第56話

晴人にある事がきっかけで助けられて

仕舞いには抱き締められたなんて

口が裂けても言えたもんじゃない。



『…栞?』


『…あっ、ごめん!晴人の事って?』


『記憶無くしたきっかけ何か知れたかなーって』



栞は心の中で雅にウソは付きたくない、かと

言って本当の事言って傷付けてしまったら。



ウソを付いて誤魔化すか真実を話すか、

その2つの思いが彼女の頭を悩ませる。



余り時間も掛けられないので傷付いたら

上手く説明すればいい、そう思い、



『うん、話してくれたよ』

そう答えを出した。



『そっか!後悔してる?』


『ううん。寧ろいい経験出来たよ』


『お!なら良かったー!匠海と心配して

たからそれが聞けて安心したよ!』


『心配してくれてありがとう。』


『ううん!でもさ、ずっと言おうか

迷ってたんだけど黙っている事も

無理だから言うけど栞の事だけ完全に

忘れてるよね?』



その言葉を聞いた栞は

胸が突然ズキンと痛み出す。



『ごめんね!栞!私が言わなくても

勘づいてたかも知れないけど黙って

いる方が無理だったから…。許して…栞。』



そうスマホ越しに謝る雅の声は

微かにだが震えてる様に思えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る