ゆれうごく


情けない話なのだが、自分は活字の本をほぼ読まない。


ゼロではないが、本が好きな人たちに比べたら圧倒的に読まない。


“なろう系”と言われる書籍も実は読んだことが無い。


もう、自分にまともな小説が書けない理由はそこに集約されている。


ちゃんと読んで勉強しろ。


それが全てである。


先人に敬意を持ってちゃんと読め。


ロクに書けもしないくせになんで小説なんて書いてるんだ、というと(誰も興味は無いだろうが)中学時代に宗田理先生、高校時代に江戸川乱歩先生の作品にハマっていたからだ。


「勇者フェラクリウス」なんて書いといてなんだが、自分が一番好きな作家は江戸川乱歩先生である。


明智小五郎が出てくる長編探偵小説も好きだが、やはり短編が素晴らしい。


好きな作品が多すぎて挙げきれないくらい名作が揃っているのだが、その中で今回おすすめしたい短編を二作品。


「虫」

「恐ろしき錯誤」


メジャーな作品なので読んだことがある方も多いと思う。


どちらもパブリックドメインとなっているため青空文庫様で公開されている。


「虫」は短編というには少し長いか、中編小説に入るかも。


それでもそこまで時間は取らないと思うので機会があれば読んでみてほしい。


……確認してみたところ、青空文庫様で読める「虫」には検閲の入っている部分があった。手元にある角川ホラー文庫では検閲が無く、創元推理文庫はいま手元に無いので不明。


検閲されている部分はグロテスクな描写となっているので苦手な方はご注意を。


この二作品で感じてほしい、自分の大好きな心理描写がある。


それは「動揺」。


登場人物の心臓の高鳴りが自分に伝染するような展開の持っていき方がたまらない。


長々と説明するわけでもないのに、緊張感が徐々に増していくように描かれている。


読む際は感情を彼らと重ね、一緒になって徐々に呼吸を荒らげていくとなお良し。


いっそ目も見開いてその人物になりきってほしい。


動揺している人物が好きなのではなく動揺をどう表現しているかが自分にとって大切なんだと思う。


正常な判断が出来なくなっている状況で、最善策を探るも上手くいかない。


そういった極限の状況が伝わってくる(先に紹介した「恐ろしき錯誤」はそんな感じではないが)。


別に登場人物が動揺してればいいってモノでもないのだ。


乱歩先生の「動揺」は「恐怖」とも結びついていて本当に臨場感がある。


ちなみに漫画家でいうとコージィ城倉先生の描く「動揺」の描写が好き。


「おれはキャプテン」で描かれる人物の表情が最高。


興味の湧いた方はこちらも是非読んで頂きたい。

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