第31話 解体

「ガキ共気をつけて歩けよ、この辺りは木の根がたくさんあるから転ぶなよ」


森に入ってからも、入る前からも気の利いたお姉さんのシュナさん。顔も美丈夫で背丈の高いお姉さんは僕の心にグッとくるものがある。


「そろそろ目的の場所につくぞ、みんな静かにな」


シギルさんが戦闘で斥候も務めてくれている、そろそろ目的のオークの集落に到着するようだ。今回の依頼の詳細な内容だがオークの集落が発見された為それの壊滅だそうだ。


僕達が着いてきて大丈夫なのか、と尋ねたところジョンに勝てるなら問題ない、との事だ。それに冒険者登録をしてから学園が始まるまでの間に冒険者として討伐依頼もこなしている僕達だから冒険者ギルドからの同行許可も貰っている。


「何気にオークのお肉って美味しいから良い依頼なのよね」


この世界のオークやゴブリンは同種族同士でないと子はなせない為、特に人間の女性を襲うことはないらしい。たまにメスの魔物が人を追いかける事はあるらしい…怖すぎる。


「うむ、ブタ肉もうまいがオークの肉は旨みが違うんだよなぁ」

オルガスさんも、オークに来るが好きなようで狩るのが楽しみなようだ。


実は僕達はオークを狩ることがあってもオーク肉を食したことがないので楽しみだ。討伐した後の獲物の売買は僕達が決められるからね。


スタンピードの時も街の復興の為に魔物の素材は全部あげたからなぁ……


「よし、見えてきたぞ」


茂みを手で掻き分けて草木の奥を除くとオーク達の集落が見えた、その数およそ百以上。


「多すぎる…けど、この人数なら何とかなるな」


集落といえど、魔物達の築く規模では百を超えると上位種がいる事がある、その為気をつけなければならないが、シギルさん達のパーティーは全員がランクAの一流パーティーだ。今更だが冒険者の中でもかなり上位のパーティーで王都では名の知れた冒険者達だったのだ。


それを知った当時は、驚いたものだよ。


「全員、武器を構えたか?」

僕達は、武器を構えて集落を囲むように動いた。今回はシラユキが張り切っているようで、恐らく僕の出番はないかもしれない。


事前に決めていた合図は今回、特になくシギルさんが突っ込んだら他のメンバーも突撃するという単純な作戦で各々がオーク討伐に向かった。


僕の隣にいたシラユキは僕を置いていきオークの殲滅に向かった、そのスピードは目で追うのがやっとの速さで僕では対処が不可能な攻撃に見えた、パンチも重く素手で攻撃しているというのに、その拳を受けたオークの腹はへこみ、吹き飛ばされた、吹き飛ばされた先にいたオーク達もドミノ倒しのように倒れていきそこへシラユキが魔法を叩き込むという鬼畜すぎる戦法で圧勝していた。


オーク程度の魔物では原初の幻獣であるシラユキがてこずる訳もなく、他の人達の狩っているオークまでも狩り始めた。本来であれば冒険者の獲物を横取りする行為は良いとされていないが、シラユキの動きに圧倒されたシギルさん達は口をぽかんと開けて、声を出せないほど驚いていた。



あっという間にオークの討伐を終えたシラユキとほかのメンバーは僕の元へやって来た。


「シラユキって何者なんだよ!?」

「あの子って獣人にしては強すぎるわよ!」

「アレは強すぎではないか?」

「なぁ…お前達ってそもそも子供なのか?長命種だったりしないか?」


などと、シギルさん達に詰め寄られたが僕は何とも言い返すこともなく無難に


「僕達は普通の人間ですよ、長命種はスミレ先生だけです」

と、だけ言っておいた。


僕達はその後、オークの解体を始めた。


「自分たちが食う部分以外は冒険者ギルドで解体してもらうようにしてもらってるんだよ、さすがにいつもこの数を解体するのは時間がかかるからな」


シギルさん達は、解体もすることが出来るが、時間がかかるため自分たちがいる部位以外は冒険者ギルドに解体を任せているらしい。手間賃は取られるものの自分たちの時間はその分確保できるから重宝してるようだ。


「ふぅ、解体も終わりましたし帰りましょうか!」

僕の合図にみんなが頷き、王都の冒険者ギルドに向かって僕達は森を出ようとした。




突如、僕達の足元が暗く影で覆われた。空を見上げるとそこには竜の群れがおり、僕達は唖然としながらも王都へ走って向かった。






【あとがき】

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