第5話

静かな朝食タイムが終わり、環は洗面所へと向かい、帆夏は入学式に向け、傍に置いておいた黄色い帽子を被る。



「今日は、帆夏の入学式だね。あんなに泣き虫だった帆夏もやっと小学生か〜。大丈夫かなぁ…帆夏。」



と新聞を読みながら、目の前でコーヒーを飲んでいる沙織に向かってそう話し掛ける 。



「そうね〜。あの子ならきっと大丈夫じゃないかしら。何てったって私の自慢の娘ですもの。」



『バァァァァン』



とリビングの扉が勢い良く閉められた 。



リビングの扉を勢い良く閉めたのは友梨夏だった 。



どうやら沙織の言動が原因のようだ 。



「…友梨夏、お前何かあっただろ。朝から変だぞ。」



洗面所で髪のセットを終えた環が彼女に向かって言う 。



「…うるさい!!!」



と放ち、階段を駆け上がって行った 。



「環、何の騒ぎ?扉開けたのアンタ?」



「…俺じゃない。友梨夏。」



その言葉を聞いた沙織は、何も言わず踵を返しリビングへと戻った。



「沙織、誰だったんだ?」



「あの子の仕業らしいわ。」



「あの子って友梨夏か?」



「そうみたいね。…どうしてあんな子になっちゃったのかしら…。あんな風に育てた覚えはないわ…。」



「母さんの言動じゃねーの?」



開かれた扉から低い声が聞こえて来た。



「環…?」



「さっきさ、帆夏の話してた時さ、自慢の娘って言っただろ?あの言葉が友梨夏を苛つかせたんじゃねーの?」



「……。」



環にそう言われ、沙織は何も言い返せなかった 。

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