青年期

第10話 旅立ち

五年後―――



「ほいっと」


「おりゃあ!!セイッ!!」


上手く盾で、迫り来る剣を受け流すソーマ。

五年経った今でも、ソーマとアレンはよく模擬戦をする仲である。


「ッセイッヤァァ!!」


雄叫びをあげ、その勢いで剣をアレンの首筋まで持っていった。


そこで模擬戦は終了した。


「あのな、いつまで経っても勝てねぇよ。ソーマ強くなりすぎな?」


模擬戦が終わり互いに手を取り、反省会に及んでいた。


僕とアレンはこの五年お互いを研磨し続けた、いや僕達だけでなくスミレ先生土同じ教室で学んだ皆と共に。



あれから、五年経ち学校も卒業しているのだが未だにスミレ先生は僕達と行動を共にすることが多々ある。


本当に、あっという間だな。


僕達はもう少しでこの村……いや国を去ることになる。別に帰れない訳じゃないし、追放されるとかそんな事ではない。


単純に他国への留学生という扱いで、留学しに国外へ行くだけだ。


★★★


『いいかい?こちらが悪い事をしてないのであれば、何かあった時には力で解決してもいいからね』


『そうよ、出来れば国の外へ出したくないのよ?でも、国というのは運営が大変なの……本当にね…でも何かあれば連絡してちょうだい?私達は別にこの地から移動出来ないとかそんな制約ないからね!』


ソウスケさんとリサさんが先日伝えてくれた。


今更になるが、この二人は幼なじみではあるが夫婦ではないのだ。ソウスケさんの奥さんにもあった事あるが、また会いたいな…


リサさんはずっと独りのまま亡くなってダンジョンへ行ったから、うん。


★★★


「それじゃあ、父さん母さん行ってくるね」


「気をつけろよ!」


「風邪は引かないようにね?まぁ一度も引いたことないから大丈夫でしょうけど」


父さんは気をつけろと笑顔で母さんはすこしばかり心配しているのか、風邪を引かないようにと気遣ってくれた。


だが、母さんの言った通りこの世界にやって来てから一度も風邪を引いてないから大丈夫だと思っている。



★★★


村、いや国だったな……


「早く行くぞ!ソーマ!!」


本当に、こんな時まで元気なアレンは村から離れるのが寂しくないのか?


イルミは目元が少し赤く腫れている……泣いた後なんだろう。


他の面子は、特に泣いた後のようには見えず寧ろ初めての外国に心躍らせているように見えた。


「また、あの女貴族みたいなのがいたら次は私が殴るわ」


セナはあの事件の後から少しだけ外国の人間が嫌いになったようで、少し不機嫌に見える。


「そうだね、ボクも手がでちゃうかも」


いつも笑顔なエルナもその瞳までは笑っていなかった。


オーグは……特に緊張している訳じゃなさそうだ、寧ろこれからが楽しみかのような希望に満ち溢れた笑顔をしている。


眩しいぜオーグ。


「ふふん、ソーマ君の精霊さん増えたんだよね?よろしくね」


「よろしくお願いいたします」


オーグの挨拶に礼儀正しく挨拶を返したのは、闇属性の上位精霊で名前はノワール。


単純な名前だが気に入ってくれていて僕も安心している。


「よろしくって言ってるよ、楽しみだね」


ノワールとの出会いは、あの女貴族が国へ帰った後しばらくしてから、やって来た。


ノエルが言うには上位精霊だそうでかなり強いらしい。


『私よりは弱いから』


少し、冷たくそう言っていたのをよく覚えている。


★★★



「うむ、気をつけるのじゃよ!」


村長からの有難いお言葉は特に無く、すぐに話が終わった。


「村長またなー!」


アレンは最後まで元気がいい、まぁ何かあってもノエルの転移魔法でここまで帰られるから深く考えていないんだろう。


「ふふふ、何かあったら私を頼るのよ!アルちゃんは、何時でも貴方達助けるからねん!」


最後はアルちゃんが自作の人形?をみんなに配ってくれた。


このアルちゃん人形は上手く出来ており、それぞれに似た人形を渡された。


「「「行ってきます!!」」」


大きな声で、最後の挨拶を終えた僕達は馬車に乗り込み、森へと入っていった。


★★★


「それじゃあ、しゅっぱーつ!」


「え?スミレ先生???」


僕らの乗っている場所の後ろには荷物の乗っている別の空間があるのだが、そこから来る予定のないスミレ先生の声が聞こえた。


「きっと気の所為だよね、ボク先生にもまたねって挨拶したから…うん」


こうして、外国への旅が始まった。


★★★


「スミレはどこじゃ?」



「もしや、何やっとるんじゃあ!?!?」


村長はスミレ先生が居なく、捜索をしていると一つの置き手紙を見つけた。


『行ってきます!!!』


この一文を残して……


【あとがき】

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