硬派




(あやつは先程から何をしているのだ?早くその迷い込んだおこちゃまをこの雄気堂堂、痛みを以てして練磨するヤンキー世界から離脱させるのだ!)


 ヤンキーアニメに感化されて、我がヤンキー部に入部してきた神薙心輝かんなぎしんき

 入部理由は軽薄なれど、その心意気に打たれては、早速ヤンキー同士の闘いの場に連れて行った。

 何もいきなり参戦しろと無茶を言いはしなかった。

 当然である。

 ただ、見学しているがよいと言っては、万が一があってはならぬと、顔には眼鏡型の防具マスク、防弾チョッキ並みの防護力を誇る学生服を装着させてのち、部員の雄姿を見ておれと歯を見せて笑って駆け出したわけだが。


 男子高校二年生。

 ヤンキー部副主将。

 生まれた時から硬派な男になりたいとの志を持って今日こんにちまで生きてきて、また、これよりも生きていくと確固たる想いを胸に熱く宿した、路乃木正みちのぎただしは、他校のヤンキーと熱き闘いに繰り出す中で、ちらちらと、視線を自らがこの場に連れて来た後輩ヤンキー、心輝に向けていた。


 眼前の相手に集中できない不甲斐なさと不誠実さに、幾度も幾度も胸中で謝罪をしつつも、心輝に視線を向ける事を止められはしなかった。

 もういっそ、眼前の他校のヤンキーに闘いの中断を申し込んだ方がいいのではないかと考えてしまった。

 心輝が迷い込んできたおこちゃまを、いつまで経ってもこの場から連れ出そうとしないのである。

 何か事情があるのではと視線を送るだけに留めていたが、流石に時間がかかりすぎるとヤキモキしていたところにまさかおこちゃまを肩車し始めたのである。

 連れ出すのか、はたまた、肩車をしてこの場を駆け回る気ではなかろうかどうなのだろうか心輝の真意がわからぬと業を煮やし、誠に勝手ながら眼前の他校のヤンキーに闘いの中断を申し込むべく口を開いた時であった。




 心輝が、











(2024.10.29)



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