第11話 森の行軍(ほのぼの)
どうしてこうなった……
「ソーマくーん先生は怒ってましゅよ!」
顔を赤らめふわふわとしているスミレ先生が目の前にいる。
★★★
「スミレ先生、どうして来たんですか?」
「そ、そりゃあ皆が森を迷子にならずに抜けられるか心配だったからですよ!」
僕の問に戸惑いながらも答える先生、半分は本当だろうが心配?この先生が?
「先生どうせ来たかっただけだろ、いつも一人ぼっちだし」
アレンお前はなぜ学ばない、何年経ってもお前のせいで何度も泣いてるぞこの先生。もしかして、泣かせるのが好きなのか?イルミを嫉妬させるなよ?大人しく見えて、イルミの魔法は強烈だぞ?
「ふふん、そろそろ野営地点に着くよ!」
オーグが御者を務めてくれるので、馬車に乗っている最中は特にすることがない僕たち。
野営地点までは、問題なく到着する事ができた僕達はテントを建てて枯れ木を集めて夕飯の準備を進めた。
「それじゃあ、乾杯!!」
各々が乾杯と、元気よく杯を掲げた。これでようやく寝られる……そう思っていた。
「ソーマくーん!せぇんしぇいは!」
お酒を持ってきていたらしく、一人で酔っている。少し森を舐めすぎでは?この森は世界を見渡しても明らかにレベルが桁違いに違う森のはずだが、こんなキャンプ感覚でいいのだろうか、そう思っていた。
思い返せば、先生は僕らより強いし精霊女王のノエルや幻獣のシラユキは普通に強いから問題などなかった。
それよりも今は、スミレ先生が酔っていて大問題だ。他の皆はそれぞれのテントに入って既に体を休めたり寝ている人をいるはずだ。
そんな中、焚き火を前に僕に抱きつくスミレ先生……これが生徒と教師の禁断の恋ってやつなんでしょうか?
僕は、どうすれば……
「早く自分のテントに戻って寝てください」
そう言って、僕はスミレ先生を先生のテントへ連れて行った。準備のいい先生はテントも持参していたから助かった。こんな酔っぱらいと寝たい女性陣はいないはずだからな…
「ノワール夜の見張り番お願いね、助かるよ」
「えぇ、ソーマ様お任せを」
見張り番は夜に強い闇属性のノワールに任せることにした。ノエルとシラユキはそもそも寝るのが好きだから引き受けてくれなかった。ノワールがいてくれて大いに助かった。
「それじゃあおやすみ」
★★★
「ん〜むにゃむにゃ、寒いなぁお布団に入って寝よっと」
★★★
「責任とってくださいね!」
朝起きて、気がつくと隣にスミレ先生が寝ていた。事情がわからずとりあえず先生を起こすと、第一声がこれで僕も困っている。
みんなも起きてきたようで、事情を説明するすると
「「「それは先生が悪い」」」
みんな口を揃えて先生が悪いと言ってしまった。悪者にされたせいで、先生は既に涙目になっていた。
こうなれば、どうやっても泣くだろう。なら追撃してしまうべきだ(?)
「先生、貴方がこの中で一番年上なんですからちゃんとしてください。それに先生、次にお酒で酔って似たような事があればお酒没収にしますからね」
「わがっだぁ」
先生は、それほどお酒が大切ななのか余計に泣いてしまった。お酒が好きなのにお酒にすぐ酔ってしまう先生……まだ全然含めてお酒を口にした事の無い僕には分からなかった。
朝食も、その調子でとり終わり森の行軍がふたたび始まった。
しばらくすると、機嫌を取り戻したスミレ先生とセナガクッキーを食べていた。それを見たイルミとエルナが加わり女性陣はお菓子を食べ始めた。
一方で僕達、男性陣はしている事はバラバラでオーグはもちろん御者をしており、アレンは周囲の森を観察していた。
僕は、ノエルとシラユキが構ってって擦り寄ってくるから撫でたりしているところだ。
★★★
「ほのぼのし過ぎだよ!?」
僕はもっと、魔物が闊歩する森を隠密しながらとか偶に戦闘したりと思っていた。だがこの馬車には魔除けと呼ばれる魔物が嫌いな香りのする香草が入っており魔物が全くと言っていいほど寄り付かないのだ。偶に頭を覗かせる魔物もいたが、匂いを嗅ぐと馬車を背にして逃げ去るようにどこかへ行った。
★★★
「ソーマ様ご報告に参りました」
密偵として、先行してもらっていたノワールが戻ってきた。
「この先に、Sランクの魔物がいましたので報告に参りました」
あの魔除けはSランクには通用しないらしく、見つかったり出会うことがあれば、諦めて戦ってという事を村長やアルちゃんに言われた。
「皆、この先に魔物がいるらしい。それもSランクの」
みんなに知らせると、アレンだけが目を光らせてワクワクしていた。他のメンバーは少し緊張しているみたいだ。特にオーグは御者をしており誰よりも前にいるから少し怖いのかもしれない。
「大丈夫ですよ、皆さんならSランクの魔物の討伐できますよ。不安でしたら先生が殺りますからね」
少し不安に思いながらも、先生の言葉を信じることにした。
刹那、雄叫びが聞こえた。
グラア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァァァ!!!!!!?!?!
まるで、何かに襲われているような声が聞こえた。それが雄叫びではなく悲鳴にも聞こえてくる。
【あとがき】
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