第37話
帆夏が逃げてきたのは、誰も居ない教室だった 。
その場所は普段は少人数で授業を行う時に使われる教室となっており、滅多に使われない 。
そのため所々が薄汚れている 。
当然人気だって全くない 。
「…ここまで来れば平気だよね…。」
と空いた席に腰を下ろし、そう呟く 。
次の瞬間だった ___________ 。
どこからか『ガタン』という物音がした 。
帆夏は一気に恐怖に襲われ、思わず叫ぶ 。
「いやあああああああっ!!!!」
恐る恐る目を開けると、目の前は真っ暗 。
どうやら、誰かに抱き締められている 。
「…ふふふ、オマエはこの場所を知ってんだな。」
と耳に聞き覚えのない声が聞こえてきて、
帆夏の身体は更に震えを覚え、肩をビクッとさせる 。
「そんな怯えんなよ。俺別に何もしねーから。」
その声はどこかで聞いた事のある声だった 。
相手の胸から顔を離し、上を見ると 、
その顔は見覚えのある顔だった 。
その人物が誰だか分かった帆夏は、ぱっと離れ、
その人物から遠ざかるように逃げようとする 。
「ちょっと待てよ。何で逃げんだよ。」
とその人物に腕を掴まれる 。
「…ごめんなさい、急に。」
「嫌、謝られても困る。オマエ何もしてねーじゃん。
逃げる前に、聞きたい事があるんだけど。」
と言われ、帆夏は逃げようとしていた体制を変え、
その人物の方に姿を向けた 。
「オマエ、朝さ俺と冬馬の事見てた奴だよな?
でさ、オマエは俺と冬馬の事知ってんの?」
「いえっ…全く知りません。ただ、凄く騒がれていた
からどんな人達なのか気になって…」
「へぇ…、どんな人達…ねぇ。まぁ、細かい事は
良いとして、まず名前聞こっかなー。名前は?」
「この学園の中等部1年の 三原帆夏 です 。 」
「中等部1年っつー事はさ、新入生?」
「はい…そうです。」
「じゃあ、だとしたら良くここまで来たな。」
帆夏にはその人の答えが理解出来なかった 。
「どういう意味ですか…?」
「このエリア、高等部のエリアなんだよ、
オマエ知らないだろうけど。」
「え…エリア?」
「そ。だからさ、良くここまで来れたなって思ってさ。
あー、俺は高等部1年の 高梨星名 だ 。宜しく 。」
「あっ、はい。宜しくお願いします。」
「オマエ、三原帆夏つったっけ?
オマエは何も知らずにここに来たって事だよな?」
「はい…そうです。」
「あっはは!いやー、尊敬するわ。
何も知らずにこの場所に来るなんてオマエが
初めてじゃねーかな、きっと。」
「そ…そうなんですか…。」
「まぁー、いいや。で、要件は何?」
「…!!」
そう聞かれた瞬間、静華の質問の時の事を思い出した
帆夏は、何も言わず再び先程と同様鞄を持って
すぐさまにその場所を立ち去った 。
「は…?…何なんだよ、アイツ…。」
と1人残された星名はそう呟いた 。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます