第26話 I have a dream.

【ハーモニー社・社長室】


朝、社長室で真彩と優衣、それぞれの椅子にもたれ掛かり、コーヒーを飲みながら会話している。


真彩「社長って、やっぱ大変ですね……透伯父さんの大変さが分かりました」  

  

優衣「はい。会長、何度も身体を壊して、大変でしたから……」


真彩「でも、この会社を一日でも早く黒字にせねば……! キング牧師、私も頑張ります!」

   

真彩、勝利のポーズをする。


優衣「えぇ? 今度はキング牧師? レオナルド・ダ・ヴィンチじゃないんだ……社長は何人崇拝する人いるんですか???」


真彩「えぇ? 何人だろう? 沢山い過ぎて分かんない」

と言って笑う真彩。


優衣「キング牧師って、ノーベル平和賞受賞した人ですよね? I have a dream ……ですね?」


真彩「うん。Martin Luther King Jr. ガンジーさんの非暴力抵抗の教えに共感して、差別を非暴力で訴えた牧師さん」


優衣「人種差別……酷いですよね……アメリカに行ったら、私たち日本人も差別される側ですからね……」


真彩「ですね……酷いよね……同じ人間なのに……」


優衣「そもそも、人間を奴隷にする発想が恐ろし過ぎます」


真彩「でも、悲しいかな、それが人間なんだよね……善の部分もありーの、悪の部分もありーの、両方持ってるからね……」


優衣「でも、人種差別って、無くならないですよね……」


真彩「まぁ、アメリカは白人至上主義だからね。白人が最も優れた人種で、黄色人種、黒人は白人に比べて劣ってるって思われてるから……何をもって優れてるとか、劣ってるって言うんだろうね?」


優衣「ヒスパニックの人も低く見られてましたもんね……」


真彩「だね……メキシコから移住して来たマリオも可哀想だった……」

と言って、真彩、友達の事を想っている。


真彩「If you can't fly then run, if you can't run then walk, if you can't walk then crawl, but whatever you do, you have to keep moving forward ……」


優衣「前進し続けなければならないって事ですね?」


真彩「そう。どんな事があっても、試練を乗り越えて前に進み続けなきゃダメなの。私もキング牧師見習って、前へ、前と前進しまーす! 頑張りまーす!」


真彩、真面目な顔をして、右手をこめかみにかざし、敬礼のポーズをする。


優衣「あのー、色んな人の良い処を見習うのは良いんですけど、キング牧師みたいに暗殺されないで下さいよ?!」


真彩「えっ?……あぁ、暗殺か……酷いよね……」


優衣「ホントに‥‥‥酷いです」 

  

真彩「でも、まぁ、私は、暗殺されたらされたで、それが自分の運命だって思うから、大丈夫です!」


優衣「いやいや、大丈夫じゃないでしょ?! 周りの人達の事も考えて下さいよ?!」

と言って、首を横に振り、呆れ顔の優衣。


真彩「ねぇ、秘書さんは、崇拝する人とかいないの?」


優衣「えぇー?」


真彩「私みたいに、アニメの主人公のナウシカとかでも良いよ?」


優衣「うーん……特には……あぁ、でも、祖父は勿論、尊敬しています」


真彩「そりゃーそうだよね……大阿闍梨様だもんね……」

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