第54話

真後ろに居る晴人に自分のバカでかい鼓動を

聞かれたくない、意識してると言うことが

伝わって欲しくない栞は一言『離して!』

と大きめの声で言う。



そんな栞に対し晴人はお構い無しに、

「…ねぇ何で俺の服の裾なんか掴んだの?」

とド直球に問い掛ける。



「…理由なんかないけど無意識に掴んでた!」

と栞はまた大きめの声で返す。



そう返された晴人は何故か悪戯心が芽生え、

遥か優しいトーンで栞の耳元に、



「本当に?正直言って。本当の事言わないなら

帰さないけど良いの?」と。



「もう本当に離して!帰りも自分で帰るから!」

と晴人の腕の中で怒鳴った後無理矢理腕を解き、

ベッド脇に置いてある元々着ていた服と鞄を

手に持ち足早に彼の部屋を後にした。



「…っ!何なのあれ!てか!展開早くない?

本当に記憶無くしてんのあれで。」



彼に聞こえぬよう小さめの声で一言吐き、

階段を下ったはいいものの彼から借りた

寝巻きを着たままだった事に気付く。



このままで帰れば母親が黙って居ないと見た

栞は辺りを見回し脱衣場を発見した後

猛スピードで着替えを済ます。



その後借りた寝巻きは丁寧に畳んで

洗濯機の蓋の上に置いた。



そして全ての準備を終えた事を確認事、

玄関にてローファーに履き替え、

猛ダッシュで自宅へと帰った。

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