私小説
月白
第1話 ネガティブ
私が経験したことをここに記す。
40代に突入したある日、いやそれよりも少し前だったかもしれない。
時期は覚えていないが、ある日フッと「ずっとこのままネガティブな感情を抱えたまま生きて死んでいくのだろうか…」と思った。
「これからも?」「ずっと?」どうしてこんなに苦痛を抱えて生きているのだろうか私は……それが私が引き寄せや潜在意識というものに出会うきっかけだった。
20代の後半からメンタルの病気に悩まされ、もう10年以上が経っていた。
強迫神経症、心気症、うつ状態。たくさんたくさん悩んで追い詰められて悩みながら、自分の不調を感じてから心療内科に予約の電話を入れるのに一年半という時間が経過していた。
何か検査をするわけでもなく話だけ聞いて、その病院の医師が最初にしたのは軽めの安定剤の処方だった。2週間という期間副作用に悩まされながら服用を続けた。
副作用という副作用がすべて出た。でも服用を続けた。
なぜか?私はそれほどに正常な判断ができない状態であり、また家族もそれほど気にかけていなかったからである。二回目の受診の時に医師はカウンセリングに通うという提案だけでした。
楽になりたくて行ったのに、悩みながらやっと電話で予約して行ったのに早々に匙を投げられた。30代に突入してさらに具合が悪くなった。
10代のころから続いていた不調の原因がこの頃やっと分かった。
甲状腺疾患の橋本病である。この疾患を見つけるのにも15年以上の長い月日を要した。心も体もボロボロだった。メンタルの病気に限らず病気というものは、身近にいる家族にも理解してもらうのが難しいものだ。
具合が悪くなると不機嫌になる家族の中で育った私は、いつしか人に相談するという無意味なことをしなくなった。全てを自分の中で処理した。
それを知らない母は自分が追いつめられると私に相談などしてくる。
そんな場合ではない私に気が付いているのかいないのか、どちらであってもそれはさほど重要ではなかった。
メンタルの病気の発祥のきっかけは職探しが上手くいかず、そのうえ自分の30代という年齢から仕事だけではなく結婚の話やお墓の話まで日々、毎日、毎日父から嫌という言葉が出なくなるまで言われ続け、ついにはメンタルが壊れた。
勤めていた会社が閉鎖になり新しい職場を探すも、その時ちょうど就職氷河期だったため、とりあえず食いつないでいくためにと思ってアルバイトに応募するも、それすら電話で「もう決まりました」といって面接まで行くのは、今の若い人達からしたら信じられないかもしれないが、至難の業だった。
心も体もボロボロだったけど、「休む」ということが許されなかった私は、そんなボロボロの体を引きずるように1円でも稼げるようにと始めたのが自転車でするメール便の配達の仕事だった。
高低差がある町での配達のため、この自転車での配達は今後生涯二度としたくないと思えるほどに過酷な仕事だった。そんな風にボロボロながらも止まらずに止まることを許されずに働いた。
その仕事は約3年という決して短いとは言えない期間やった。ちなみに東日本大震災の時もこの仕事をしていた。
辞めるきっかけになったのはとあるトラブルに見舞われて一人で仕事を続けること(委託の仕事だった)に心が折れたからで、ちょうどこの頃に一本の電話が私のもとに来た。
20代の前半のころ働いていた職場からの、「もう一度一緒に働きませんか?」という職場復帰のお誘いの電話だった。この職場はちょっと特殊な仕事なために、即戦力となる経験者が必要だったために私に電話してきたようだった。
正直、断るつもりだった。だって揉めて辞めたから。でもお金が必要だった私はその誘いを結局は「嫌になったら辞めればいいか」という軽い気持ちで引き受ける事にした。
結局揉めて辞めたものの仕事は好きだったために、思ったよりも長く居ついてしまった。長すぎたんだろうと思う。
いつしかコロナが流行り今まで当たり前にやっていたことが当たり前にできなくなってしまい、会社でも衝突したりでトラブルが続いた。再びメンタルが悪化してしまった私は、仕事もやりたくてもなかったので休職することに決め、上司もそれを快く許してくれたのが唯一救いだったかもしれない。
私は自分で事業を始める事を決めた。これから先長いか短いか分からない残された時間は自分のやりたいと思ったことに使おうと決めた。
その決断がのちに自分を苦しめる事になるなんて頭によぎりもせずに「私ならできるわ」という根拠のない自信が当時はあった。
ただメンタルの悪化と体調不良がなかなか治らずに、思うようなスタートを切ることができなかったのだ。決断した時の根拠のない自信もいつの間にかしぼんでいき見る影もない状態になっていた。
やってもやっても思うように道を切り開くことができずに悶々としていた。
そんな時に出会ったのが「引き寄せの法則」と「潜在意識」である。
私小説 月白 @ren_tsukishiro
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