第11話 結婚詐欺師
【ハーモニー社・高槻店カフェ】
ハーモニー社・高槻店カフェの外のテーブル席で会話している真彩と優衣。
夜にも拘わらず、今日も結構、人が入っている。
真彩、ふと、ガラス越しに見える、店内にいる男女のカップルに目が行く。
真彩「あっ……結婚詐欺師……」
優衣「えっ?……」
優衣、真彩の目線の先を見る。
優衣「あの男性、甘いマスクでカッコいいですね。女性の方がかなり年上ですね。でも何かの間違いでは?」
真彩、スマホで男を拡大動画撮影し、電話登録している相手に送信する。
すると、直ぐに電話が掛かって来る。
真彩「うん、高槻店のカフェ。hurry up !」
優衣「どういう事???」
真彩「やっぱり指名手配中の男だって……」
優衣「えええええっ……」
真彩「ウチの店で犯罪なんて、絶対、許さない!」
優衣「でも怖いなぁ。指名手配犯でしょ? 何するか分からないんじゃない?」
真彩、じっとカップルを見ている。
真彩「あっ、封筒、男に渡した。あの厚さは二百万だな」
優衣「えぇー、渡しちゃーダメじゃない!」
優衣もガッツリと結婚詐欺師を見ている。
× × ×
しばらくすると、二人の警察官がやって来る。
警察官の姿を見た途端、詐欺師の男は素早く席を立ち、自分の鞄と、封筒に入った金を持って逃げる。
一緒に居た女性、何事かと、驚いた表情。
警察官「おい、待て!」
詐欺師、ドアを開け、店の外に出る。
しかし、ドア付近には真彩が立っていて、片足を出して詐欺師を扱かす。
真彩「あぁ、ごめんなさい……」
と言って、真彩、しらじらしく、詐欺師に謝る。
詐欺師、走って来た警察官達に取り押さえられる。
一人の警察官・近藤直樹(24歳)が、真彩にアイコンタクトする。
近藤(心の声)「ありがと!」
真彩(心の声)「どう致しまして!」
近藤、真彩に微笑み、去って行く。
真彩が、優衣の要るテーブル席に戻って来る。
優衣「ねぇ、あの警察官と知り合い?」
真彩「うん。ダチ。コンちゃんとは中学が一緒で、ゲーム仲間。お互い次の日が休みの時は、ウチで一緒にゲームする仲」
優衣「えっ? 社長の家で?」
真彩「うん。あぁ、タッ君もだし、もう一人来る」
優衣「えっ? オンラインゲーム、四人でするの?」
真彩「いやいや、そっちのネット使うゲームじゃなくて、ボードゲームの方」
優衣「あぁ、そうなんだ。ゲームって言うから、てっきりオンラインゲームだと思った」
真彩「私、昔の、マリオとかゼルダレベルしか、無理なんだよね。三次元コンピュータグラフィックス使うのって、私、三半規管が弱いから、酔っちゃって、気分悪くなるから……目まぐるしく動くのって絶対、無理」
優衣「えぇ、じゃー、ボードゲームって、どんなのをするの?」
真彩「麻雀、トランプ、UNO(ウノ)」
優衣「へーぇ……」
真彩「コンちゃんと二人の時は、将棋。コンちゃん、強いんだよね。将棋遣り出したら、徹夜になっちゃう」
と言って笑う真彩。
優衣「寝泊りもするんだ……」
真彩「うん。社長就任の前、ウチに来たんだけど、その時、指名手配犯の写真見せてくれたんよ。だから、ピンと来た……」
優衣「えぇー?! 何でそんなん見せる?」
真彩「あぁ、前、シカゴから一時帰国した時、一緒に梅田に遊びに行って、その時、変装してる指名手配犯、見破ったから……」
優衣「えぇ? 変装してるのに、何で分かるの?」
真彩「うーん、私、超繊細だから、不自然な動きしてる人とか、目が泳いでる人って、ロックオンしちゃうんだよね。警戒してる人って、やけに周りを気にするからね。それに、心がソワソワしてるんだよね……」
優衣「スゴッ……って言うか、独身女性の部屋に男性入れちゃーダメでしょ?!」
真彩「えっ? 友達だよ?」
優衣「いやいや、男女で友達は成立しないですよ?!」
真彩「?……」
真彩、首をかしげて優衣を見る。
真彩「秘書さんは、男友達居ないの?」
優衣「男友達は居ないです。居たら絶対、恋人関係になっちゃうと思うから……」
真彩「そうなんだ……」
優衣「そうですよ、普通……友達から、そういう関係になっちゃいますよ!」
真彩「ふーん」
真彩、優衣に何か言いたげだが、口をつぐむ。
優衣「……」
真彩「今回もコンちゃんの手柄になったから嬉しいわ」
優衣「じゃー、そのコンちゃん、社長に感謝してるでしょうね。二回もお手柄なんて……」
真彩「ふっ……そうだね。まだ他にもあるけどね。また、『有難う!』ってケーキ持って来ると思う。その買って来てくれるケーキ、一緒に食べるから、いつもコンちゃんが好きなケーキチョイスなんだよね。オモロイ奴ですわ」
真彩、笑顔で話している。
しかし、優衣、怪訝そうな顔。
【カフェバー「Route72」】
カフェバー「Route72」には、カウンター席、テーブル席、そして、パソコンが使える様に、両サイド仕切っていて、仕事や読書等が出来る様になっている一人席がある。
