第20話 涙

襲撃を受けた僕達は、寮へと帰った。


「あらあら?どうしたんだい、帰るのがずいぶんと早いじゃないかい」


帰って一階の広場に行くと、寮母さんが顔を出してきた。いい香りがする、ご飯の準備をしてくれていたのだろうか?この寮では、寮母さんが朝と夜ご飯を作ってくれるらしくお腹いっぱい食べさせてくれるらしい。


顔を出してくれた寮母さんに事情を話すと、


「ありゃりゃ、とうとう追放かい。あの子は最近荒れてたからねぇ。事情は知らないが最近の生徒会長は、ルールを厳しく取り締まり始めたんだって」


ルールは確かに守らなければならないが、犯罪を犯すような事でなければ見逃していたらしい。先生達に対してのイタズラの準備や危険でなければ、夜の学校を探索する許可を出したりと…いや、そういうのを止めれる奴に生徒会長をやらせるべきだろ……と思ったが確かに、そんな人物であれば生徒会長になった後でも人気だろうな。


だが、僕達を蛮族扱いしたのは別の事情があったのではないか?


そんなことを気にしていては、今後疲れてくるだろうし考えるのを一旦やめた。


「そろそろご飯ができるけど、先にお風呂に入るかい?お風呂の間にご飯の準備を済ませるけど、どうする?」


寮母さんが、ご飯の準備を済ませてくれると言うなら僕達は先にお風呂に浸かることにした。


☆☆☆


「すっげぇー広いな!」


アレンの声がお風呂場に反響した。お風呂までやってきたが、かなりの広さがあり今後どれだけ人がやってくるのか楽しみだ。


確かに、部屋も沢山あったからなぁ…



「ソーマ様お背中、洗います」


ノワールが背中を洗ってくれる事になった。ノエルとシラユキはもちろん、女湯だ。


「ありがとうノワール」


身体を洗った僕達は湯船に並んで浸かった。


「ふふん、いいお湯だなぁ」


確かにいいお湯だ、ぼくは特に疲れたわけでもないが…とにかくいいお湯だ。



☆☆☆

一方その頃女湯では……


「わぁ!すっごく広いね!」


エルナが風呂場を走っていた、他に人もいないからいいでしょと言っていたが常識的にもアウトだと思う。


「滑らないようにしなさいよ」


セナも注意はするが先に行ったエルナを止めることは出来なかった。


「あぶないのに」


「えぇ、私達はゆっくり行きましょう」


イルミとスミレ先生はのんびりしていた。


「ソーマ様と一緒がよかった……」


「ソーマ君どうして、私達を捨てたの?」


しょんぼりしているソーマの従者?のシラユキとノエルはいつも通りソーマ不足に陥っていた。


気にする事はないだろう、ソーマにくっついていれば一晩しない内に治っているからね。



「「あぁ、きもちぃ」」


シラユキとノエルはいつの間にか身体を洗い終わったのか、湯船で蕩けていた。


「ふぁぁ〜いい湯だなぁ〜」


エルナも、肩まで浸かり気持ちよさそうにしている。


他の三人も、やってきてお風呂につかり始めた。湯けむりで見えないチラリズム、ロマンがそこに隠れていたりする


かもしれない。


☆☆☆


お風呂をでた僕たち三人は、先にお風呂を出て女性陣がお風呂を上がるのを待っていた。


「いい湯だったねぇ」

「ふふん、今日の襲撃者達って結局のところ何がしたかったんだろうね」


いい湯ではあったが、確かに今日の事も気になる。


「確かになぁ、あいつらなんだったんだろうな」


僕らは結局、あいつらのしたい事が分からなかった。



「お!もう上がってた」


エルナが声をかけてきた事で、女性陣がお風呂を上がった事を確認できた。


女性陣の姿はまだ幼くはあるが、お風呂上がりの姿は……いいですな。


「それじゃあ、ご飯に行こっか」


僕達は寮母のキリエさんのご飯を食べるため食堂へと向かった。食堂は、お風呂場から近く広場との間にあるためすぐに着いた。


「おいしそ」


イルミがボソッ呟くが全然、聞こえていた。


「美味しそうですね!」


先生、貴女が一番年上なはずなんです、少し落ち着きを持ってください。


確かに目の前に並べられた食事はどれも美味しそうな物が並んでおり、白米に炒め物…他にもおかずが並んでいてどれもご飯が進むような物だった。


「うお、これ美味いな…」


僕が食べた炒め物は豚肉と思われる肉とキャベがタレで味付けされており、白米が進むおかずだった。他にも野菜が入っていて美味かった。食感もシャキシャキしていて食いごたえがとてもいい。


「これも美味しいよ、ソーマ君!」


エルナが差し出してきたのは、白身魚のムニエルだ。


「おぉ、美味いなぁ」


白身魚は、フワッとしていてバターとレモン汁の掛け算のような味付けはとても良かった。


そういえば、前世でも食べたなぁ。確かパンガシウスって名前の魚が安くてよくスーパーで母さんが買っていたな……


「大丈夫…?ボクの上げたムニエル美味しくなかった?」


え、食いかけだったの?それに、作ったのは寮母のキリエさんだからね?


あ……泣いてるんだ僕、前世の事を思い出して…何も恩返しが出来なかった…何も、死んで僕は最後まで迷惑をかけてしまった……


ごめんね……



「ソーマ、大丈夫か?」


「ソーマ君、今日の襲撃が怖かった?大丈夫よ、あんな奴らいても私が倒すから」


アレン、大丈夫だよ。


あと、セナ……いやセナだけに限らず僕の事を弟だと思う節があるよね君達、まぁ本人達には言わないけど。このポジション結構好きだし。


「大丈夫だよ…泣いたら落ち着いたから」


この場に、寮母さんは居らず僕達だけなので泣いた所は見られてはいない。こんな姿は他の人達に見せたくないからね…



僕はまだ、心のどこかで前世の事を忘れられていない。まだまだ未熟だなぁ…忘れたいとは思わないけど、ずっと引きずる訳にも行かないからなぁ……



考え事をしながらご飯を食べているといつの間にか、お腹いっぱいになっていた。



明日は、王都を見て周りたいなぁ。





【あとがき】

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