第55話

「…え… ? 」



一瞬目の前に居る冬馬の質問が理解出来なかった 。



「お前のクラスの担任の 棗 京介 (なつめ きょうすけ )

もしかして今まで名前知らなかったのか ? 」



「はい… 。」



私は本当に知らなかったので素直にそう答えた 。



「幻滅した 。 普通好きなら担任の名前くらい

把握するだろ 。 まあそれはいいとしてだが 、

お前に忠告しとく 。先生は辞めた方がいいぞ 。 」



「…え… ? 何で…ですか… ? 」



「後悔しても知らないぞ ?

自分で知った方が良いんじゃないのか ? 」



「…私 怖くて聞けないんです… 。 」



そう答えると 、冬馬は「はぁ…」と溜息を付いた後 、



「なら今から言う事絶対聞き逃すな 、いいな ?

後 、もう一度言うが 、後悔しても知らないからな ? 」



そう言う冬馬に対し 、 私は彼の目を見て 、



「はい。」 と頷いた 。



「お前のクラスの担任の 棗 京介 だけど 、

アイツには婚約者が居る 。それもこの学校にな 。 」



… え … 婚…約…者… ? 先生に… ?

ウソ…そんなの知らない 、知りたくもない… 。



そう冬馬の口から放たれた言葉の続きを

最後まで聞かずに私は無言でその場から立ち去った 。



「〝 はい 〟って言っておきながらも 、

結局後悔してんじゃねーか 、馬鹿な奴だな 。 」



東雲冬馬は 、そう言って外していたイヤホンを

再び耳に装着し学校へと向かった 。

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