青色合体




「おまえ。落ち着きがないなあ」


 地面に片膝を付いてパチパチわたがしを片手に乗せて献上している、心輝の百面相っぷりに呆れたシキは少しだけ考えてのち、そうだと手を叩いた。


「俺と合体しよう」

「は?」


 突如として心輝が装着していた眼鏡型の防具マスクが木っ端微塵に破壊された。のは、シキの衝撃的発言の余波ではなく、激しく動揺した心輝がその手で顔から勢いよく取り外しては握り潰したからだ。


「は?え?な?何?が。がががががが合体?」

「そうだ。俺がおまえを落ち着きのある紳士にしてやるよ。安心しろ。合体して一度その身で体験したら、のちのち紳士的に振る舞えるようになるぞ。礼は菓子な。おまえの好物とお菓子好き好きサイトランキング一位の菓子を寄こせ」

「え?え?え?」


(合体?合体?合体って?え?あれ?あっ!そうか!僕が想像している桃色合体じゃなくて。あれだ。あの。ロボットと人間が合体するような青色合体だ!至極健全なものだ!………じゃなくて!え?何?合体?肩車?っは!そうだ!肩車だ!ギャングの隠語なんだ!合体イコール肩車!ギャングの子とはいえ、子どもは子ども。子どもは高い場所が好きだって聞いた事があるし。はは。莫迦だなあ。僕は。やれやれ。ヤンキー少年として。ギャングに選ばれし者として失格だ。このおこちゃまの言うように、落ち着きがなかった。挽回すべく、ここはどっしりとした姿をおこちゃまに見せないと。ね)


「何だ?片目に小虫でも入ったのか?」

「ノンノン。ウインク。落ち着きヤンキー少年の嗜みさ」


 心機一転した心輝はおもむろに立ち上がると、マントを勢いよく後方へに払うように、両の手を勢いよく後方へと動かしてのち、シキに背中を向けて再び地面に片膝を付いた。


「さあ。合体しようか?」

「ああ。いい心がけだ」


 心輝とシキは不敵に笑ってみせたのであった。











(2024.10.26)



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