第24話 学園長

朝日がまぶしぃ


カーテンを開けると、朝日が部屋を照らした。今日は学園の入学式という事でここ一週間は寮に入寮する人が増えた。


かと言って僕達は関わることもなく入学式当日を迎えた。



「うむ、今年も多くの生徒が入学したようだな。これからの君たちの活躍を楽しみにしている」


そう言って短い祝辞を述べたのは、王立魔剣学園の学園長グリム・グレイシスという名と肩書きを持つ老婆だった。


☆☆☆


「おやおや、来たようだねぇ」


何故か僕だけ学園長に呼ばれた。僕はまだ悪い事してないし、する予定もないというのに何故こうなった。みんなと一緒にクラス分けのされた教室へ向かう予定だったのに。


今頃みんなは、友達を作っているのだろうか…


「なんの用でしょうか?」


「そう警戒しないでおくれ」


警戒しないでおくれと言われるが、ここに一人で来いという風に伝えられた上に今、目の前にいる学園長を名乗る女性は先程の老婆の姿をしておらず、絶世の美女と呼んでいいほどの女性がイスに座っていた。


「えっと、不法侵入者?」


「違うよ!?学園長だが?」


一悶着あったが、僕は学園長と認めることにした。


「あのぉ、立場逆だと思わないかな?」


「いえ?僕は生徒で貴方は学園長ですよ?何も変わってないじゃないですか。それで、なぜ僕を呼んだんですか?」


僕だって、みんなと友達を作りに行きたいから早く要件を済ませて欲しい。


「まったく、アルちゃんから久しぶりに連絡が来たと思ったらこの国の上層部が貴方たちを留学生という名目で入学と同時にこちらに来させたいって聞いた時にはびっくりしたわよ」


どうやら、アルちゃん達とは旧知の仲らしく事前に連絡を受けていたらしい。国が村より先に連絡するべきなのは学園なのでは?それともアルちゃんは別ルートでこの情報を知ったのか?



「なぜアルちゃんが学園よりも先に留学の事を知っていたのでしょうか?」


意外と隠し事をしているアルちゃんのことだから聞けば『乙女の秘密よ』ってまた言われるのだろう。さすがは乙女アル……恐ろしいわ。


「アルちゃんって王都や他の国に独自の諜報部を持っているこの国の王族だからよ」


その諜報部を今でも維持している、端的に言うとすごい奴だった訳だ。その上この国の王族らしい…昔の事とはいえ、他言していい内容じゃないと思う。


「まぁ、いいや。アルちゃんの事だから便宜を、とでも貴女に伝えたのでしょう。優しい方ですからね。でも、僕達はこの国の人間だけでなく、他国から来ている人間を信用していない…それをお忘れなきよう」


そう言って僕は学園長室を退室した。


「そっかぁ。まぁそういう事なら、この学園が無くならないように願うしかないよねぇ」


ソーマが退出した後の学園長室には、独り言だけが鳴った。


☆☆☆


学園長室から教室へ向かっているのだが、何やら大きな声が聞こえる、何を話しているのかは分からないが少し心配だ。


「だから、貴方達は蛮族ですわ!」


懐かしの金髪縦ロールこと、アリス・クリスティーゼの姿がそこにあった。



「あのなぁ、説明なしに蛮族って言いつけられてもこっちも困るぞ?この国の奴らは兎も角、他の国からこの学園に来た奴らは理解出来ずに戸惑ってるじゃねぇかよ」


アレンがみんなを代表して対応をしていたようだが、だいぶアリスに対して呆れているようだ。


「なにがあったの?」


「おぉ!ソーマおかえり。学園長と何話してたんだ?」


「アルちゃんの事知ってる人で、その話を少ししたんだよ」


さすがに、諜報部を持ってる王族とかここでは言うわけにもいかず、適当に誤魔化した。嘘はついてないからね。



「それで、アリスはまた僕達に絡んできたのか?」


僕はため息を吐き答えた。


「おい、先ほどからアリス様に対して無礼だぞ蛮族共。この御方はこの国の第三王子の婚約者で公爵家の御息女だぞ?」


そっかぁ、いつ婚約したのかは知らないが僕におしりペンペンされたアリスに婚約者ができていたのか……時が経つのは早いなぁ。


それにアリスって公爵家の娘だったのか…てことは、あの父親が公爵家当主ねぇ…なんと言うか地位のある人は言葉に気をつけた方がいいと思うよ。今どきそういうのあんまり良くないからさぁ。



ほんと、


「うるさいなぁ。お前なぁ僕は男でも女でも殴れる男女平等主義者なんだよ」


僕は転生前に、見たアニメでそんな事を言った主人公を密かに推していた。それの影響か僕も男女構わず殴れる体質に……恐らく、転生して時間が経ったのとそれに応じて考え方が変わったんだろうなぁ……



「おい、そこまで言うなら決闘だ!」


うん、そこまで言ったつもりはないよ?



【あとがき】

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