プロジェクターもあり、ライブが出来る様に、機材や楽器も置かれてある。
夜、カウンター席で、店主の松本が、真彩と向かい合って座っている。
そして、真彩の手をマッサージしている松本。
松本「へーぇ、大変だったね。でも、コンちゃん、喜んだでしょ。お手柄だもんね」
真彩「うん。さっき電話来て、偉い感謝の言葉、言われたよ」
松本「コンちゃん、頑張ってるよね。刑事になるつもりだもんね……」
真彩「しっかし、結婚詐欺って酷いよね。被害者は、お金騙し取られて、夢も希望も無くなって、心ズタズタになって、一生、悲しい思いするもんね……でも、悲しいかな、Love is blind、恋は盲目だもんね……」
松本「あぁ……好きになっちゃうとね……」
真彩「恋は脳の病気なのにね。アドレナリン・ドーパミン・セロトニンのホルモンバランスが崩れるからって解明されてるのに、好きになったら感情抑えられないもんね……」
松本「そうなんだよね……でも、現実は、結婚しても三組に一組は離婚してるからね。熱々だったカップルもいつか冷めるもんね……」
真彩「はぁ……人生において、何回恋するんだろう? 私、もう恋するの心身共に疲れたわ。エネルギー使うし、面倒だし……相手の顔色伺って生きるのってしんどいもんね……」
松本「おいおい未だ若いのに? あぁ、でもマーちゃんもてたからなぁー。まぁ、今ももてるし……しんどいか……」
真彩「もてるのは結婚適齢期までだね、多分……」
松本「いやいや、マーちゃんは年取っても、もてるよ」
真彩「な訳ないでしょ! あのさー、タッくんは女友達いる?」
松本「女友達???」
真彩「うん。秘書さんがさー、男女で友達は成立しないって言うんだよ?! どう思う? 私、男友達多いから、言われてポカンってなったわ」
松本「あぁ……僕は……知り合い以上、友達未満の女の子は沢山いるけど……んー、友達ってさぁー、一緒に遊んだり、他愛もないこと喋って楽しんだりして、結構、心許し合ってる相手でしょ?」
真彩「うん。だから、ある程度の信頼関係あるよね」
松本「信頼関係かー……だったら、やっぱり、女友達は居ないかな? あっ……でも、優衣ちゃんとは時には仲間、時には友達、あぁ、いやいや親友であり、共に戦う戦友でもあるかな? あぁ、いや、別に戦わないか。クリエイティブな事を一緒に考えて作り上げてるスタッフ? 同志? 有志?……って感じかな?」
真彩「そうだよねー。秘書さん、絶対、タッくんの事、忘れてるわ。自分だってちゃんと男友達、いるのにねぇー」
松本「それに、僕には親友以上、恋人未満の人がいるし……」
と、笑顔で言う松本。
松本の言葉に驚く真彩。
真彩「えぇー?! タッ君にそんな人、居たんだ。知らなかった。何で紹介してくんないの?」
真彩、ちょっと口を尖らせ、拗ねた感じで言う。
松本「あのー、紹介するも何も、親友以上恋人未満は、マーちゃんですから!」
真彩「えぇ、なんだ……誰か居るのかと思ったよ……私かい?! でも、親友以上恋人未満ねー……」
松本「えっ、何? 何か、ダメ?」
真彩「そんなの考えたこと無かったから。だってタッ君は、男、女なんて関係なく、家族同然だから。私からしたら姉弟だもん」
松本「……んん? まさか、僕が弟でマーちゃんがお姉ちゃんじゃないよね? あぁ、でも、僕がお兄ちゃんでマーちゃんが妹も変か……」
真彩「じゃぁー、双子にしよ?」
と言って、真彩、笑う。
松本「いや、双子でも早く産まれた方が上になるけど?」
真彩「もうどっちでも良いよ。兎に角、タッくんは私のきょうだいだから!」
松本「僕、恋人未満から格上げされた? 嬉しいなぁ‥‥‥」
真彩「昔からそう思ってたから……まぁ、頼りになる分身みたいな? タッくんは、私にとって無くてはならない人だもんね」
と言って微笑む真彩。
松本、真彩の目をじっと見る。
松本「マーちゃん、大好き。キスして?」
松本、女性の、ナヨッとした感じで真彩にお願いする。
真彩「えぇー、ここで? 大勢、居るよ?」
と言いつつ、真彩、直ぐに松本の唇にキスをする。
松本、嬉しそうな顔をする。
そして、松本も真彩にキスを返す。
真彩、微笑む。
真彩「しかし、タッくんも、私の影響でアメリカナイズされたね」
松本「そうだよ。人前でハグとかキスとか、昔は絶対に考えられなかったから。それも日本でだよ?! 僕はマーちゃんの影響、凄い受けてるから……」
真彩と松本、見詰め合い、そして、笑い合う。
店のスタッフ達、二人の遣り取りには慣れているので、皆、見て見ぬふりをしている。
優衣が店に入って来て、真彩と松本の所にやって来る。
優衣「ねぇ、またじゃれ合ってたでしょ?! ホント仲良いねー」
真彩「お帰りー!」
優衣「はい、たこ焼きにシュークリーム。食べよ、食べよ!」
真彩と松本「わーい」
と言って、真彩と松本、嬉しそうな顔をして喜ぶ。
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