45話 12月25日

「……ッ…!?!!??グッ…ガ、アァ!」


俺は全身に強烈な痛みを感じながら…意識を

取り戻した。



痛ぇ…!全身を襲う痛みは全然癒えてない…。

自己治癒能力が高いと言っても…か。

だけどさっきとは違う…、目も見える。

そして…微弱だけど音も聴こえる…。


全身を襲う痛みを我慢しながら俺はそんな思考

を頭の中で巡らせていた。


その瞬間聴き慣れた声が響いた。



「業魔…!よかった……。」


「本当…規格外だ……。」



霞と蓮香が横たわっている俺の横にいた。

そんな2人に俺は声を掛けようとした…だけど、

声が出なかった。


2人を安心させたかった…だけど、俺から出る声は俺が痛みを我慢する際の悶える声だけ…。



「業魔!無理しないで…!傷が酷すぎるんだ!それに、左目と左腕も……。」


「そうだぞ、今のお前はお前自身が想像してるより酷い状態なんだ…。」



…はっ、んなこと分かってる。だから声も

出ないんだろうな…。体が拒絶してるんだ。

今声を出せば、指一本でも動かせば俺が…。




【死ぬから】



だけどな2人とも…今動かないと俺は死ぬより

辛い後悔をお前らに背負わせちまうんだ。


由梨…萌乃、2人とも待ってろよ。今…



【行ってやるから】




…俺の体が動かないのであれば、頭が動く事を拒絶しているのなら…俺の意識で体を動かさなければいい…。


そう思考した瞬間、俺は心の中でその言葉を




【紡いだ】




…命令だ。2人を止めろ…俺!



_______。



突然…、目の前で横たわっている業魔から

途轍もない力を…意思を感じた次の瞬間…。


業魔は消えた。



消えた…そう認識した瞬間、突風が僕達を

襲った。


業魔が消えた事…そして突風、僕はその事実に気付いてしまった…。



この突風は業魔が途轍もない速度で移動した事による副産物…!じゃあ…業魔は!


一つしかなかった…業魔が今行きそうな場所。


それは…由梨がいる戦場。



駄目だ業魔…!今の状態で無理に動けば…!

業魔は本当に死んでしまう!だから…!

動いたら駄目なんだ!



そんな想い虚しく…業魔は由梨のいる戦場に

行った。



_______。



……この人強い、私の攻撃が全部避けられる。

暴食の力も使っているのに…。






…業魔が仲間って言ってただけある…。業魔程じゃないけど…とんでもなく強い…。






そんな2人の思考が重なったその瞬間…2人は

同時に動いた。


そして…2人の拳が衝突する…瞬間。



業魔が2人の間に現れた。





…!業魔!?待って!止まれない…!!


2人は全く同じ思考に陥って…そして。



2人の拳は業魔……そして蓮香に



【抑えられた】




「蓮香!?どうして止めるの!?目の前の

そいつは業魔を…!!」


「一旦黙っとけ由梨。」



そして蓮香は由梨を軽く殴って気絶させた。



「業魔…こっちは自分が説明しといてやるよ。

そっちのメンタルケアは任せたー。」



蓮香……あいつはもっと早く気付いてくれても

よかったんだけどな…思考を見れるくせによ。


そして俺は、萌乃の体に覆い被さるように…、倒れて…。



一言、たった一言…喋るだけでも辛い…だけど

その言葉を紡いだ。


今だけは体に、頭に…この言葉だけは拒絶

させない…それは萌乃にもだ。



「業魔…ごめん、私のせいで……私が足手纏いだったから業魔は……。」


そんな萌乃の言葉を遮るように俺はその言葉を




【紡いだ。】



「メリー、クリス…マス、萌乃……。」



そんな冗談混じりの言葉を紡いだ。

だって今日は…クリスマス、12月25日だから。



萌乃はそんな俺の言葉を聞いて…涙を流した。




「………今日で、一体…何回泣く、つもり……だよ。大丈夫…だ、から…も、う泣くな…。」









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