第45話

「は…?恋心…?担任に?」



「てっ…てか!お兄ちゃんには関係ないじゃん!

それより、ここ夏樹君の家なんだから軽々しく入って来ないでよ!!お兄ちゃんとはもう他人なんだから。」



そう言った瞬間実兄である環は 、

今までとの態度とは一変した態度を

実の妹である帆夏に示したのだ 。



「…はっ、そうかよ…。まぁ、事実っちゃあ事実だわ。

俺はあの家を出て、彼女と同居してるし、友梨夏も

次いで出て 、勝手に一人暮らし始めてるしな 。

んでお前は、俺のダチの祐樹の弟の夏樹だっけ?

そいつん家で暮らし始めたんだもんな 。」



「…うん。」



「ああ、言っとくけど、俺と友梨夏 別にお前の事

捨てたわけじゃねえからな。そこだけは勘違いすんなよな。俺ら3人でこの家庭を引き継ぐなんて無理だと

思ったから、俺らは家出をして、帆夏は綾子さんに

託そうって事だからお前は今ここに居るんだからな。」



「……。…もう過去の話はいいから。

もうほっといてよ。私は私なりにやってくから!」



そう帆夏が言い放った瞬間 、環は何も言わずに

居間の扉を勢い良く閉め、帰って行った 。



______ そう 、 私は今 忘れ掛けていたが 、


もうあの頃の わたし ではない 。



この家に来てから、

明るく振舞って来たが 、そろそろ限界だ 。



〝 星野帆夏 〟として生きて行くってあの時決心したのに

私は担任の前で思いっ切り忘れていた記憶から消し去ったはずの苗字を言ってしまっていたのだ 。



そして 、実の兄である環の事も同時に忘れ去ろうと決心したのに今まで通り接してしまっていたのだ 。



______ 何故 … 。



こんなにも自分の事を苦しめた 〝 過去 〟 を



完璧に全て何事も無かったかのように忘れる事が



出来たなら今どんなに平和だろうか … 。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る