第52話

〝 入って来ないで 〟なんて夏樹に対して

言ったのは初めてだった 。



避けてる訳では無いのに 、行動では

まるで夏樹を避けてるようだ 。



本当は避けたくなんか無いのに …… 。



普段通りに接したいのに体が動かない … 。



ということは私自身が夏樹を避けている 。



こんな行動を取ってしまうのは

美鈴に再会した昨日からだ 。



美鈴の彼氏が夏樹であるということを本人の口から

聞いて 、 そして2人が付き合い始めたのが卒業式から

ということを知ってしまって以来 、どうも夏樹に対して

今まで通り接する事が出来なくなっていた 。



さすがに心配になったのか 、部屋の扉が開かれ

母親である 綾子さんが入って来た 。



そして布団の中に居る私に向かって



「帆夏ちゃん 、大丈夫 ? 学校お休みするなら

学校に連絡するけどどうする ? 」



と傍から言ってきた 。



「…連絡お願いします… 。 」



布団の中から顔を出して言う訳でもなく 、

布団の中からそうお願いをした 。



「…そう…。お大事にしてね 。

私 今日 急なお仕事頼まれたから行かないとなのよ 。

帆夏ちゃんの面倒見れないのよ 、そこで代わりに

夏樹に休んで貰うから何かあったら夏樹に言ってね ? 」



そう言って綾子さんは私の部屋を出て

再び下へと降りて行った 。



…え…? 今 夏樹に休んで貰うって言ったよね ?

ということは夏樹と2人きりって事だよね…?



そう思ったら 、 私は布団の中から身体を起こして

ベッドから離れ 、 ハンガーに掛かっている制服に

手を伸ばし 、猛スピードで身支度を始めた 。

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