第13話 スタンピード

「クソッ、どうして魔物がこんなにも…!?まだ民達への被害は出ていない、だがこのままでは……!」


城壁の上で兵達に指示を飛ばしていた男性が頭を抱えていた。


「失礼します、この魔物達のスタンピードは周期的に起きているようです!!」


眼鏡をかけた若い執事が本を持ってきて指揮をしていた男性に説明を始めた。


曰く、この地には周期的に起きている事


曰く、何度もスタンピードを耐え抜いているという事


曰く、そのスタンピードは毎度の如く森から現れる人に終止符を打たれるという事。


★★★


「おっはよ!やっと、森からでられるねぇボクもうヘトヘトだよ?主に精神が…」


エルナはずっと元気いっぱいだったが昨日のティラノックスには疲れが溜まったようだ。


いつも元気で、エルナが居ればその場が明るくなるという程だが今日ばっかりはゆっくり休んで貰いたいものだ。


「それじゃあ、行くわよ?」


「うん、頼むね」


馬車やその周りにいる僕達を囲い込むように光に包まれた。


瞬きをする間に、光は消えていき辺りは森ではなく平原になっていた。



「なんか、遠くからすごく怒声が聞こえない?」


「ソーマ様この先スタンピードが起きています」


シラユキの言葉にみんなは唖然とした。昨日、あんな魔物と接敵したのにまた魔物に会うかもしれないと…しかも今度は大群だ……


「ん〜量がいるだけで強くないわね。これなら私たちでどうにかなるわよ?それと、この様子じゃ都市が襲われてそうよ?」


シラユキの言葉に緊張が走った。スタンピードと呼ばれる魔物の大群に街が襲われている、だが僕達で助けられるのか?


そもそもこれから行く街なのだろうか?


「助ければいいだろ、俺たち強いし。危険度:Sだって初めてなだけで次は多分勝てるし、それよりも弱い魔物に俺たち負けるわけねぇだろ!それに、人助けしよーぜ!」


アレンは馬鹿正直でただの良い奴なので、すぐに助けに行こうと意見をしてくれた。それを同意するようにみんなが頷いた。


「先生もいますからね」


ティラノックス討伐の瞬間を見た僕達はその言葉でかなり安心できた。


やっと森を抜けて一息つけるかと思っていたが、これから通過する予定の街が無くなるのはこちらとしても困る。


なんにしよ、街を助けるために僕達は馬車に乗り込み移動することになった。


ノエルの転移は街に行ったことがないので使う事が出来なかった。人と関わりの少ない精霊達は自然のある所に多く居るようだ。ノエルは旅をして僕と出会ったわけだが、自分の領域から出ない精霊達の方が多いらしい。


別に精霊がいないと森が保てれないだとかそういう事はなく、精霊は不可視な種族だから見えない力として神聖視する国もあるらしい。


『あいつら嫌いなの』


数年前にそんな事をノエルが言っていたのを思い出した。


★★★


「すごい砂埃だね…でも城壁は壊れてないし兵士達もまだ元気があるみたい」


「でも、時間の問題だと思うわよ」


イルミとセナが会話しているように、まだ兵士達に被害が出てるような暗い空気はなく、気合いが入っているように見えた。



「それでは、各々が良いように動いて危なかったら精霊さんに助けてもらいましょう」


「「「了解!」」」


武器を構えた僕達は魔物達が山ほどいる場所に向かって走り出した。


「シラユキも暴れ回って、ノエルとノワールは兵達が危なそうな所から助けてまわって」


指示を出した僕は魔物達の背後から切り刻んで行った。


魔物達の危険度は高くても【B】だが、量が多い。


「助けに来たぜぇ!」


遠くからアレンの声が聞こえてきた。あいつも、いつも以上に気合いが入っていた。突然現れた魔物達を討伐する僕達に驚きを見せる兵士達だが、すぐに切り替えて目の前の魔物に集中していた。


兵士達の練度は高く連携もとれていた。


数十分、戦い続けた僕達はほとんどの数をシラユキやノエル、ノワール、スミレ先生に討伐され僕達は怪我のしている兵士達の元へ駆け寄った。


「これをどうぞ」


【ストレージ】から取りだしたポーションは昔から貯めておいたおかげで今ではかなりの数が溜まっている。他のアイテムもたくさん入っていて、ここ数年でかなりの収穫があった。


ポーションを受け取り、それを飲み干した兵士や傷にポーションをかけた兵士達の傷が塞がっていった。


「助かりました。私は兵士長のルイと申します」


頭を下げてきた中年男性は礼儀正しく、他の兵士達も傷が治ったのか感謝を伝えに来てくれた。



「失礼します、この度はご助力感謝致します。私はこの領の領主を務めているジル・バルコニアという者です。宜しければお話をさせて頂いても?」


兵士長の後ろから現れた金髪の男性が声をかけてきた。


僕たちはついて行くことに



【あとがき】

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