第29話

その日から私は、〝三原帆夏〟から

〝星野帆夏〟になった 。


もう過去の苗字は捨てて、新たな名前で

この世界を生きて行こうと思った 。


変えたかったのは 、 今までの事忘れたいから 。

もう家族自体 私の記憶から消し去りたいと思ったから 。


私の家族は〝あの人達〟じゃない 。

今 私を受け入れてくれた 〝彼〟こそ

私にとって 〝本当の家族〟と言える存在であるから 。


あの時、例え夏樹くんが受け入れてくれても 、

母親である綾子さんが受け入れてくれるか

どうかが不安で堪らなかった 。


しかし、驚く事に夏樹くんの母 綾子さんは私を

すぐに受け入れてくれた 。

あまりにも驚きで綾子さんに聞いたら 、

どうやら 環と友梨夏に自ら私の事を

〝引き取らせて欲しい〟と申し出たと言う 。


その事を聞いた瞬間、涙が止まらなかったのを

今でも鮮明に覚えている 。


そして涙ながらに、綾子さんに向かって

「ありがとうございます」と何度も何度も

頭を下げたのも覚えている 。


だから私が、今の私がここに存在しているのは 、

全て 隣でご飯を嬉しそうに食べている 彼こそが 、

気が付けば いつも 傍に隣に居て 、家族よりも

距離が近い存在で 、友達以上恋人未満で 、

私にとって世界一大切な幼馴染み 。

そして かけがえのない 存在 。


「あ〜美味しかった!お母さんご馳走っ!

よし、準備して学校行こ〜っと!

帆夏ちゃん、ちょっと待っててね!」


「ふふふ、ゆっくりでいいよ。」



今日から再び彼との、新たな場所で、

新たな生活が始まろうとしていた 。

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