匂いと記憶
一年ちょっと前に親友が亡くなった。
俺はご遺族の方のご厚意で遺品整理の手伝いをさせてもらったのだが、そのときに生前彼が使っていたボディーソープの詰め替え品を頂いた。
親友は健康と身だしなみへのこだわりが強く、そのボディーソープも普通の薬局で買えるようなものではなく通販で購入するちょっといいヤツだった。
定期購入していたらしく沢山もらってしまい、長い事使わせてもらっていた。
ボディーソープの香りなんて風呂上りにすぐ消えてしまうが、拡大解釈するとこれがあいつの体臭だったと言えるかもしれない。
それを自分が勝手に引き継いでいると考えるとちょっと気持ち悪い気もするが、そんな考えに至る自分の思考の方が気持ち悪いので考えなかった事にして使った。
そのボディーソープが、今日終わった。
使い切った。
ずっと何気なく使っていたが、終わった瞬間ようやく感謝の気持ちが湧き上がってきた。
吉良吉影みたいにこだわりの強い変なヤツだったけど、お前のおかげで半年以上ボディーソープ買わなくてすんだよ。
お前を思い出すキッカケが一つ無くなった事は寂しいが、時間とはそういうものだ。
ありがとう。
さようなら、親友の体臭。
と、思って洗面所を整理していたら彼が使っていたシャンプーの詰め替え品が大量に出てきた。
こんにちは、親友の頭臭。
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