ぼんやりとした趣味
音楽が好き。
「好きだなぁ」と思うだけで、詳しくはない。
「この曲はこういう特殊なコード進行で」とか「当時としては新しい技術を取り入れていて」みたい事は語れない。
いい曲を聴いて「いい曲だなぁ」と感じるのが趣味。
生活の一部になっていて、毎日必ず音楽に触れる。
新しい曲に対しては集中してちゃんと聴いて、作業中に流す曲は既に好きになった曲のプレイリストをループさせる。
でも別に自分ルールって決めてるワケではないし、適当に流して新しい曲と出会う事もある。
大してこだわりもない。
洋楽も邦楽も聴く。アニソンもサントラも聴く。
傾向としては男性ボーカルの曲が多く、女性アイドル系は殆ど聴かないかもしれない。
生まれる前の古いのも聴く。新しいのも、最近は意識的に聴くようにしている。
「このアーティストの知識なら負けない!」って事は無い。
高校の頃は友人に強要されてベースを練習したが、モノに出来なかった。
ちょっと弾けるくらい。へたくそ。五線譜も読めない、タブ譜だけ。
「音楽詳しいです!」とは言えないけど、「好き!!」とは言いたいくらいの距離感。
多分、結構こんな感覚の人は多いと思っている。
「音楽好きな人」の集まりには参加できないけど、自分なりに音楽を大切にしている。
そんな中の一人。普通の範疇。
親父も音楽が好きだったらしい。
幼少期に住んでいた家には結構ちゃんとしたオーディオが組んであって、親父自身も昔はギターを弾いていたようだ。
今の実家に引っ越す際に再生用の機器は全部処分し、所有していたアナログディスクだけ持ってきた。
数年前にそんな事をふと思い出し、レコードプレイヤーをプレゼントした。
全然ちゃんとしたものじゃなくて、安物で「とりあえず家にあるアナログレコードが聴けますよ」というもの。
懐かしさもあってか結構喜んでくれたようなのだが、そのとき流してもらったビートルズの「Strawberry Fields Forever」という曲に圧倒された。
自分はビートルズの曲を聴くのが初めてってワケじゃなかった。
親父も兄貴もビートルズのCDを持っていたし、カーステレオから流れてくる事もあった。
だが当時の俺にとってビートルズは「古い音楽」としか認識していなかった。
若い頃は激しくてノリのいい音が好きだったのだ。
これまでに色んな音楽を聴いてきて、ようやくビートルズの良さがわかる耳になったのかもしれない。
大人になってからだが、これが俺の「ビートルズとの出会い」なのかもなと感じた。
それ以来、俺はビートルズを好んで聴くようになった。
怖くてかっこいい親父の愛する音楽を、俺もやっと好きになれた事が少し嬉しい。
「子供の頃にビートルズに出会って、それから音楽の世界に引き込まれて」みたいなイケてる男では全くない。
音楽が好きだと感じていながら、あの偉大なビートルズの良さに気付くまでに何十年という月日が必要だった自分の耳は「幼稚」といえるのかもしれない。
でも、この過程を感じられたおかげで満足している。
何度も聴いた事のあったビートルズとの「出会い」は、自分の中で結構感動的な体験として刻まれた。
この経験によって「ビートルズに詳しくなって!」とか、「また楽器をはじめて!」、みたいな話じゃ全然ないんだけどね。
これからも俺はノンジャンルで好きな音楽を聴いて「好き」って感想だけを語る薄っぺらぺらおじさんとして生きていくんだと思う。
それでいい。
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