第27話 元カレ・スティーブ

【ハーモニー社・社長室】


夕方、真彩と優衣、社長室で雑談していると、受付から電話が入る。


受付(女の声)「スティーブさんという方がお見えで、社長にお会いしたいと仰っておりますが、如何致しましょうか?」


真彩「あぁ、下に降りるんで、『待ってて』って言って貰えますか?」


受付(女の声)「かしこまりました」


     ×  ×  ×


真彩、急いで受付ロビーに降りて来る。


スティーブ(25歳)、真彩の姿を見るや否や、真彩の所に駆け寄り、ハグしてキスをし、再会を喜ぶ。


スティーブ「Maya, how have you been? I missed you」


真彩「I was fine what were you doing」 

  

帰宅する社員達、二人の会話に聞き耳を立て、ちら見している。


真彩「Steve, can you wait a minute? I'm ready to go home」


スティーブ「Oh. OK」


スティーブ、微笑む。


真彩、独り、急ぎ足でエレベータに向かう。

 

スティーブがハンサムでカッコイイので、通りかかった社員達、皆、スティーブをジロジロと見ている。


特に、女性社員達は、「カッコイイー」と言い合い、頭から足の先まで舐めるように見る女子社員もいる。

スティーブ、そんな女子社員達に、微笑む。




【カフェバー「Route72」】


カフェバー「Route72」のカウンター席に、真彩とスティーブ、横並びに座っている。

食事を終え、カクテルを飲む二人。


スティーブ、真彩の顔に自分の顔を近付け、真彩の唇にキスをする。

真彩、スティーブの行為を自然に受け入れている。


そして、スティーブ、真彩の手を握り、真彩の耳元で何かを囁き、また、真彩の唇にキスをする。


周りからすると、熱愛中のカップルに見える。 

  

奥の一人席には、悠斗がPCを開き、操作している。

一人席からカウンター迄は見難いが、悠斗、真彩とスティーブの会話に聞き耳立て、立腹している。


奥のテーブル席には、営業部の杉山と前田が談笑している。

杉山、カウンター席にいる真彩に気付く。


杉山「おい、あれって、社長ジャン……」


前田「えっ?……あっ……ホントだ……いつもの席じゃないから気付かなかった……」


杉山「アカン。見たらアカンもん見てしもーた……ラブラブやん、あの二人……」


前田「うわっ……キスしてる……見たく無かった……」


杉山「何やあの外国人……ずっと社長の手握って……あぁ、またキスしよった……何回キスしよんねん?! 彼氏か?」


前田「はぁ……あんなカッコイイ人に日本人が勝てるはずないですよね……社長って、絶対、面食ですよね……」


真彩とスティーブ、椅子から立ち上がり、レジのある方に行く。


レジの所には、店長の松本が行く。


真彩、スマホ決済で支払う。


松本が真彩に小声で、

松本「マーちゃん、この状況、分かってるよね? あの人が居るって、分かってるよね?」

と、心配顔で言う松本。


すると、真彩、小声で何やら言おうとする。

松本、直ぐに真彩の口に自分の耳を近付ける。


真彩「分かってるよ。会社の連中もいるしね……」


松本「ホントにもうー……またひと悶着? 一波乱あるよ、絶対。もうー、知らないよ?!」


松本、呆れ顔。

しかし、真彩は笑顔。


真彩「心配してくれてアリガトね。ご馳走様! 美味しかったよ!」

と言うと、スティーブを見て、微笑む真彩。


スティーブ、真彩の肩を抱き、二人仲良く店を出て行く。

その様子を、テーブル席からじっと見ている杉山と前田。


杉山「あーあ、ラブラブやな、あの二人。今からどこ行くんやろ? ラブホか? あぁ、でも、社長の家、近いみたいやし、独り暮らしやから、社長の家か? 家でええことするんやろなぁー。良いなぁー」


杉山、独りで勝手に妄想している。


前田「……はぁ……」


前田、不快な顔をしている。


前田「悪夢だ。これは悪夢だ……」


杉山「社長、お持ち帰りされたんやな……あーぁ、良いなぁ……あの白人男が羨ましいわ。俺もあんなに格好良かったら、社長落とせるのになぁー……」


杉山と前田の会話が耳に入り、悠斗、握りこぶしに力が入る。


悠斗(心の声)「クソッ……」


怒りを抑えるのに必死の悠斗。


悠斗(心の声)「クソッ、クソッ、クソッ!……真彩のバカ野郎!」


悠斗、真彩に対して怒りを爆発させている。

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