい !? 」



そう答えた瞬間には帆夏の体は向きを変えられていて

気付けば目の前には夏樹が居て 、目が合う 。



「 ~ ッ !!! 朝から何考えてんのよ !!

こういう事も辞めて欲しい !! 」



「 … そっ 、悪かったな 」



夏樹はそう謝った後扉をスライドさせ階段を上がって行った 。



去って行った時の夏樹の表情は呆れているような

そんな感情が読み取れた 。



だって … あんな夏樹初めてなんだもん … 。

だからどうしていいか分からない 。

でも一つだけ分かる事がある 。

それは夏樹は帆夏の事をもう 幼馴染み じゃなくて

一人の女の子 として見ているという事 。

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