第12話 改革

【ハーモニー社・社長室】


ハーモニー社・社長室で、朝早くから真彩と優衣、各々のデスクで作業している。


真彩のスマホの着信音が鳴る。

真彩、直ぐに指紋と顔認証でスマホのロック解除をする。


亜希からのLINEメッセージだった。


真彩「わぁ、沙耶さん、父の会社の介護付き有料老人ホームで働く事になったって。総務課で正社員採用だって!」    


優衣「わぁー良かったですね。お給料安定するから、夜も働かなくて良いですもんね」


真彩「うん。賢人君、もう寂しい想いしなくて済むね。良かった、良かった。ホント嬉しいわ……」


真彩と優衣、微笑み合う。



【大会議室】


ハーモニー社・大会議室にて、役員達の前でプレゼン中の真彩。

レーザーポインタを持ち、データを白いスクリーンに映し出している。


真彩「将来成長する為の経営戦略なら良い赤字ですが、そうでない場合、ビジネスの仕組みを変えなければなりません。そこで、『Restructuring』、先ずリストラします」


すると、「えぇー?!」と、役員達、声を上げて驚く。

役員達は顔を見合わせ、困惑顔。


真彩「外注費、人件費、広告費、原材料費、色々ありますが、先ずは人件費の見直しです。社員さんは解雇ではなく適材適所、その人の能力を引き出せる様に職場移動し、モチベーションを上げて頂きます」   

 

真彩の説明に、安堵の顔の役員達。


真彩「世の中、転職する人が多いですが、折角育てた人材を手放したくないので、それを避ける為、楽しく働いて貰える様に社員さん達に聞き取り調査し、改善します」


役員達、真剣な顔で聞いている。


真彩「ジョブローテーションは直ぐに実行に移します。働き易い環境づくりからスタートです。消耗品、無駄な経費等の見直しは現場の皆さんにお任せします」   

 

役員達、真彩が配った資料に目を向けている。


真彩「コア事業だけ残しノンコア事業は廃止します。黒字状態なら売却して事業譲渡益を得ます。これにより黒字化加速します」


『ノンコア事業は廃止』という事に対して、ざわつく役員達。

しかし、真彩、動ぜず、クールな顔をしている。


眉間に皺寄せ、声を張り上げて、「えぇ!」「そんなバカな!」「残すべきでしょ!」と言い張る者が何人かいる。


しかし、役員達の声を気にせず、話し続ける真彩。


真彩「なので、カフェ店は存続、雑貨店は、今から六カ月以内に黒字にならなければ売却です。もし、これらを実行しなければ、来期も赤字です」


言い終わった後、鋭い視線で役員達を見る真彩。

役員達、真彩の目力におののく。


真彩「会社存続の為にご理解願います」


役員達に頭を下げる真彩。



【社長室】


会議が終わり、社長室で、パソコンの画面を見ながら優衣にぼやく真彩。


真彩「何かさー『期待してます』って言われてもね……」


優衣「あぁ、やっぱりその言葉に引っ掛かりましたか。でも、役員さん方の言う事あんまり気にしなくて良いんじゃないですか?」


真彩「簡単に言うけどさー、言われた方は言葉の重圧で押し潰されそうなんですけど。期待される側の立場に立って、考えて言って欲しいわ……」


優衣「ですね。私も何か人任せだなぁーって感じました。お手並み拝見って感じで……上から目線だし……」


真彩「良い風に取ると誉め言葉なのかもしれないけど、でも、今の自分には役員さん達の言葉、素直に受け止められないです。お前らもっと必死考えて、行動に移せよ!……って思ってしまいました」


優衣「分かります。分かります!」


真彩「責める心が出ちゃいました。丸投げかい?!……って思ったし……まだ、『ガンバレ!』って言われる方がマシかな?……あぁ、いや、それも嫌だな……」


優衣「言葉って、意外と難しいですね……」


真彩「はい。言葉は人を傷付けたり苦しめたり出来るし、励ましたり喜ばせたりも出来て、何か、自分が発する言葉って、人の人生を変えちゃう時もあるから、怖いですね……」


優衣「ですね……」


真彩「でも……そんな些細な事に執われてちゃーダメですよね……頑張らなくっちゃ!」


優衣「はい。頑張りましょう!」

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