46話 妄想

…次に俺が目を覚ましたのは病室だった。



…最近ずっと病室にいる気がするのは気のせい

か?


いや、気のせいじゃないな…はぁ、今回は

どんだけ眠ってたんだろうなっ!


そう思考しながら俺は体を勢いよく起こした。



「イデッ!」


「あ…?」


なんか声が聞こえた気がするな…。



そう思考して俺は目線を下げた。

そこにいたのは萌乃だった…。



萌乃は俺を見て目に涙を少し溜めたが…その今

にも溢れ出しそうな涙を拭って…言った。




「おはよう…!」


その言葉に俺は一言だけの言葉を紡いだ。




【おはよう】



_______。



「おぉ…俺そんなに寝てたのか。」


「そうだよ!業魔が寝てから2ヶ月…僕達ずっと心配で…もし起きなかったらってずっと…!」


「まぁでも、左目と左腕を失って…しかも全身の骨は粉々…臓器もボロボロ、そんな状態で

こうして起きれるなんて奇跡だな…。悪いけど自分は起きるか起きないは半々だった…。

まぁ起きたから結果上々だな!」


「半々って…まぁいい方だったな。」


「全然いい方じゃないから!半々って言葉に

騙されないで業魔!」


「えぇ…。」



ここまで病室って騒がしくなるもんだったか?

はぁ…久しぶりに1人で落ち着きたいな。


そんな思考をしながら俺は4人を落ち着かせて…言った。



「お前ら…ごめんな。」


その言葉に4人は困惑の表情を示す。

4人は何故俺から謝られているのか分からない、そんな状態なんだろう…だけど、それでも俺は4人に対して謝らないといけない…だって俺が

弱いせいで…4人に今後一生消えない傷を残す

散々だったのだから。


そうして俺は続けて言葉を紡いだ。



「俺が弱かったから…お前らに迷惑を掛けた。

悪いな…。」


そんな俺の言葉に……蓮香が言った。



「はぁ…誰もてめぇに完璧なんて求めてねぇ。

完璧を求めてるなら誰もこの場にはいねぇ。」


そんな蓮香の言葉に続き…霞も。



「そうだよ!僕達…業魔に迷惑掛けられた何て思ってないよ!」



そう言ってくれた…そして由梨も。



「業魔より私達の方が貴方にずっと迷惑を

掛けてる…。」


「そんなことない…!」


そんな俺の否定の言葉に由梨は俯いて何も

言わない…。



そして、最後に萌乃が言った。



「迷惑を一切掛けない人なんて何処探しても

いないよ…実際私達も業魔に迷惑をこれから

掛けると思う…だからさ!迷惑上等の精神で

行こ!!」


そんな言葉に俺は笑みを溢しながら…言った。




「あぁ…、そうだな!」


と…。










…こいつらなら、言ってもいいかな……。

俺の……。



【本当の名前】




_______。



…今回は病室で大人しくする事を選んだ。


病室を抜け出して1人でタバコを吸うのも

良かったが…左目と左腕を失っていたからか…

動く気にはなれなかった。


そんなこんなで…今は病室に1人。あいつらは

昼ご飯買ってくるって言ってどっか行った。



そして俺は窓の外を眺めていて…そんな時、

不意に一言…零してしまった。



「母さん…。」




そうだ…俺はあの時母さんと会った。

母さんが俺を起こしてくれた…。


妄想だと…今でも思っている。俺が作り出した都合のいい妄想なんだと…。母さんは萌乃の事を知っている筈はない…だから妄想なんだ。


でも…萌乃が霞達に誤解されていた事は俺は

知らなかった。

じゃあなんで母さんは知ってたんだ?


それは…



【妄想じゃないから】



そんな訳ないのに…母さんはもう死んでいるのだから…。


そんな思考に陥ってしまったからだろうか…、ここ数年間思い出す事なんて無かった…俺が

思い出したくない過去を思い出してしまった。



あれは…俺が16歳の頃に起きた、最悪の事件。






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