第57話


「 …っ、もう!なんなのよ…!」

涙声混じりながらも言葉を発する。



「 はー、もういい加減認めたら、?

単刀直入に言うけど鳴海さ、

俺の事好きでしょ、? 」



「 …!!! はっ、なっ…!」



___ ウソ! え、いつから気付いてた?

あたしそんなバレバレだった…、?



「 俺が気付かないとでも思ってるのか

分かんないけど俺ん家に来た時くらい

からずーーーっと気付いてたよ 、」



「 …… っ … 、なんで…、」



「 ははっ、なんでって。そりゃ鳴海の取る

行動、態度、反応全部分かり易いから。」



「 ……っ 、」



「 ただ 、俺が好きって事が果たして

ほんとなのか確信持てないんだよねー。」



「 …… ! …ど、どういう意味、?」



「 言わなきゃ分かんない、?」



そう言われてる時にはあたしの顔は

いつの間にか彼の両手に包まれていて

目が合う体制にされていた。



「 ……っ、ち、近い… 、」

あまりの近さに耐えれず顔を逸らそうと

すると、「こっち向いて、?」 と

柔らかな声と共に簡単に戻される。



「 ちょっ …… ! 」



「 ふふっ、顔真っ赤。それと泣き顔も

可愛いんだね。でもこうでもしなきゃ

鳴海答えてくれなさそうだから。」



「 …なっ、! …も、もう!

あんたは、な、何を知りたいのよ! 」



『 それは 、』と言ったならグッと顔を

更にこちらに近付けて来て一言。



「 昔の俺を、なのか 、今の俺をなのか。」



___ え 、? 今 なんて …… 。



まさか彼から打ち明けてくれる

日が来るなんて誰が予想した、?



彼の前で何回泣いたかなんて分からないど

目からは分かりやすく大粒の涙が溢れる。

あたしはこいつに泣かされてばっかり。



そんなあたしを見た彼は今まで一度も

見せた事が無いであろう優しい笑みを浮かべ、

あたしの頬を包んでいた両手はあたしの

目元に伸ばされていて両親指でそれぞれの

目から伝う涙を拭ってみせたあとこう言ってきた。



「今まで黙ってて、会う度沢山意地悪して

困らせて傷付けて泣かせてごめん、栞。」



いつもの “ 鳴海 ” じゃなくて、はっきりと

“ 栞 ”と確かに名前を呼んだのを聞いて

拭われて止まったと思われた涙は再び

ブワッと溢れこぼれ落ちてゆく。



ずっとこの瞬間ときが来るのを

心のどこかで待ってたし、期待してた。



「 …ふぇ、…っく、うぇ…、」



「 ふっ、ほんと良く泣くね〜。

なんか俺泣かせてばっかだね。

ごめんね、栞。でもやっと会えたね 。」



ほんとどこまでも性悪しょうわる

クズで最低最悪野郎なのこの男は!!

そしてあたしもなんでこんな奴を好き

なのだろうか、変わってる。



「 誰のせいだと…!

あんたなんかほんと大っ嫌い…、」



そう吐き捨てたあと泣き疲れて

一息着こうと思ったのも束の間。

そんな隙など与えぬまいと、彼の両手は

再びあたしの頬を包んだかと思えば

顔を傾けこちらに近付いて来たのを

感じ思わず目をキュッと瞑る。



「…………!!!!」



目を閉じていながらもハッキリ分かったのは

彼の優しい口付けが落とされたということ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る