34話 美しい

そうして手を引かれながら連れて行かれたのは

とあるレストランだった。


高級感溢れるレストラン…。

とても懐かしく感じてしまう…、幼少期に幾度か訪れたレストランと酷似していた…。


そんな思考を頭の中で巡らせていると。




「ここ美味しいんです!入りましょ!」


「…あぁ。」


そう言った俺は…悪魔王の事については後で

良いかと考えていた…。


ここが…悪魔王の事について言及できる最後の瞬間だったのに…俺は何故か言及しなかった。



そうしてレストランに入り、スタッフから席に案内され…俺達は座った。


俺は何の料理があるのかを見て、目を惹かれた料理とワインを注文した。


10分が経ち、料理が次々と運ばれてきて最後に俺と…女のワインが運ばれてきた。



グラスを持って、乾杯して…黙々と料理を

食べ始めた。


会話を交わす事もなく、黙々と食べて…30分程が経った頃に俺は全ての料理を食べ終わり女の方を見た。女はまだ運ばれてきた料理を食べていて…その姿を見て俺は。



【可愛い】



そう思ってしまった。


俺は何を考えているんだ??

ついさっき出会ったんだぞ…そんな奴に俺が…



【惚れるのか?】



…ありえない、何だこれは…、おかしいぞ…。

俺は何を考えて………。



そんな思考は女の言葉で掻き消された。



【ご馳走様でした。】



その声が…、手を合わせるその仕草が…、女の一挙手一投足がとても可愛らしい…そう思考

してしまう。女が今まで出会った中で一番

可愛いと、思考が塗りつぶされていった。



そんな思考を頭の中が巡っていたその瞬間…、

女に再び手を引かれ…会計を済まし、

レストランの外に出た。



…女の手の温かさが俺の手に伝わり、俺の体が少し暑くなる…。

段々と自分が自分じゃなくなっていく感覚が

してしまう。でも何故だろう…この感覚が今はとても心地良く感じてしまう……。



段々と視界が歪んでくる…、体が暑くなって…自分でも分かる程に息遣いが荒くなって…、

どんどん女が魅惑的に感じる。


心臓の鼓動が段々と早くなるのを感じながら、

女に手を引かれて…再びさっきの場所にまで

戻ってきた。


殆ど路地裏と変わらないこの場所で、女は建物に寄りかかって…服を脱いでいく…。


素肌が露出されていき…俺の息遣いはもっと…荒くなっていく。


そして…下着を脱ぐ、その瞬間…。







俺は自分で自分の顔をぶん殴った。


「グッ…。」


その行動に目の前の女は困惑しながら言った。



「え!?な、なにしてるの!?」


その言葉に俺は…。



「よく考えれば分かる事だったな…。」


「なにを言ってるの?血が流れてるから早く

病院に…。」


「俺が悪魔の器って気付いてたんだな…。」


「ッ…。」


「何でこんな事をしたのかは知らねぇが…俺に超能力を使ってたな?さっきまで思考と視界に霧で覆われてた感覚だったが…今はスッキリしてるぞ…白状してもらおうか。お前…俺に何しようとしてた。」


「……勝手に何言ってるのよ。」


「……早く白状した方が楽だぞ。」


「…貴方が悪魔王の器なんて知らないわよ!

それに…貴方に何をしようともしてなかったわ!!」


「白状したな…。あばずれが…!!俺は!一言も俺が悪魔王の器なんて言ってねぇ!悪魔の器って言ったんだよ!」


「ッ…。」


その瞬間、女は目を瞑り…そして目を開いた。


その行動を女が行った瞬間…女はとても豪華なドレスをその身に纏い俺と向き合った。



「貴方とは戦いたくなかった…だから私に惚れさせて戦わないようにしてた…なのに、私達は結局戦わないといけないんだね…。」


「理由はどうあれ…俺に超能力を使って洗脳紛いな事をしようとした事実は消えない…だから戦う事になったんだ。お前が俺に何もしなきゃ戦う事にはならなかったろうさ。」


「…やっぱり、私は不器用だな…。」



そう言葉が零されたその瞬間…女は俺に攻撃を仕掛けてきた…。


上段蹴り…、その姿は様になっている。


元々…格闘技でも習っていたんだろう…、

そう思う程に美しい蹴りだった。



だが、その上段蹴りを俺は避けて…女に

言い放った。




「お前が満足するまで付き合ってやるよ…。」









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