初恋

第42話

「ただいま…。」



そう言って帆夏は、家の中へと入って行く 。



居間へと入り、今の時刻を確かめるために

時計に目をやると針は、12時丁度を指していた 。



この時間は4時間目の授業の最中だ 。

教科は帆夏の最大の苦手教科の数学 。



「…行かなくて良かった…。」



帆夏は、そう呟いた後鞄をソファに投げつけ、

洗面所へと向かい、手洗いとうがいを済ませる 。



済ませた後、再び居間へと戻り、今度は

昼食を作るため冷蔵庫を開け、食材を探す 。



帆夏は、いくつか食材を見つけた後、

手際良く作業を進め、料理を完成させた 。



メニューは、帆夏特製のカルボナーラ 。



帆夏は、幼い頃から母 沙織の手伝いを

進んでしていたため料理は得意としている 。



ちなみにカルボナーラは得意料理の一つでもあり 、

沙織と父 博己が同僚の人との飲み会で帰りが遅い時、

姉の友梨夏と兄の環によく振舞っている 。



「やっぱ、美味しい~。」



テレビを見ながら、自慢の手作り特製カルボナーラを

食べ進めていると、家の扉が開く音が聞こえたのと同時に環の〝ただいま〟という声が聞こえてきた 。



〝やばい〟と思ったが、靴が有る時点で帆夏が

家に帰って来ていると環には既にバレている 。



『ガチャ』という居間の扉が開く音と共に

学校帰りの環が鞄を持って中へと入って来た 。



〝怒られる…〟と思い、少し肩を竦めながら

黙々とカルボナーラを食べていると、



「何お前1人だけ美味そうなの食ってんだよ、

うわ、それ俺の大好物じゃん!俺にも頂戴♡」



と真横から聞こえて来て思わず帆夏は声を上げる 。



「うわああああっ!!ちょっ、真横でいきなり

言わないでよっ!!びっくりするじゃんか!!」



「お前どうせ俺が呼んだって聞こえないフリしそう

だから、近くに行くしかねーかなって。」



「にしても近いよ、馬鹿環!!」



「兄貴に対して馬鹿はねーよな?なあ?」



「うっさい!!言っとくけどあげないんだからね!」



「へいへい。相変わらずケチな奴。つか、お前何でここにいんの?幾らなんでも帰り早過ぎじゃね?」



「…環には関係ない。」



「家族なのに関係ないって事はねーよな?

まさかお前早退して来たんじゃねーだろうな?」

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