第43話
しばらくして眠りから覚め、ゆっくり両目を開ける。
気付かれぬ様に警戒しつつも、上体を少しだけ起こして斜め右下の方に目線だけ向けると、奴は未だ変わらぬ体勢でスヤスヤ眠っていた。
奴との距離は少し手を伸ばせば触れられそうな、その近さに単純なあたしはすぐ反応を起こし頬が火照る。ムカつく相手のはずなのに、目が逸らせず無意識に寝顔をジッと見詰めてしまう。そんな奴の寝顔は、普段の顔が整ってるからか文句無しに綺麗。ただ、それには似つかわしくない口調な上に横柄な態度なのがほんと勿体無い。
良く聞く言葉で「黙ってたら〇〇」ってあるけど例えるなら「黙ってたら格好良い」が妥当。あたしからしたら、憎たらしい“ニセモノ”でしかないけど。
憎たらしい、って思ってる癖に、その顔に掛かるこれまた綺麗に整えられた前髪とふわふわな髪に、少しでも良いから触れてみたいというワルイ思考があたしの脳内を一瞬で埋め尽くす。
我慢しろ、あたし。今は耐え時だ。
ここで触れてしまったら最期だ。
そう言い聞かせるも、感情のコントロール管理なんてあたしには向いてない。そして
気付けば無意識に自分の右手は
奴の髪目掛けて伸びていて ___ 。
もう少しで触れられそう、
といった所で事件は起きた。
何が起きたのか。右手に感触を
感じ、視線を向ける ___ 。
なんとあたしの右手は、橘 遙人 の
右手によってガッチリ掴まれていた。
「………… っ 、 ?!?!」
「ふっ、怒んないから俺になに
しようとしてたか言ってごらん、?」
その急に出す優しい感じの雰囲気と喋り方はなに?!そんな技いつ、どこで習得した?
素直になんて言ってやるもんか。絶対試されてる。だけど数時間前までのキレ散らかせる程の体力は残っていないので怒る気にはなれないが、ムカつく事には変わらないから強めの口調で言ってやる事に決めた。
「…っ、こっちはベッドから一刻も早く降りたいのに、スヤスヤ寝息立てて寝てるからデコピン食らわせてやろうかしらなんて思ってた!」
あーあ、ほんっとあたし可愛くないよね。こんな事言うはずじゃ無かったのに。なんでつい思ってる事と反対の事を言ってしまうのだろうかあたしは。
自分の大人気なさに情けなくなり、直接目を見て素直に謝ろうと彼の方に自分の顔を向けようとした時だった。
「へー、一体誰のお陰で少しずつ回復してると思ってんのかなあ 〜 ? まあ、いいや。動けるんならさっさとそこから降りて?んである程度身支度整えたら、帰って」
そう言った彼はスっと身体を起こして立ち上がり、あたしから離れたかと思えば、次の瞬間ベッド脇に置いてあるあたしの鞄と丁寧にハンガーに掛けられていたブレザーをハンガー事思いっ切りこちらに投げ飛ばして来た。
「……?! いった!!何すんのよ!!」
これは流石にキレずにはいられなかった。
コイツほんとにどこまで最低なの?
そしてあたしは我慢が効かず、このあと
とんでもない事を彼に言ってしまう。
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